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特に何もない。
 俺にあるまじき平和なやつです。

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Q.友達

#1

Q.友達

Q 妖怪の友達はありですか?
A 時と場合によると思うけど、あり得ないと思いたい

 蝉の鳴き声が煩わしい日だった。

 小学生だった僕(一応言っておくが女だ)は、中学生になって、しばらく経った。まぁ、中学校にはだいぶ慣れたつもりだ。

 受験して、小学生の友達とはだいぶ別れた。近所の幼馴染も変わらず別れた。

 あの日のことが呆然としていると思い浮かぶ。幼馴染とやったホラーなゲーム。

 僕はホラーがいけるかといわれると、全然…無理だ。

 絶叫すると幼馴染…アイツにクラッカーを口に突っ込まれて騙された。なんでだよ。

 あいにくクラッカーはおいしかった。許さない…。

 アイツともやりとりは某メールアプリだけになり、ずいぶん時間が経った。こんな歳でいうことでもないが、時の流れというものは実に早いのである。

 急に驚かせられるのがダメなだけで、ホラーの代名詞であるモンスターや妖怪は平気だ。

 それを突然目の前に飛び出させるとは聞いていない。ホラーを作ったやつは絶対友達いない。

 と信じさせてくれ…友達のいない僕が惨めだ。

 ため息をついた。葉桜のぞよめく音がする。

 部活も何もない放課後は真っ直ぐに帰るに限る。一緒に帰る人はいないし、駅で待ってくれる小学校の友達はあいにく、今日は学校が休みらしい。

 所謂、ぼっちだ。

 電車に揺れる。一駅しか乗らないから座席に座るのが億劫でいつも立っている。見慣れた景色が窓で区切られて次々に流れ込む。じっくり見るには早すぎるロードショーは見るのを諦めた。

 自転車は帰りに使えない。今日は駐輪場に止められなかったからだ。朝は雨が降っていたから、傘を片手に歩くしかない。自転車で行く道をわざわざ歩くのはなんだか倦怠感が心に雪崩れ込む。

 理由は一つもなかった。小さな非日常をたまたま味わいたくなった。坂が連続する道、自転車で走るのには向かな過ぎる。

 どうせ人がいないなら変わらないか…。

 心の中で自分に簡単な向けて言い訳をして十字路を右に曲がった。横目でいつもの道が見える。あっちは駅の近くに公園もある、ちょっとした都会。

 嗚呼、この道は歩いて通ったことはなかったな…。

 坂の頂上に立った。目の前に狐色のもふもふとしてそうな何かが通り過ぎた。

 猫か?アイツが見たら喜びそうだな…。

 にしては珍しい毛の色だな。飼い猫か?

 狭い路地を覗く。猫だったらもういなくなっているだろうなと思った自分がバカだった。

 そこにいたのは狐だった。

「エキノコックス症…」

 そう呟いてトボトボと帰り道に引き返そうとする。

 待て待て待て待て!?

「きつねぇっ!?」

 おかしいでしょ!?ここ!街中!住宅街!!

 僕…。友達が少なすぎてとうとう壊れたのかなぁ。

「何言ってるなの」

 背後、つまるところの路地の方から声がした。思わず思いっきりふりかえる。

 金髪の少女が立っていた。金髪といっても、絵とかでよく見る狐のような色。茶色いような、橙色のような、黄色のような、よく分かんない色。

「返事をするなのよ。アタシだって暇じゃ無いなの」

「は、はい?あ〜え〜っと〜?ど、どちら様でございましょうか…?」

 思わず敬語になる。きっと夢でも見ているのだろう。こんなことが現実にはあ
って欲しくないからほっぺはつねらないけど。

「さっきの狐なのよ。聞いたことないなの?九尾の狐とk」

「あ〜はいはい。厨二病さんですね。よく分かりました。僕がいうのもおかしい気がするけど、今なら引き返せるから辞めなさい。僕は口が硬いからね。やめといてください…ホント…」

 早口で捲し立てる。こんなことが現実にあったら怖いよ本当に。

「妖怪って知らないなの?」

「だとしても!なんで路地裏にいるんだよ!?」

「だって…」

「だって?」

 だってってさ、可愛くしたって…。まだ僕は認めないからね?

