「お前は役立たずだ」と追放された俺、実は最強スキル『バグ検出』の持ち主だった件
倒れたレオンを支えるマリアの手が震えている。
ギルは無言で拳を握ったまま、何も言わず立ち尽くしていた。
静かな夜。
崩れた英雄たちの影の中で、レオンはぽつりと口を開いた。
「……あの時、俺たちは“バグ”を見たんだ」
「“あの時”って?」
「初めて魔王と接触した時だ。王都から与えられた討伐任務で、俺たちは“魔王の心臓”を破壊した……はずだった」
(はずだった?)
「だが……心臓の中には、人間の魂があった」
「……!」
「俺たちは“魔王”なんて存在しない、ただの兵器だったって知った。
王都が作り出した、“敵”というコードがそこにあったんだ」
それは、つまり──
「王都が……魔王を作った?」
「そうだ。あの戦争は全部、王族と聖騎士団の“演出”だった。英雄を作り、民を扇動し、力を握るための。
……俺たちは、そのために仲間を失い、命を懸けたんだ」
言葉が出なかった。
だが、俺の中で《バグ検出》が作動する。
《重大構造バグ検出:王都支配階層/コード改竄ログ有》
「……フィリア」
「うん。わたしの一族も、同じような情報をつかんでた。
でも……告発しようとした精霊王族は、全員“事故死”扱いにされた」
つまり、世界は最初から“歪んでいた”。
「なら──俺のやるべきことは、はっきりしてる」
立ち上がる。拳を握る。
コードが光る。再び、《生成スキル》が発動する。
《新規コード展開:世界構造改修準備》
「王都に行く。すべての“偽り”を、修正してやる」
仲間たちも頷いた。
再び、英雄たちは歩き出す。
だが今回は、誰かの命令ではなく──自分の意志で。
◆
そのころ──王都・バリス王宮地下。
謎の人物が、一枚の書状を手にしていた。
『コード使い、起動確認。対象“リオ”、フェイズIIへ進行』
「……ようやく起きたか、“原初のバグ”」
男の顔は、リオと瓜二つだった。
第6話『双子の真実と、“原初のコード”』
王都へ向かう道の途中、リオとフィリアは森を抜け、広がる平原を歩いていた。空は少し曇り、風が肌を撫でる。
「リオ、少し休憩しようか?」
フィリアが声をかけるが、リオはしばらく無言で歩き続ける。
「……俺、なんか変だ」
「変?」
「世界が、やけに近くなった感じがする。俺のスキルも、どんどん強くなっていく。でも、同時に──何か“見えない力”が俺を見ているような気がする」
フィリアがリオの横顔をじっと見つめる。
「それは、おそらくあなたが“原初のバグ”に触れている証拠よ」
「原初のバグ?」
「あなたのスキル、《バグ検出》はただの能力じゃない。世界そのものを構成する“コード”に干渉できるもの。
そして、“バグ”を修正する力は、世界の根本に干渉できる力──つまり、世界そのものを変えることができる力を持っている」
リオはその言葉を噛み締める。
「でも、どうして俺がその力を持ってるんだ?」
「それは……」
フィリアが言葉を濁す。その時、前方に異変を感じた。
「誰か来る!」
「待て、これは──」
声が届く前に、フィリアがリオの腕を引っ張り、木陰に隠れた。
──その瞬間。
「よくわかったな」
振り返ると、そこに立っていたのは、まさにリオ自身にそっくりな男だった。
「お前、誰だ?」
リオが問いかけると、男は冷ややかな笑みを浮かべて答える。
「俺の名前は──リヴァス。お前と同じく、“コード使い”だ」
「──!?」
その言葉に、リオは驚きの表情を隠せない。
「俺とお前、双子だ」
「双子? ……嘘だろ?」
「嘘じゃない。お前が“リオ”なら、俺は“リヴァス”。お前の記憶にないだろうけどな」
リヴァスが一歩踏み出す。すると、空気が歪み、彼の周囲に不自然な力が渦を巻く。
「お前が『バグ検出』のスキルを持つなら、俺は“原初のコード”を操作できる。お前の力は俺のものだ」
「お前……何を言っている?」
リオは反射的に警戒し、フィリアに手を振った。
「フィリア、離れろ!」
だが、リヴァスは冷笑を浮かべる。
「無駄だ。お前の“力”を抑えるコードをすでに書いた」
その瞬間、リオの体に圧力がかかり、動けなくなった。
フィリアも、何かに引き寄せられたかのように身動きが取れない。
「お前のスキルは俺の前では無力だ。さあ、目を覚ませ、リオ──お前がこの世界の“バグ”であることを、忘れるな」
リヴァスの言葉に、リオは心を揺さぶられる。
──俺が“バグ”?
──世界を変える力を持っている?
──それなら、この力をどう使う?
