王宮の大広間は静けさに満ちていた。
天井には細工の施された黄金の装飾が煌めき、長いテーブルの中央には王家の紋章が誇らしげに刻まれている。
窓から差し込む柔らかな陽光は、部屋の豪華さを際立たせていた。
その中央で、[太字]フリスク[/太字]は父王の講義を聞きながら、机の端に座っていた。
しかし、彼の心はここにはなかった。
王族でありながら、彼はこの世界でたった一人——[太字]魔法を持たない異端者[/太字]だった。
この王国では魔法こそが支配の証。力を持つ者が統治し、持たない者は価値を認められない。
そして、フリスクは王族の中で唯一、その力を持たなかった。
広間の隅で、[太字]キャラ[/太字]が冷たい視線を向ける。
彼女は背筋を伸ばし、腕を組みながら弟を見つめていた。
「どうしたんだ、フリスク？」
キャラの声には、わずかに嘲りが含まれている。
「また“[太字]魔法がない王子[/太字]”の自分に悩んでるのか？」
フリスクは視線を机の上に落とし、小さく返す。
「……別に。」
キャラは鼻で笑い、椅子に深くもたれかかった。
彼女の細い指が王族の紋章が刻まれた指輪を弄びながら、冷ややかな言葉を紡ぐ。
「まあ、王族なら魔法が使えて当然だからな。もし私だったら、王になってモンスターどもを完全に滅ぼしてやるのに。」
フリスクは眉をひそめる。
キャラの言葉はあまりにも断言的で、そこに躊躇はなかった。
「キャラ、モンスターをそこまで憎む必要はないよ……。」
キャラはテーブルに手を置き、鋭く睨みつける。
「甘い！彼らは魔法を否定し、忌々しい科学を生み出したんだ。許せるわけがない。」
彼女の瞳には憎しみと怒りが燃えていた。
フリスクは何かを言いかけたが、父王の低い声が再び響き、話はそこで途切れた。


続く...