「あなた、一人でなんだか可哀想なのよ」

 言葉の刃が見事にクリティカルヒット!どんどん押し込まれていく!おぉっと!貫通したぁ〜!?僕、見事にノックアウト〜!!

「人にはいっていいことと言っちゃダメなことがある。分かる?Do you know?」

「自己紹介なの」

「…。ちょっと一回黙ってもらっていいですかね?」

「いやなのよ」

 ですよねー。この人(そもそも人か?)から逃げたい…。なんなんだよぉ…友達いなくて悪かったな!

 わざわざ僕にズンズンと歩いて近づいてきて、僕を見下ろす…というわけでもなく、僕を見上げる様に見た。

 この人(?)意外にも背が小さかったりする?

「僕になんの用があるんですか…?」

「暇だからなのよ」

「今さっき暇じゃないって言いましたよね!?」

「嘘なのよ」

 ため息をついた。何度目だ。やっと分かった。この人(?)、暇とかじゃなくて、構ってほしいタイプだ。

「…遊んで欲しいんですか?」

「敬語を止めるなの」

「遊びたいの?」

 少女は目を逸らした。


「ま、僕も暇じゃないから。サヨナラ!お元気で!」

 元気に、軽快に、別れの言葉を告げる。ま、人じゃないんだし、最悪置いて行ってもいいでしょ。

「まっ、待つなの!?」

「な〜んで〜すか〜?」

 わざと間延びさせた言葉を浴びせる。さっきの仕返しだ。友達のいない奴を揶揄った罪は重い。

「うっう…」

 あ、やべ、泣き出しそう。周りから見れば幼女をいじめる中学生。その様な噂が立つのだけは避けなければ…。

「遊ぶか…?」

 目が輝いている気がする…小学生(ガキ)かな…。

「遊ぶか」

 コクコクと首が上下に振られる。ガキの相手は苦手なんだよぉ…頑張れ!僕!!

 こうして完全に他人事にして僕はこの幼女の相手を始めた。

「じゃんけーん、ぽん!」

「ちーよーこーれーいーと!なの!」

 何故か神社の境内に連れて行かれて石階段でグリコ。

 ちなみに神社は駅の北口から降りたらすぐの場所。何故僕は戻ってきたのだろうか?

「じゃんけんぽん!」

「ぱーいーなーつーぷーる!かっ、勝った…!」

 結構ギリギリだった…危ない危ない…大人気ないが、幼女に負けるのは負けるでなんだか哀れと言いますか。ま、僕はみんなに平等に接する人っていうことだ!

