喧嘩道
「危ねぇ…。」
修一が余計な事をしてくれたお陰で遅刻しそうになってしまった。
今まで一度も遅刻した事は無いが、担任が遅刻に対してかなり厳しく、以前遅刻した生徒が一限目の間ずっと怒られ続けていたので絶対にしたく無い。
「ギリギリじゃねぇか。」
隣の席の男、[漢字]永瀬龍心[/漢字][ふりがな]ながせりゅうじん[/ふりがな]が半笑いを浮かべながらそう言ってくる。
「こいつのせいだよ…。」
俺は自分の背後を親指で指すが、そこには誰も居ない。
修一はてっきり追っかけて来ていると思っていたが、いつの間にか撒いていたみたいだ。
「こいつって修一の事か?」
「よくわかったな。」
何1つヒントは無かった筈なのに当てられた事に俺は驚きを隠せない。
「さっきチャリ通してたのがバレて中岡に連れてかれたからな。」
中岡というのはうちのクラス1-3の副担任だ。
本来なら担任兼生徒指導の谷が連れて行く筈なのだが、何故か今日は違うらしい。
チャリ通、という事は結局あの自転車に乗って来たのだろうか。
まぁそんな事はどうでも良い。
取り敢えず、巻き込まれずに済んだ事に感謝するのだった。
そんな会話をしている内に時間はかなり経ってしまっていた様で、一限目の予鈴が鳴ってしまった。
「やべっ。」
俺は急いで自分の鞄をロッカーに詰め込んで自分の席に着く。
だが、いつもなら数秒、遅くとも数十秒で谷が入って来るのだが、3分近く経った今も入って来る気配は無い。
「今日遅くねぇか?」
俺は机に突っ伏している龍心にそう話しかけた。
「修一の説教でもしてんじゃねぇの?」
龍心は顔を上げる事なくそう言う。
「あーね。」
俺は自分で聞いておきながら、適当な返事をしてしまった事に申し訳無さを感じたが、龍心は何とも思ってなさそうな様子を見て、俺は安心する。
突然教室の扉が開き、遂に谷が来たのかと思ったが、そこに居たのは修一だった。
龍心は谷が来たと思い飛び起きたが、修一だった事を確認すると再び机に突っ伏した。
「また説教されてたのかよ。」
修一に話しかける1人の男、[漢字]世田雄一郎[/漢字][ふりがな]よだゆういちろう[/ふりがな]だ。
「勘違いしないでくだせぇ。褒められてたんでさぁ。」
修一はそう見え見えの嘘を吐く。
「お前が褒められる筈ねぇだろ。」
雄一郎ががそう修一を煽る。
「いつも人殴ってる問題児には言われたく無いですねぇ。」
修一もそう煽り返し、一触即発の空気となってしまう。
この2人は犬猿の仲というやつでこうしていつも煽り合っている。
とは言っても、煽り始めるのは必ず雄一郎からなのだが。
「2人共落ち着けって。てか、谷は?」
俺は2人を宥めながら修一にそう聞く。
「谷…。そういや見てませんねぇ。職員室にも居ませんでしたぜ。」
修一はそう答えた。
「谷に説教されてたんじゃねぇのか?」
さっきまでの空気を忘れたかの様に雄一郎がそう問いかけた。
「違いますよ。中岡でさぁ。」
そう修一は答えた。
となると一気に謎は深まる。
再び教室の扉が開き、今度こそと思ったが、そこには遅刻常習犯兼俺の幼馴染の[漢字]太田陽汰[/漢字][ふりがな]おおたはるた[/ふりがな]が立っていた。
また飛び起きていた龍心は安心か苛立ちかわからない溜息をしてら再び眠りについた。
そんな焦って飛び起きるなら起きておけばいいのに、と思うが口には出さない。
「今日も遅刻かよ。」
雄一郎がそう陽汰に言う。
「おう。舐めんなよ?」
何に対してかわからない忠告を陽汰はすると、自分の席に太田という苗字に相応しい巨体を下ろす。
