ある世界を救うまで
ひゅっ!
化け物が俺の胸元に向かって突撃してくる。
びちゃっ!
俺はそれをかわし、すかさずナイフで化け物を刺そうとする。
ぬる・・・
しかしナイフは刺さらず、壁に突き立てられただけだった。
隙ができてしまった・・・!
「なっ!?」
「馬鹿なやつ・・・だ。水を刺せるわけないだろう」
そう言った化け物は鋭い針のような形へ、姿を変えた。
そして恐るべき速さで、俺の腕に飛びつく。
ズシュッ!
「ぐ・・・!」
腕の皮に細い穴が開いてしまった。
こいつは液体。だから姿形が自由自在なんだ!
常識に囚われちゃいけない。滑らかに考えないと、本気で殺される。
化け物はすぐに限りなく薄い姿になり、陰に隠れた。
どこだ?どこにいる・・・?
「超直感」発動。
ほんの少しの音でもいい・・・!聞くんだ・・・!
ピチャ。
「そこかっ!」
俺は後ろの椅子を蹴り倒す。
やっぱり。そこには奴がいた。
今度は体重をかけて踏みつけてみる。
ペチャッ!
やっぱりだめだ。飛び散るだけ・・・
「大人しく・・・死ね!」
また攻撃をかわす。
どうすれば・・・!
俺が後ろに下がろうとすると、背中にひんやりとした感触が伝わる。
壁・・・?
そう、知らない間に俺はこいつに追いつめられていたのだ。
「覚悟・・・しろ」
液体が俺の喉元目掛け、飛び掛かってくる。
ナイフで防ぐしか・・・!
ジュッ!
「ぎゃあああああ!」
「え?」
ブレイブである。
すんでのところで攻撃を止めてくれたのだ。
でも今度はやつが苦しんでいる・・・?
「タツヤ、こいつの対抗手段くらい思いつかなかったのか?」
俺は黙り込む。
ブレイブの言う通りだ。何も思いつかなかった。
「いいか?こいつは液体だ。ということは熱を加えれば蒸発する。私は今、体を熱くしているのだ」
ジュゥ・・・!
「熱い・・・熱い!やめてくれっ!」
「何を言っているのか分からん」
俺は無言でブレイブを握る。
「抵抗するなよ。これにでも入ってとけ」
もだえ苦しんでいる液体の前に、俺は1個の瓶を差し出す。
液体は無言でその中に入った。
タツヤ、瓶に強化魔法を使った。これで奴は出られん。戦うぞ。2人が頑張っている。
「はいっ・・・!」
俺は瓶を戸棚にしまい、工房をあとにした。
「おりゃっ!はぁ・・・はぁ・・・!年寄りにはきついのう・・・!」
「大丈夫?」
「ユウナちゃんは後ろにいるんじゃぞ・・・!」
ユウナとテッショウは中々戦えている。
一見するとただの年寄りと子供だが、きちんと戦闘能力はあるのだ。
ただ、やはり若い者と年老いた者。何かしらの欠点がある。
テッショウは体力がもうほとんど残っていない。
だが、後続のユウナに戦闘を任せるわけにもいかない。ユウナは人形がなければ戦闘能力が皆無だからだ。
ハナは後ろから援護しているが、ただの足手まといだ。
そして、こんな絶望的な戦場に「更なる絶望の武者」が座り、「希望の戦士」が立ち上がることとなる。
「テッショウさーん!」
「タツヤ・・・!」
俺はテッショウさんが戦っていた戦兵の脇腹を斬りつける。
「ギャッ!!!」
戦兵は銀色の体液を噴射して派手に倒れる。
「ありがとうのぉ・・・もうわし、限界じゃ・・・」
ズオオッ!
なんだ、この圧倒的な気配は・・・?
倒れた戦兵の後ろから、ゆっくりと影が近づいてくる。
先ほどの「頭脳」と思われる戦兵だ。
「よくも拙者の部下たちを斬りつけ、殴りつけてくれたでござるな。その代償として、貴殿たちをトルバ様に何としても献上しなければいけないでござる!」
戦兵は、地面に正座し、続ける。
不思議なことに周りの応援しに来た戦兵たちは後ずさり、その様子を見ているだけだ。
「拙者、戦団の『頭脳』、戦王トルバ様に仕えるムシャイドと申す。本日、貴殿と決闘をさせていただく。拙者は貴殿に「身柄拘束の権利」を所望する。貴殿は何を所望するのだ?」
意外と礼儀正しい・・・?
