貪欲と魔神
……ということで二人は今、森にいる。
クロムとグラブがやってきたのはスライムの森だった。
スライムの森というのは、昔からスライムという魔物が多く生息していることから名付けられた。
スライムは基本的に弱く、大量発生するため、旅の者はこの森に最初に訪れるらしい。
クロム「結構歩きましたね。」
グラブ「………。」
クロム「グラブさん?」
グラブ「………周りに……だれもいないか?……」
そう言われてあたりを見渡した。
周りには人どころかスライム一匹も見当たらない。
クロム「誰もいませんよ?」
グラブ「そうか……。ならば……
[大文字][太字]怖かった〜っ!!!!!![/太字][/大文字]
突然グラブが泣き出した。
グラブはどう見ても明らかに年上だ。
それを見て少しびっくりした。
クロム「………ゆっくり話は聞きますから。暗くなってきたし、火でも起こして、そこで休みましょう。」
薪を集めているうちに夜がやってきた。
晴れた夜空に狼煙が見える。
その狼煙は彼らのものだった。
クロム「何が怖かったんですか。」
グラブ「そりゃあ王様に決まってるだろっ!!!」
確かにこの国の王は怖い。
逆らうと何をされるか分からないし、そもそも顔が怖い。
娘は美人で優しそうなのに……。
クロム「でもグラブさん、貴族ですよね?」
グラブ「ああ?貴族といっても、四男だから家を継げないんだよ。だから俺が君と一緒に来ることになった。」
グラブの態度は変わった。
自分が貴族、相手が貧乏人である以上、当たり前のことなのだが。
グラブ(俺が貴族だってこと……秘密にしていたのに、なんでわかったんだ………。)
クロム「じゃあ、魔王は怖くないんですか?。」
グラブ「怖いよ!!だが、魔物は怖くない。倒せる自信だけはある。」
クロムは察した。
どうやら彼も魔王討伐に行きたくないらしい。
魔王討伐には推定5年かかると思う。
そもそも魔王城の場所がわからないからだ。
そこで彼が手に入れた最高の情報がある。
どうやら認められた一部の魔物は、城へのワープが使えるらしい。
それを利用した5年以内に魔王を殺すルート。
今宵実行
クロム「いるんでしょ。メタルくん。」
グラブ「はっ?!誰かいるのか?!」
葉がガサガサと鳴る。
茂みから人の形をした「スライム」が現れた。
メタル「なんでばれたんスか。正解ッス、俺はメタルスライムっスよ。」
クロム「いや~、頼み事があってね〜。僕たち、今すぐ魔王とお話したいわけで〜。」
クロム「ねぇグラブさん……………」
[大文字][大文字][太字][中央寄せ]「生け贄になってくんないかな?」[/中央寄せ][/太字][/大文字][/大文字]