[明朝体]「いただきま～す」
食事が始まった。
「合宿どうだった？」
僕はそう言って夕食の会話の話題を切り出す。
「オレは楽しかったよ！見たことないものばっかりでびっくりした！」
葵がそう言う。
「へ～。例えば何があったの？」
僕が聞くと葵は興奮して
「えっとね！えっとね！知らないスポーツに知らない道具！あと知らないものいっぱいあったんだよ！」
と一気にまくし立てた。
「ふ～ん。そうなのか。言葉はどう？楽しかった？」
僕はそう言って今度は言葉に質問した。
「私？私は・・・楽しかった。色んな物があって、勉強がはかどった」
「へ～それはよかった。楽しかったのか」
僕は笑顔で言葉にそう言った。

それからいろいろな話が続いた。
夏休みの話や、合宿のこと、学校のことなどの話だ。
夕飯が美味しかったのも相まってとても楽しかった。
そんな時に急に母さんが言った。
「そういえばね！圭太、彼女ができたのよ！」
ゲホッゲホッ
僕は驚いてしまい、水が変なところに入って少しむせた。
僕はまだ心の準備ができていないからこの話題に触れていなかったのに…
「それ本当？」
言葉が怖い顔で母さんに聞いた。
「ええ、そうよ。それも美人さんでお嬢様なのよ！」
母さんが自慢げにそう答えた。
言葉と葵の顔が暗くなっていく。
「あら？私変なこと言った？」
母さんはきょとんとしている。
正直僕にも原因はわからないが、多分まずいことを言ったのだろう。
「終わりにしよう。この話」
いつも喋らない父さんがそう言って会話を止めた。
父さんは正しい。
妹たちはまったく楽しそうに見えない。
むしろ悲しそうだ。
今は別の話をするのがいいだろう。
僕はそう思って別の話をし始めた。[/明朝体]