こんな事初めてだ。
サンダの時も、ガルドの時も、どちらもいきなり戦いが始まっていた。
しかしどうだろうか?この戦兵は。
お辞儀から始めているではないか。
「ブレイブさん、どうします・・・?」
簡単なことだ。決闘を受ける。そうして勝てば、賭けたものを相手から奪えるからな。
「賭けたもの・・・?」
お前、「ジャポルニック」を知らないのか?
「ジャポルニック・・・?」
面倒くさい奴だ・・・いいか?ジャポルニックとは、かなり昔から存在する国だ。「武者」の国と言われている。
そこの国の文化に、「決闘」が存在するのだ。
「でも決闘って、命を懸けるんじゃ・・・?」
話を最後まで聞け!ジャポルニックの決闘は、お互いに相手に賭けてほしいものを要求するのだ。
要求をお互い承諾した時点で、勝負は始まる。
負けた方は、賭けたものを支払うのだ。
「そういうことですか・・・」
つまり、こちらが「金銭」と要求すれば、勝利した時、金銭が。
「命」と要求すれば、相手を殺すこともできるというわけだ。
「早くするでござる!神聖な勝負でござるぞ!」
タツヤ、「自分の軍勢の情報」と要求しろ。
「はい・・・!」
俺はムシャイドの前に同じく正座し、「情報」を賭けるように伝えた。
「了解した・・・む?アードゥ!」
びくっ!
俺が後ろを振り返ると、先ほどの液体の化け物が瓶を脱走し、音を立てずに迫ってきていた。
「アードゥ!ここは神聖な闘技場と化した!周囲の者に近づかないよう言え!お前の所業は前から常々思うところがあった!あとで報告するでござる!」
「悪い・・・ねぇ。今すぐ言ってきますよ・・・」
アードゥと呼ばれた化け物の姿が変わっていく。
もう液体だった頃の面影はない。
現れたのは戦兵・・・しかも女の戦兵だろうか?
「言って・・・くればいいんだろ。行くぞ、お前ら」
アードゥは周りの戦兵を引き連れて歩いて行った。
「すまぬな。やつは昔からああなのだ。それでは決闘でござる。今回はお互い、2人まで参加できることとするでござる。さあ、どうする?」
ブレイブが俺の手を離れ、ムシャイドに告げる。
「お前の覚悟はよく分かった。今回は私とこの青年が参加しよう」
「ちょっと、ブレイブさん・・・!」
ムシャイドは笑う。
「このままただの剣を偽れば、援軍を呼べたというのに・・・見事。ではこちらは・・・」
カチャ。
ムシャイドが1本の細い刀を腰から取り外し、俺たちに見せる。
「この刀と一緒に戦わせてもらうでござる」
「刀・・・?まさか・・・!」
「その通りです。拙者、『颯丸』(はやてまる)。ムシャイド様に拾われ、今は刀として日々、励んでおります」
喋った・・・!
「ほう。お前も武精か」
「ええ、そういうあなたも。拙者より年上ですね。よろしくお願いします」
「年上・・・?」
ブレイブの声に怒りが宿る。
「ブレイブさん、落ち着いて・・・!」
ブレイブは俺にそう言われ、渋々柄をこちらに向ける。
「では、始めるでござる」
ヒュオオ・・・
風が妙に強い。
周りには全くと言っていいほど人や戦兵がいない。
正真正銘、本気の勝負と言うわけだ。
「これから戦士同士の戦いが始まる・・・!中々見られないものです・・・!」
「そうじゃな。見たことあるんですかな?アリマさんは」
ハナは一瞬動揺する。が・・・
「い、いや!ちょっと見たことあるんですっ!」
と態勢を立て直した。
お互い剣と刀を握る。
ムシャイドはまだ鞘から刀を抜かない。
後ろで、1つの小石が落ちた。
コツン・・・。
その音を合図に、俺は走り出す。
「ブレイブさん!」
分かっている。
ブレイブはムシャイドの目の前に魔法で煙を発生させた。
これで見えないはず・・・!
っ!?
煙が一瞬で霧散する。
俺の全身の毛が一瞬で逆立つ。
「見切ったのか・・・拙者の『抜刀』を・・・」
後ろに跳んだ俺を見て、ムシャイドはそう言う。
抜刀・・・?
そうか・・・!
奴はあえて刀を鞘から抜かないことで、集中力を高め、かつ威力を出しやがったんだ・・・!
タツヤ、気を付けろ。あれは武者の戦い方に近い。
「分かってますよ!はぁっ!」
俺はブレイブを力強く振る。
抜刀のすぐ後には、流石に威力は出ないだろう・・・!
