夢幻の世界の勇者様
「とりあえず、運んでください!」
「わかった。スサ、運んで参れ」
「了解! アポロン、父さんを頼んだ!」
頼んだ、ねえ…。
頼まれても、どうすることも…。
「娘と吾子を逃がしたか…。クックック、面白い。こんな度胸の者は初めてあった。クサナギノツルギを早めに貰わねばなるまい」
「貰うんじゃない。…盗むんだろ?」
今僕は、ナギに怒っている。
妹を苦しめた男を許せるか!
僕は、挑発的に言った。キッパリと。怖じけずに。
「…そうだな。では、参るとしようか」
アゲハの館。
「小春、桶と手拭いを持て!」
「はい!」
アゲハは汗を拭う。
地獄だと思った。ダラダラ流れる血をいかに止めるか。止血効果のある薬草くらいしか持っていない。
こんな時に限ってスサは使えないし、猫の手も借りたい状態だった。
「スサ、小春がいない間に、お前に渡したい物があるのだ。走るからついてまいれ」
「分かったよ、姉上」
ギシギシと鳴る床を走る。侵入者を防ぐ床の作りだが、これは、アゲハを追い立てているように、感じた。
「姉上、おせえなあ…」
「しょうがないでしょ。これでも巫女なんだからね? …って、おっと!」
次の瞬間、弟にかつがれていた。
あんなに可愛かった弟が、もうすっかり大きくなって、頼もしくなった。やはり、渡すのは今だ!
「どこ行きゃいいんだ?」
「階段を降りて地下へ。東の宝物殿に行って」
「了解!」
東の宝物殿。
「…これだわ。スサ、こちらへおいで」
「はい、姉上」
スサは正座してアゲハの言動を待った。
アゲハは、急にスサのことが愛おしくなり、力の限り抱きしめた。
「あ、姉上!?」
「スサ、このクサナギノツルギはあなたにあげます。だから、父上を…父上の怨念を絶って。…今のままではアルは…死にます。しかし、父上を殺せば、どうにかなる。それが私の見解よ。どうか、頼みますよ」
「姉上…。分かりました!」
そう言って、スサは駆け出して行った。
「わかった。スサ、運んで参れ」
「了解! アポロン、父さんを頼んだ!」
頼んだ、ねえ…。
頼まれても、どうすることも…。
「娘と吾子を逃がしたか…。クックック、面白い。こんな度胸の者は初めてあった。クサナギノツルギを早めに貰わねばなるまい」
「貰うんじゃない。…盗むんだろ?」
今僕は、ナギに怒っている。
妹を苦しめた男を許せるか!
僕は、挑発的に言った。キッパリと。怖じけずに。
「…そうだな。では、参るとしようか」
アゲハの館。
「小春、桶と手拭いを持て!」
「はい!」
アゲハは汗を拭う。
地獄だと思った。ダラダラ流れる血をいかに止めるか。止血効果のある薬草くらいしか持っていない。
こんな時に限ってスサは使えないし、猫の手も借りたい状態だった。
「スサ、小春がいない間に、お前に渡したい物があるのだ。走るからついてまいれ」
「分かったよ、姉上」
ギシギシと鳴る床を走る。侵入者を防ぐ床の作りだが、これは、アゲハを追い立てているように、感じた。
「姉上、おせえなあ…」
「しょうがないでしょ。これでも巫女なんだからね? …って、おっと!」
次の瞬間、弟にかつがれていた。
あんなに可愛かった弟が、もうすっかり大きくなって、頼もしくなった。やはり、渡すのは今だ!
「どこ行きゃいいんだ?」
「階段を降りて地下へ。東の宝物殿に行って」
「了解!」
東の宝物殿。
「…これだわ。スサ、こちらへおいで」
「はい、姉上」
スサは正座してアゲハの言動を待った。
アゲハは、急にスサのことが愛おしくなり、力の限り抱きしめた。
「あ、姉上!?」
「スサ、このクサナギノツルギはあなたにあげます。だから、父上を…父上の怨念を絶って。…今のままではアルは…死にます。しかし、父上を殺せば、どうにかなる。それが私の見解よ。どうか、頼みますよ」
「姉上…。分かりました!」
そう言って、スサは駆け出して行った。