陽汰と修一の席はいわゆるアリーナ席というやつで、教卓の目の前だ。
だがこの2人がそんな事を気にするはずが無く、授業中はいびきをかいて寝ている事が大半だ。
「てか今日職員会議でも合ったっけ?」
突然、陽汰にそう問いかけられる。
「今日は無かった筈…。何でだ?」
「いや、職員室で全員集まって会議みたいなんしてたからよ。」
「どうせまた誰かが問題でも起こしたんでしょう。」
大半の問題の原因である修一が言う。
ちなみにこの前は屋上の鍵を勝手に開けて寝ていた事で怒られていた。
そしてまたもや扉が開く。
3度目の正直なるかと思いきや、谷では無く中岡が入って来た。
カツカツと靴の音を鳴らしながら教卓に立ち、口を開く。
「本日ですが、学校側の諸事情により、お休みとさせて頂きます。」
その中岡の言葉にクラスからは喜びの声が上がる。
「なので生徒の皆様は速やかに下校してください。」
中岡はそれだけ言うと急いで教室から出て行った。
相当焦っている様子だったので、何かかなり大きな問題が起こったのだろう。
「ラッキーですねぇ。」
そう言いながら修一は俺の肩に手をかける。
「折角学校無くなったんだし遊びに行こうぜ。」
修一に隠れて見えないが、修一の向こう側からそう提案して来る龍心の声が聞こえる。
「いいじゃん、行こうぜ。」
気付けば雄一郎も陽汰も寄って来ていた。
「そうするか。」
どうせ家に居ても何もする事は無いし、金だって今月はまだ余裕がある。
時間や集合場所はまたメールでという事になり、遊ぶ予定を取り付けた俺達は急いでそれぞれの家に帰るのだった。
だが、帰り道の途中、俺は妙な胸騒ぎに襲われた。
大して気にしていなかったが、俺は後々、この事に後悔するのだった。
修一が余計な事をしてくれたお陰で遅刻しそうになってしまった。
今まで一度も遅刻した事は無いが、担任が遅刻に対してかなり厳しく、以前遅刻した生徒が一限目の間ずっと怒られ続けていたので絶対にしたく無い。
「ギリギリじゃねぇか。」
隣の席の男、[漢字]永瀬龍心[/漢字][ふりがな]ながせりゅうじん[/ふりがな]が半笑いを浮かべながらそう言ってくる。
「こいつのせいだよ…。」
俺は自分の背後を親指で指すが、そこには誰も居ない。
修一はてっきり追っかけて来ていると思っていたが、いつの間にか撒いていたみたいだ。
「こいつって修一の事か?」
「よくわかったな。」
何1つヒントは無かった筈なのに当てられた事に俺は驚きを隠せない。
「さっきチャリ通してたのがバレて中岡に連れてかれたからな。」
中岡というのはうちのクラス1-3の副担任だ。
本来なら担任兼生徒指導の谷が連れて行く筈なのだが、何故か今日は違うらしい。
チャリ通、という事は結局あの自転車に乗って来たのだろうか。
まぁそんな事はどうでも良い。
取り敢えず、巻き込まれずに済んだ事に感謝するのだった。
そんな会話をしている内に時間はかなり経ってしまっていた様で、一限目の予鈴が鳴ってしまった。
「やべっ。」
俺は急いで自分の鞄をロッカーに詰め込んで自分の席に着く。
だが、いつもなら数秒、遅くとも数十秒で谷が入って来るのだが、3分近く経った今も入って来る気配は無い。
「今日遅くねぇか?」
俺は机に突っ伏している龍心にそう話しかけた。
「修一の説教でもしてんじゃねぇの?」
龍心は顔を上げる事なくそう言う。
「あーね。」
俺は自分で聞いておきながら、適当な返事をしてしまった事に申し訳無さを感じたが、龍心は何とも思ってなさそうな様子を見て、俺は安心する。
