二次創作
イタチがHUNTER×HUNTERの世界に行ったら。
―――――――――――――――――――――――
その人間は木陰から差し込む陽の光によって、ふと目を覚ました。
「(ここはどこだ、、)」
少年は不思議に思っていたのだ。何故なら、自分は死んだはず、、それなのにどうして今生きているのか、どうして日の光を感じることができるのかと。
生前最後に何をして、どうなったのかも鮮明に……最愛の弟のために……そして……、
少年はふと、前世(?と呼んでもいいのか、)記憶があると分かったのだ。それは血塗られた人生を送った、うちはイタチであった時の記憶。だからこそ、彼の冷静な頭脳は困惑しつつも現状を受け入れて始めていた。
「……胸があるのか、、」
うちはイタチは、生前では男であった。
……今世では女子になっていた。両胸の膨らみを見て驚かない程には、イタチは冷静さを取り戻していた。
「(自分は生きている……?)」
肯定するかの様に周りの小鳥達は鳴いた。
ゴン=フリークスはクジラ島という島に住んでいる元気な少年である。
彼は沼で魚を取ることを習慣としており、村の人々もそれは周知の事実であった。
でも今回はいつもと少し違う。
少年は父親を探す為、今年のハンター試験を受けると決めていた。
だが、ハンター試験を受ける前に、ゴンの育ての親であるミトから、この沼に潜んでいる主を釣らなければ行かせないと条件を出されていた。
当然育ての親であるミトは、ゴンには釣れないと思っていた。だからそんな条件を出したのだ。この子をハンター試験に行かせたくないのには理由がある。ゴンを赤ちゃんのとき見捨てたゴンの本当の父親ジンフリークスを探すゴンに、ミトは諦めてほしいと思っていたのだ。
だからこそ、釣れないだろうと思っていた沼の主を釣り上げ、笑顔でこちらに手を振ってるゴンを見て、ミトは先日出した条件を悔いていた。
とうとうこの日が来てしまったと思う反面、これは必然だったのかもしれないと思ったのだ。
その日の夜、ミトはゴンに胸の内を開けて言った。
「ゴン、、本当にハンターになるの?」
「……うん」
「ハンターは危険なのよ!」
「知ってるよ、」
「ジンにそんなに会いたいの?……ゴン、あいつは幼かったあんたを捨ててここを出てったのよ……それなのになぜ、そのハンターをあなたが目指すの……」
ミトは言って心が痛かった。この子は優しい、自分はジンの幼馴染だったから分かる、あいつはろくでもない父親だと、こんないい子を置いて自分の夢向かってちゃうんだから、、
「すごいよね」
「え?」
ミトは目を見開いた。
「俺を捨ててまで目指すハンターってどんな仕事なんだろーって!」
「……っゴン!」
「止めないでミトさん」
「俺は知りたいんだ!ジンが目指したハンターって仕事を!」
「……ゴン……分かったわ、あんたがそこまで言うなら私は何も言わない……。」
そう言って、ミトはゴンの部屋を後にしたのだった。
その様子を一匹のカラスが眺めていた――。
―――――――――――――――――――――――
遡ること数日前
イタチ(女)は目覚めてから周りの森を散策し始めていた。やはり、自分が住んでいる所とは少し違うようだと感じた。
「(この体も変化状態?……ではない……か)」
チャクラがあることは分かっている。もし、変化の術であれば解除して元の体に戻ることができるだろう。
だが思った通り、変わらなかった。
「(さて、どうするか……チャクラはある。体術、忍術だと量や力は若干前より劣るが、使えなくはない。そこまで問題じゃないだろう。
となると俺がここにいる意味だが……誰かが俺をまた穢土転生させたのか?それともそれに似た忍術か?…もしそうなら、おそろしく精巧に仕上がっている。…仮に呼ばれとすると、俺がここにいる意味はなんなんだ?女にする意味が分からない……)」
見た目14、5才の黒髪黒眼の美少女が、その場でため息をついた。
「(とりあえず範囲を広げてここを調査しよう、食事はべつに……)グゥー〜ー……とりあえず食糧の確保だな」
―――――――――――――――――――――――
「キターーーー!!うぉおぉぉーーーー引っ張られてる!これはでかいぞーー!!!!!」
イタチが森を調査していると、遠くの方から何やら騒がしい声が聞こえてきた。
「……人か」ゆっくりと声のする方へ足を進める。
茂みから声のする方を覗いたイタチ。――瞬く間に紅い瞳が茂みの向こうの様子を伺う。
そこには、黒髪の少年がその泉の主を釣り上げているところだった。
「(……でかい魚だな、にしても……)」
気配を消しながら少年の一連の様子を見ていたイタチは、チャクラがないことから少年を一般人だと推測していた。
「(フッ元気な子だな……)」
少年の面影が、弟を見捨てない友人(ナルト)のそれと重なり思い出していた。
そこには敵の様子を伺っていた鋭く紅い眼光はなく、慈愛に満ちた微笑みを浮かべ対象を見ている聖母がいた。