そう思った俺は、愚か者だった。
化け物が俺の胸元に向かって突撃してくる。
びちゃっ!
俺はそれをかわし、すかさずナイフで化け物を刺そうとする。
ぬる・・・
しかしナイフは刺さらず、壁に突き立てられただけだった。
隙ができてしまった・・・!
「なっ!?」
「馬鹿なやつ・・・だ。水を刺せるわけないだろう」
そう言った化け物は鋭い針のような形へ、姿を変えた。
そして恐るべき速さで、俺の腕に飛びつく。
ズシュッ!
「ぐ・・・!」
腕の皮に細い穴が開いてしまった。
こいつは液体。だから姿形が自由自在なんだ!
常識に囚われちゃいけない。滑らかに考えないと、本気で殺される。
化け物はすぐに限りなく薄い姿になり、陰に隠れた。
どこだ?どこにいる・・・?
「超直感」発動。
ほんの少しの音でもいい・・・!聞くんだ・・・!
ピチャ。
「そこかっ!」
俺は後ろの椅子を蹴り倒す。
やっぱり。そこには奴がいた。
今度は体重をかけて踏みつけてみる。
ペチャッ!
やっぱりだめだ。飛び散るだけ・・・
「大人しく・・・死ね!」
また攻撃をかわす。
どうすれば・・・!
俺が後ろに下がろうとすると、背中にひんやりとした感触が伝わる。
壁・・・?
そう、知らない間に俺はこいつに追いつめられていたのだ。
「覚悟・・・しろ」
液体が俺の喉元目掛け、飛び掛かってくる。
ナイフで防ぐしか・・・!
ジュッ!
「ぎゃあああああ!」
「え?」
ブレイブである。
すんでのところで攻撃を止めてくれたのだ。
でも今度はやつが苦しんでいる・・・?
「タツヤ、こいつの対抗手段くらい思いつかなかったのか?」
俺は黙り込む。
ブレイブの言う通りだ。何も思いつかなかった。
「いいか?こいつは液体だ。ということは熱を加えれば蒸発する。私は今、体を熱くしているのだ」
ジュゥ・・・!
「熱い・・・熱い!やめてくれっ!」
「何を言っているのか分からん」
俺は無言でブレイブを握る。
「抵抗するなよ。これにでも入ってとけ」
もだえ苦しんでいる液体の前に、俺は1個の瓶を差し出す。
液体は無言でその中に入った。
タツヤ、瓶に強化魔法を使った。これで奴は出られん。戦うぞ。2人が頑張っている。
「はいっ・・・!」
俺は瓶を戸棚にしまい、工房をあとにした。
「おりゃっ!はぁ・・・はぁ・・・!年寄りにはきついのう・・・!」
「大丈夫?」
「ユウナちゃんは後ろにいるんじゃぞ・・・!」
ユウナとテッショウは中々戦えている。
一見するとただの年寄りと子供だが、きちんと戦闘能力はあるのだ。
ただ、やはり若い者と年老いた者。何かしらの欠点がある。
テッショウは体力がもうほとんど残っていない。
だが、後続のユウナに戦闘を任せるわけにもいかない。ユウナは人形がなければ戦闘能力が皆無だからだ。
ハナは後ろから援護しているが、ただの足手まといだ。
そして、こんな絶望的な戦場に「更なる絶望の武者」が座り、「希望の戦士」が立ち上がることとなる。
「テッショウさーん!」
「タツヤ・・・!」
俺はテッショウさんが戦っていた戦兵の脇腹を斬りつける。
「ギャッ!!!」
戦兵は銀色の体液を噴射して派手に倒れる。
「ありがとうのぉ・・・もうわし、限界じゃ・・・」
ズオオッ!
なんだ、この圧倒的な気配は・・・?
倒れた戦兵の後ろから、ゆっくりと影が近づいてくる。
先ほどの「頭脳」と思われる戦兵だ。
「よくも拙者の部下たちを斬りつけ、殴りつけてくれたでござるな。その代償として、貴殿たちをトルバ様に何としても献上しなければいけないでござる!」
戦兵は、地面に正座し、続ける。
不思議なことに周りの応援しに来た戦兵たちは後ずさり、その様子を見ているだけだ。
「拙者、戦団の『頭脳』、戦王トルバ様に仕えるムシャイドと申す。本日、貴殿と決闘をさせていただく。拙者は貴殿に「身柄拘束の権利」を所望する。貴殿は何を所望するのだ?」
意外と礼儀正しい・・・?
