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喧嘩道

#5

誘拐

「ストラーイク。はい、ちゃんと約束通りアイス奢ってくだせぇよ?」

終一はそう雄一郎に向かって言う。

ボーリング場に着くと、誕生日だからと言う事で、俺の分を皆んなが分割して出してくれると言う事になった。

いい、と遠慮したのだが、数の差で押し負けてしまった。

まぁこちらとしてはありがたい限りなのだが。

「クソッ!次はラーメン賭けてだ!」

「いいですぜ。」

2人は今、賭けボーリングをしている最中だった。

このゲームは涼平が提案したもので、ストライクを先に取った方の勝ちというゲームで、負けた方が勝った方に何かを奢るというものだった。

ちなみに提案した涼平はボーリングが大の苦手でもうすでにラーメン二杯の奢りが確定していた。

「俺らもやろうぜ。」

そう龍心が言ってくる。

ここで逃げるのは男の恥だ。

「いいぜ。何賭ける?」

「和翔が可哀想だからジュース一本にしといてやるよ。」

そう余裕を全開で龍心は言う。

この勝負だけは必ず勝つと俺は決意し、ボーリング玉に指を突っ込んだその時だった。

ポケットに入れていたスマホが振動し出した。

香恋からの着信だった。

「すまん電話だ。」

そう言い俺はボーリング玉から指を抜き、一度外に出てから出ようと出口を探し始める。

「逃げんなよー。」

背後でそう言う龍心の声が聞こえるが、俺は無視して外に出た。

そして一度大きく咳払いをしてから電話に出る。

「もしもし、どうした?」

そう電話越しの香恋に問いかけた。

だが、少し待っても返事は無い。

「もしもーし、聞こえるか?」


回線が悪かったのかと思い、場所を変えて俺はもう一度問いかけた。

だがやはり返事は無い。

一度切ってかけ直そうとしたその時だった。

『助けて…。』

電話越しから掠れた声で助けを求める香恋の声が聞こえた。

聞き間違いなどでは無い。

しっかりと、聞こえたのだ。

「大丈夫か!?何があった!!」

そう大声で香恋に問いかける。

『こんにちは。前澤君。』

「ッ…!?」

電話越しの声は急に切り替わる。

ボイスチェンジャーを使っているのか、機械音に近いものを感じる。

「お前は誰だ!!香恋は無事なのか!?」

俺はそう怒りを全開にした声で聞く。

『怖い怖い、そんな怒らないでよ。』

そう軽く受け流される。

「質問に答えろ!!香恋は無事なのか!?」

『君にとってこの娘は相当大事な様だね。一体この娘とはどういう関係なんだい?』

またしてもそう話をはぐらかされる。

「話を逸らすな!!早く答えろ!!」

我慢できずに怒りを爆発させてしまった。

『知りたければここの廃校舎に来い。そうすれば教えてやろう。』

香恋のメールから一つの住所が送られてくる。

そこは、今はもう使われていない廃校だった。

「その言葉、本当か?」

そう電話越しの相手に問いかける。

『僕は嘘が嫌いなんだ。ここの4階で待ってるよ。じゃあ。』

「あ、ちょ。」

そう一方的に電話を切られてしまった。

かけ直そうと試みたが、何者かの手にある香恋のスマホには繋がる訳も無かった。

すぐに飲み込める話じゃ無い、だが、香恋が何者かに誘拐されている事は事実だった。

(助けに行くしかねぇ…!)

そう決心し、俺はもう一度先程の住所を確認した。

走れば10分で着く距離だ。

皆んなには悪いが、こちらに向かわせてもらう事にする。

そう走り出そうとした時だった。

「うっ…!?」

喉に何かが引っかかり、思わず止まってしまう。

それは自分の服だった。

何者かに引っ張られている事に気が付き俺は背後を振り返る。

「どこ行こうとしてんだよ。」

そこには皆んなが立っていた。

「いつから…」

「ずっとだよ。そんな事より、そこ、俺らも連れてけよ。」

蓮太郎が俺に向かってそう言う。

「連れてけって…、何しに行くかわかってんのかよ。」

俺はそう訊ねる。

「おおかた、彼女さんの奪還戦とかいうところだろ。」

龍心はそう言い当ててくる。

「聞こえてたのか…。あと彼女じゃねぇって。」

「今はそんな事どうでもいいだろ。早く向かうぞ。」

そう陽汰は言う。

「場所も聞こえてたのかよ…。」

離れた意味がなかった事に俺は気付かされた。

「ここら辺で廃校と言えばあそこしかありませんからねぇ。」

終一がそう言う。

「本当に来てくれるのか?これは俺の問題だし…」

俺はそう皆んなに訊ねる。

「ゴチャゴチャうるせぇよ。当たり前だろ。」

そう答えた龍心を筆頭に他の皆んなも次々と首を縦に振り始めた。

「…ありがとう。」

俺はそう感謝を伝えると急いでそこに向かった。

2025/05/27 00:11

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