「(サスケ……お前はあの後どうなった?戦争はどうなった?俺の思いは伝わっただろうか……いや、考えるのはよそう。きっとナルトが導いてくれているだろう。たとえどんな闇にいても……)」
過去に思いを馳せていたが、
「ヤッホホォーーーーーーーーーーー!!」
「これでハンター試験を受けられる!!」
その声に意識を戻し、少年が去った方向へ後を追う。
―――――――――――――――――――――――
少年が着いた先は崖付近に建つ家で、崖から見えるその周りには海が広がっていた。
後を追っていたイタチは、港付近を調査していた。
「……こんな所に港が、、それにここは島だったのか……。」
自分が目覚めた場所は、この島の深い森だったらしい。
「(…ここを生活の拠点とし、物や人はあの船から運ばれてくるのか。)言葉が分かるのに、文字が読めないのは厄介だな」
―――――――――――――――――――――――
「よってらっしゃい、みてらっしゃーい!新鮮な魚だよ!今買わなきゃ損だぜ!」
「ほぉーれこっちは、甘い果汁や今が旬の野菜達並べてるよ!――」
港には人々が集まっていた。
――夕方
フードを被った客が、人気のない本屋に入っていった。
――チリン――
「(……ん?お客様か)いらっしゃい」
この店は個人営業店で開かれている本屋で、髭の生やした老人が、1人で店を切り盛りしていた。
ひっそりと佇んでいるため、客は地元の人でも滅多にこなかった。
そのため、今入ってきた客に亭主は疑問を持つ。
数分後には店の閉店時間になるので、片付けている最中だったのだ。
「お客さん、ここは18時で閉店するんじゃよ、今店を閉めてる途中での。申し訳ないんじゃが、また明日来てもらってよいかの……?」
片付けをしながら戸棚の向こうにいるはずであろう客に向かって老人は話した。
「……そうでしたか。そうと気づかず片付けている最中に来てしまいすみません……」
凛と発せられた客の声から、女性であることは分かった。
老人は客の様子を見ようと、片付けの作業を一時中断して、客の方へ顔を出しに行った。
そこにいたのはフードを取った女性で、ここらじゃ見たことがないほどの別嬪さんだった。
まだ若い女の子のようだが、大人と子供の境界線がなんとも妖艶であった。
「お客さん‥ここらじゃ見ない顔だね、観光客の人かい?」
老人の質問に対し、少女は一瞬だけ考えるそぶりをして答えた。
「……あぁ、初めてこの島に来まして……実は道に迷ってしまったんです……それでここを通りかかったらちょうど明かりが見えたので、この店に入ったんです」
そうだったのかと老人の疑問が解消した。
「そうじゃたのか、それならワシが途中の通りまで案内しよう。
そしたら帰り道が分かるかもしれんし、観光客用の宿もどっか空いとるじゃろう……支度するからちょっと待ってておくれ」
背を向け、ハンガーに掛かっている上着を着る準備を始めた老人。
老人は親切心から、この迷子の少女をどうにかしてあげたいと思ったのだ。
少女から感謝の返答が来ると思っていたのだが、
「……お心遣い感謝します。‥ですが……………………その必要はありません。」
「ん?」
老人は少女が遠慮していると思い、振り返って目を合わせると、
スゥーーと少女の黒い瞳が赤く、紅く、回り出した……。
――――――――――老人の意識はやがて沈んだ。
イタチは目の前の老人に写輪眼で幻術をかけ、分かるだけの情報を引き出していた。
「火の国は何処にある?」
「……分からない…そんな国はない……」
「ない、だと?ここは何処だ?」
「……クジラ島」
「‥忍びはいないのか?」
「……忍び……忍者はいると聞いた事がない…そいつらはジャポンにいると聞いたことがある……」
「……文字や貨幣、世界地図はどんなものだ?」
「……ハンター文字、ジェニー……」
それからもイタチはさらに質問していった。
質問していくごとに、自分のいた場所とは全く異なると思い知らされたのだ。
「……どういうことだ……」
「っは!」
老人が目を覚ますと、店を閉店する為に片付けの途中だったと気がついた。
「……眠っていたのかの、腰が痛いわい」
老子は疲れが溜まって居眠りをしてしまったと思っていた。
「……なぜワシは何処かに出かける支度をしてるんじゃ?」
自分の着ている服が、如何にも外出しようとしている格好だった為、疑問に思った。
「はぁ……ワシも年じゃな……」
そんなことよりも、時刻は閉店時間を大幅に過ぎていた。その事に気づき、老人は急いで片付けの作業を再開し始めた。
―――――――――――――――――――――――
少女が人気のない所で野宿を決めた時、
カァ、カァー。
一匹のカラスが少女の腕に止まる。
カラスの瞳は普通のカラスとは違かった。
少女はカラスの瞳を覗き、写輪眼を発動した……………………
昼にこのカラスを、予め少年に付けさせていた。
カラスの記憶と先程の老人の話、町の人々の話を総合して整理していたイタチは、受け入れられない現実を受け入れようとしていた。
「……ここは、俺の住んでいた世界ではない……」