こんな事初めてだ。
サンダの時も、ガルドの時も、どちらもいきなり戦いが始まっていた。
しかしどうだろうか?この戦兵は。
お辞儀から始めているではないか。
「ブレイブさん、どうします・・・?」
簡単なことだ。決闘を受ける。そうして勝てば、賭けたものを相手から奪えるからな。
「賭けたもの・・・?」
お前、「ジャポルニック」を知らないのか?
「ジャポルニック・・・?」
面倒くさい奴だ・・・いいか?ジャポルニックとは、かなり昔から存在する国だ。「武者」の国と言われている。
そこの国の文化に、「決闘」が存在するのだ。
「でも決闘って、命を懸けるんじゃ・・・?」
話を最後まで聞け!ジャポルニックの決闘は、お互いに相手に賭けてほしいものを要求するのだ。
要求をお互い承諾した時点で、勝負は始まる。
負けた方は、賭けたものを支払うのだ。
「そういうことですか・・・」
つまり、こちらが「金銭」と要求すれば、勝利した時、金銭が。
「命」と要求すれば、相手を殺すこともできるというわけだ。
「早くするでござる!神聖な勝負でござるぞ!」
タツヤ、「自分の軍勢の情報」と要求しろ。
「はい・・・!」
俺はムシャイドの前に同じく正座し、「情報」を賭けるように伝えた。
「了解した・・・む?アードゥ!」
びくっ!
俺が後ろを振り返ると、先ほどの液体の化け物が瓶を脱走し、音を立てずに迫ってきていた。
「アードゥ!ここは神聖な闘技場と化した!周囲の者に近づかないよう言え!お前の所業は前から常々思うところがあった!あとで報告するでござる!」
「悪い・・・ねぇ。今すぐ言ってきますよ・・・」
アードゥと呼ばれた化け物の姿が変わっていく。
もう液体だった頃の面影はない。
現れたのは戦兵・・・しかも女の戦兵だろうか?
「言って・・・くればいいんだろ。行くぞ、お前ら」
アードゥは周りの戦兵を引き連れて歩いて行った。
「すまぬな。やつは昔からああなのだ。それでは決闘でござる。今回はお互い、2人まで参加できることとするでござる。さあ、どうする?」
ブレイブが俺の手を離れ、ムシャイドに告げる。
「お前の覚悟はよく分かった。今回は私とこの青年が参加しよう」
「ちょっと、ブレイブさん・・・!」
ムシャイドは笑う。
「このままただの剣を偽れば、援軍を呼べたというのに・・・見事。ではこちらは・・・」
カチャ。
ムシャイドが1本の細い刀を腰から取り外し、俺たちに見せる。
「この刀と一緒に戦わせてもらうでござる」
「刀・・・?まさか・・・!」
「その通りです。拙者、『颯丸』(はやてまる)。ムシャイド様に拾われ、今は刀として日々、励んでおります」
喋った・・・!
「ほう。お前も武精か」
「ええ、そういうあなたも。拙者より年上ですね。よろしくお願いします」
「年上・・・?」
ブレイブの声に怒りが宿る。
「ブレイブさん、落ち着いて・・・!」
ブレイブは俺にそう言われ、渋々柄をこちらに向ける。
「では、始めるでござる」
ヒュオオ・・・
風が妙に強い。
周りには全くと言っていいほど人や戦兵がいない。
正真正銘、本気の勝負と言うわけだ。
「これから戦士同士の戦いが始まる・・・!中々見られないものです・・・!」
「そうじゃな。見たことあるんですかな?アリマさんは」
ハナは一瞬動揺する。が・・・
「い、いや!ちょっと見たことあるんですっ!」
と態勢を立て直した。
お互い剣と刀を握る。
ムシャイドはまだ鞘から刀を抜かない。
後ろで、1つの小石が落ちた。
コツン・・・。
その音を合図に、俺は走り出す。
「ブレイブさん!」
分かっている。
ブレイブはムシャイドの目の前に魔法で煙を発生させた。
これで見えないはず・・・!
っ!?
煙が一瞬で霧散する。
俺の全身の毛が一瞬で逆立つ。
「見切ったのか・・・拙者の『抜刀』を・・・」
後ろに跳んだ俺を見て、ムシャイドはそう言う。
抜刀・・・?
そうか・・・!
奴はあえて刀を鞘から抜かないことで、集中力を高め、かつ威力を出しやがったんだ・・・!
タツヤ、気を付けろ。あれは武者の戦い方に近い。
「分かってますよ!はぁっ!」
俺はブレイブを力強く振る。
抜刀のすぐ後には、流石に威力は出ないだろう・・・!
そう思った俺は、愚か者だった。