[右寄せ][/右寄せ]父に上司が来たからだろう、今日の夕食は豪華だった｡

刺身に白米、美味しい味噌汁。あとは子供に人気のハンバーグ等々｡
誰が来ようと楽しいはずの食事が、楽しくない｡
でも、それは気付かれたらダメだと何となく感じて“いつも通り”を振る舞う｡

ハンバーグ美味しいね、このお刺身何？、今日はアサリの味噌汁なんだ！

“いつも通り”、前世などはない子供のように｡












ボンゴレファミリーを直訳すると「アサリ家族」となるが、勿論そんなのほほんとした可愛らしいものではない｡
ボンゴレファミリーの正しい意味は伝統・格式・規模・勢力すべてにおいて別格といわれるイタリアの最大手マフィアグループ、つまりイタリアンマフィアの頂点である｡

[中央寄せ]〜中略〜[/中央寄せ]

さて、本項で紹介するのは現在のイタリアンマフィアのボズ、ボンゴレIX世である｡
彼の名前はTimoteo（ティモッテオ)。歴代ボスの中でも典型的な穏健派で知られ、その決断は神の采配と謳われる。



＿＿＿引用、××社出版　『イタリアンマフィアの頂点』


さっき読んだ本の内容が不意に頭に浮かんだ｡
いや、不意じゃない。気がついてしまっただけなんだ｡

ちょっとボーとし過ぎて父に声をかけられた｡


「おーい、智世。どうしたんだ？」
「うーん？いや、さっき瀛さんところで読んだ本の続きが気になるなぁ〜って」
「そうか、智世は読書家だな！」


そっかなー、なんて笑ってお刺身を口に運ぶ｡
滅多に食べれない鯛だし、歯応えもちょうどいい。多分、結構高いやつ｡
美味しい。
美味しい筈なのに…………

味が分からない｡


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翌日の朝、ティモッテオさんはリムジンに乗って帰って行き、父もそろそろ仕事だと言って家を出て行った｡
残されたのは母と私と弟だけ｡

いつも通りに戻って行く気がして安心できた｡
そして、いつも通り私は小学生に向かい、弟は母に送られて幼稚園に行く｡


ああ、いつも通りだ｡
その事実に酷い安心感を覚えた｡