 水筒で水分補給しつつ、狐の次の遊びに耳を傾けていた。

 遠い西に茜色がかかり始めたことに気づいたのはそれから少し後のことだった。

「っふぅ…あ〜、お茶無くなったわ…。僕、自動販売機寄ってくるから待ってて!」

「えぇ!」

 あ、そんなつもりなかったけど、あの子一回も水分補給してないな。ジュースでも買っておいてやるか。

 自動販売機の側には小さな公園があった。少しだけ考えてから、水筒の蓋を開けて公園の中の蛇口を捻る。冷えた水道水が水筒を満たした。

 自動販売機の方に戻って小銭を取り出す。少し高くてあまり手を出さない、いちごミルクのボタンを押す。

「お〜い!戻ってきたよ!」

 誰もいない境内で声を張り上げる。こんなに大きい声を出すのは久しぶりだ。だって、こんな大きな声で喋れる友達は…。

 首を振ってそんな思考を振り払う。今はあの子に集中だ。

 返事も、足音も何もない。

 境内の地面にある石に黒い点が数個落ちた。どんどん増えて、雨になった。

 水筒の蓋を開けた。口をつけて思いっきり角度をつける。音を鳴らしながら喉が潤う。

 顔が濡れてひんやりとする。悲しいが、帰宅の時間らしい。悲しい?いや、きっと幻でも見てたんだろ。幻想に期待を抱くなんて、

「ばかだなぁ…」

 たまたま屋根の下に置いていたリュックサックから折り畳み傘を取り出す。開くのに苦戦していると、飲む人を見失ったイチゴミルクが不意に落ちた。

 辺りを見渡すと、狐の像が視界に入り込む。お稲荷さんと言う奴だ。

 まさか…ね。

 お稲荷さんの下にいちごミルクを置いて、家へと方向転換。

 蝉の声も葉がさざめく音も、雨音に掻き消された道は、いつも通り、一人だった。

「ただいま!」

「あ〜、これ?友達と遊んでて、ちょうど夕立に会っちゃった」

「友達いない?シツレイな。僕も友達いるよ!」

 親に説明して、タオルで荷物を拭いて、部屋に雪崩れ込んだ。

 友達かあ、友達ねえ。

 スマホを机から取って、アイツのトーク画面を開いた。

『ただいま』

『おかえり〜』

『今、電話できる?』

『いいけど?どしたん?』

『友達できて

 消した。なんだか文面上で言うのはなんか違う。

『電話で話す』

 軽快な着信音が数秒なって、すぐに止んだ。

「ハルカ、久しぶり?」

『コトちゃん、話すのは久しぶりだね』

「あのさ、友達できたんだよね」

『おお〜!おめでと〜!どんな子?』

「金髪みたいな、茶髪みたいな、そう言う髪色で、ガキだな」

『ガキ…?小学生ってこと?』

「あ〜、多分。ね。たまたま会った子でさ、名前も、住んでる場所も、聞いてなくって」

『あ〜ね。ウチもちっちゃい頃そういう子と遊んだな〜』

 次の言葉を出すのがなんだか億劫になった。結局、迷っていることを悟られたくなくて、言った。

「その子とまた会いたいなって、思って。さ」

『う〜ん…そうだなぁ、また同じところ行ったらいるんじゃない?遊んだところとかさ!』

「その手があったわ…」

『コトちゃん思いつかなかったの?珍し〜ね』

 僕の話したいことはそれで終わりにして、別の話題にした。ヒントがあるだけで充分だし。

 今日は、昨日がまるで嘘みたいに晴れ渡っていた。部活の先輩たちは珍しく僕が部活を休むと言って驚いていた。

 あの子のために休むなんて言えないなぁ…。

「とりあえず、あの路地か…」

 自転車は駅に置きっぱなしにして、昨日みたいにいつもの道を逸れる。

 路地を覗くが、猫が驚いてものすごい早さで去っていくだけ。

「この僕がわざわざ時間を使ってるんだぞ!ちゃんと定位置にいろよ!」

 定位置ってなんだよ!

 自分で自分にツッコミを入れながら境内の方に戻る。石階段を登る足が少し重い。

 一番上に立った時、誰もいないかもしれないという不安じゃない。

 シンプルに僕は引きこもりなのだ。つーまーりー?筋肉痛ってこと。体力なくて悪かったな!

 てっぺんにたどり着く。お稲荷さんが一番に視界に飛び込んできた。

 そこには半分ほどに減ったいちごミルクを飲む幼女が座っていた。

「「あ」」

 声がハモった。小さく境内にこだました。なんだかエコーがついて聞こえる。これは幻聴だな。

「名前は?」

 文句を言う前にこれだけは覚えとかなきゃな。コイツ、人外だし。

「凪、なの」

 可愛いな…。って!新手の罠か!目的を忘れてたまるかぁっ!

「そっちこそ、なんていうんなの?」

「コトハ。あのさぁ、何か〜ぼ〜く〜に、いうことないですか〜?」

「何も言わずにいなくなってごめんなさい、なの」

 ため息をついて、凪の頭を撫でる。一応ズボラな僕にしては優しく撫でたつもりだ。が、こんなに嬉しそうにされるとは聞いていない。

「なんでいなくなったんだ?」

「お稲荷さんの集会、なの。昨日あるの、忘れちゃってたなの」

「一言言ってよ…」

 まぁ、妖怪には妖怪なりの決まりでもあるのだろう。凪は反省してそうだし、今回は不問にしてやろう。

「あ、あと、いちごみるく、ありがとうなの!」

「ったく、遊ぶか!」

[水平線]

 夏の日だった。

 蝉は煩いし、葉のさざめく音が響いてる。

 そんな日に、僕は友達ができた。

作者メッセージ

雑でしたねぇ。
 学校のiPadラグすんぎ!

2025/05/16 17:52

鐘平瑠璃(無印の方でも活動中!) ID:≫ 6ybA8nH1Vyj8g
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