突然教室の扉が開き、遂に谷が来たのかと思ったが、そこに居たのは修一だった。
龍心は谷が来たと思い飛び起きたが、修一だった事を確認すると再び机に突っ伏した。
「また説教されてたのかよ。」
修一に話しかける1人の男、[漢字]世田雄一郎[/漢字][ふりがな]よだゆういちろう[/ふりがな]だ。
「勘違いしないでくだせぇ。褒められてたんでさぁ。」
修一はそう見え見えの嘘を吐く。
「お前が褒められる筈ねぇだろ。」
雄一郎ががそう修一を煽る。
「いつも人殴ってる問題児には言われたく無いですねぇ。」
修一もそう煽り返し、一触即発の空気となってしまう。
この2人は犬猿の仲というやつでこうしていつも煽り合っている。
とは言っても、煽り始めるのは必ず雄一郎からなのだが。
「2人共落ち着けって。てか、谷は?」
俺は2人を宥めながら修一にそう聞く。
「谷…。そういや見てませんねぇ。職員室にも居ませんでしたぜ。」
修一はそう答えた。
「谷に説教されてたんじゃねぇのか?」
さっきまでの空気を忘れたかの様に雄一郎がそう問いかけた。
「違いますよ。中岡でさぁ。」
そう修一は答えた。
となると一気に謎は深まる。
再び教室の扉が開き、今度こそと思ったが、そこには遅刻常習犯兼俺の幼馴染の[漢字]太田陽汰[/漢字][ふりがな]おおたはるた[/ふりがな]が立っていた。
また飛び起きていた龍心は安心か苛立ちかわからない溜息をしてら再び眠りについた。
そんな焦って飛び起きるなら起きておけばいいのに、と思うが口には出さない。
「今日も遅刻かよ。」
雄一郎がそう陽汰に言う。
「おう。舐めんなよ?」
何に対してかわからない忠告を陽汰はすると、自分の席に太田という苗字に相応しい巨体を下ろす。
陽汰と修一の席はいわゆるアリーナ席というやつで、教卓の目の前だ。
だがこの2人がそんな事を気にするはずが無く、授業中はいびきをかいて寝ている事が大半だ。
「てか今日職員会議でも合ったっけ?」
突然、陽汰にそう問いかけられる。
「今日は無かった筈…。何でだ?」
「いや、職員室で全員集まって会議みたいなんしてたからよ。」
「どうせまた誰かが問題でも起こしたんでしょう。」
大半の問題の原因である修一が言う。
ちなみにこの前は屋上の鍵を勝手に開けて寝ていた事で怒られていた。
そしてまたもや扉が開く。
3度目の正直なるかと思いきや、谷では無く中岡が入って来た。
カツカツと靴の音を鳴らしながら教卓に立ち、口を開く。
「本日ですが、学校側の諸事情により、お休みとさせて頂きます。」
その中岡の言葉にクラスからは喜びの声が上がる。
「なので生徒の皆様は速やかに下校してください。」
中岡はそれだけ言うと急いで教室から出て行った。
相当焦っている様子だったので、何かかなり大きな問題が起こったのだろう。
「ラッキーですねぇ。」
そう言いながら修一は俺の肩に手をかける。
「折角学校無くなったんだし遊びに行こうぜ。」
修一に隠れて見えないが、修一の向こう側からそう提案して来る龍心の声が聞こえる。
「いいじゃん、行こうぜ。」
気付けば雄一郎も陽汰も寄って来ていた。
「そうするか。」
どうせ家に居ても何もする事は無いし、金だって今月はまだ余裕がある。
時間や集合場所はまたメールでという事になり、遊ぶ予定を取り付けた俺達は急いでそれぞれの家に帰るのだった。
だが、帰り道の途中、俺は妙な胸騒ぎに襲われた。
大して気にしていなかったが、俺は後々、この事に後悔するのだった。