彼女は剣を下ろし、フリスクをじっと見据えた。
戦うつもりのない人間——それが彼女にとってどれほど異質な存在か、本人は分かっているのだろうか。
「……お前、科学について知りたいんだろ？」
アンダインが腕を組みながら問いかける。
フリスクは少し驚きながらも、すぐに頷いた。
「うん」
アンダインは短く鼻を鳴らし、背を向けて歩き出す。
「科学のことなら、[太字]アルフィー[/太字]のところへ行くといい。」
フリスクはトリエルたちと別れ、彼女の後を追いながら、モンスターたちの暮らす町を抜け、研究所へと向かった。
研究所の中に入ると、機械が並び、壁には設計図や計算式が貼られた紙が散乱していた。
奥で白衣を着た科学者が作業に没頭している。
アンダインが堂々と声をかける。
「アルフィー！客を連れてきたぞ！」
驚いたように顔を上げたのは、小柄なモンスターだった。
彼女——アルフィーは研究用の眼鏡をかけ、手には何かの記録端末を握っていた。
「え、ええっ！？人間！？アンダイン、何で連れてきたの！？」
フリスクは一瞬怯えそうになったが、すぐに落ち着いて口を開く。
「僕は、モンスターの科学について知りたいんだ。」
アルフィーは戸惑いながらも、フリスクの目をじっと見つめる。
その瞳には純粋な探求心が宿っていた。
アンダインは腕を組みながら、静かに言った。
「こいつ、戦う気がないらしい。」
アルフィーはしばらく沈黙していたが、研究所の奥へと歩み出し、古いデータの記録端末を操作し始めた。
「……科学は、人間たちが思うよりもずっと深いものなの。そ、それでも知りたいの？」
フリスクは研究所の機械に目をやりながら、静かに頷いた。
　ただ、この場所には人間が知らない何かがある——そう感じていた。