その時、リオの中に何かがはじけた。
「……俺はバグじゃない!」
リオが声を上げると、体中にコードが走り始めた。
周囲の空気が震え、リヴァスの力が一瞬で崩れた。
「っ……!」
「俺が誰だか、教えてやる」
リオは全身から力を解放する。
《コード修正──“原初のバグ”を起動》
リヴァスがその力に圧倒され、膝をつく。
「お前は……“始まり”のコードを触れてはいけなかった……!」
リヴァスが最後に呟くと同時に、リオは一歩踏み出し、その力を完全に解放した。
「これが、俺の“世界”だ」
リヴァスが消え去った瞬間、空気が再び静寂を取り戻す。
◆
「リオ……本当に、あなたが“原初のバグ”の使い手なのね」
フィリアが、少し震えた声で言った。
「でも、これは始まりだ。リヴァスが言っていた通り、俺は世界そのものを変えられる力を持っている。
だからこそ──俺は、王都へ向かう」
「……行きましょう。私も、あなたと一緒に」
二人は王都へ向かって歩き出した。
だが、その先には、まだ見ぬ真実が待っている。
ギルは無言で拳を握ったまま、何も言わず立ち尽くしていた。
静かな夜。
崩れた英雄たちの影の中で、レオンはぽつりと口を開いた。
「……あの時、俺たちは“バグ”を見たんだ」
「“あの時”って?」
「初めて魔王と接触した時だ。王都から与えられた討伐任務で、俺たちは“魔王の心臓”を破壊した……はずだった」
(はずだった?)
「だが……心臓の中には、人間の魂があった」
「……!」
「俺たちは“魔王”なんて存在しない、ただの兵器だったって知った。
王都が作り出した、“敵”というコードがそこにあったんだ」
それは、つまり──
「王都が……魔王を作った?」
「そうだ。あの戦争は全部、王族と聖騎士団の“演出”だった。英雄を作り、民を扇動し、力を握るための。
……俺たちは、そのために仲間を失い、命を懸けたんだ」
言葉が出なかった。
だが、俺の中で《バグ検出》が作動する。
《重大構造バグ検出:王都支配階層/コード改竄ログ有》
「……フィリア」
「うん。わたしの一族も、同じような情報をつかんでた。
でも……告発しようとした精霊王族は、全員“事故死”扱いにされた」
つまり、世界は最初から“歪んでいた”。
「なら──俺のやるべきことは、はっきりしてる」
立ち上がる。拳を握る。
コードが光る。再び、《生成スキル》が発動する。
《新規コード展開:世界構造改修準備》
「王都に行く。すべての“偽り”を、修正してやる」
仲間たちも頷いた。
再び、英雄たちは歩き出す。
だが今回は、誰かの命令ではなく──自分の意志で。
◆
そのころ──王都・バリス王宮地下。
謎の人物が、一枚の書状を手にしていた。
『コード使い、起動確認。対象“リオ”、フェイズIIへ進行』
「……ようやく起きたか、“原初のバグ”」
男の顔は、リオと瓜二つだった。
第6話『双子の真実と、“原初のコード”』
王都へ向かう道の途中、リオとフィリアは森を抜け、広がる平原を歩いていた。空は少し曇り、風が肌を撫でる。
「リオ、少し休憩しようか?」
フィリアが声をかけるが、リオはしばらく無言で歩き続ける。
「……俺、なんか変だ」
「変?」
「世界が、やけに近くなった感じがする。俺のスキルも、どんどん強くなっていく。でも、同時に──何か“見えない力”が俺を見ているような気がする」
フィリアがリオの横顔をじっと見つめる。
「それは、おそらくあなたが“原初のバグ”に触れている証拠よ」
「原初のバグ?」
「あなたのスキル、《バグ検出》はただの能力じゃない。世界そのものを構成する“コード”に干渉できるもの。
そして、“バグ”を修正する力は、世界の根本に干渉できる力──つまり、世界そのものを変えることができる力を持っている」
リオはその言葉を噛み締める。
「でも、どうして俺がその力を持ってるんだ?」
「それは……」
フィリアが言葉を濁す。その時、前方に異変を感じた。
「誰か来る!」
「待て、これは──」
声が届く前に、フィリアがリオの腕を引っ張り、木陰に隠れた。
──その瞬間。
「よくわかったな」
振り返ると、そこに立っていたのは、まさにリオ自身にそっくりな男だった。
「お前、誰だ?」
リオが問いかけると、男は冷ややかな笑みを浮かべて答える。
「俺の名前は──リヴァス。お前と同じく、“コード使い”だ」
「──!?」
その言葉に、リオは驚きの表情を隠せない。
「俺とお前、双子だ」
「双子? ……嘘だろ?」
「嘘じゃない。お前が“リオ”なら、俺は“リヴァス”。お前の記憶にないだろうけどな」
リヴァスが一歩踏み出す。すると、空気が歪み、彼の周囲に不自然な力が渦を巻く。
「お前が『バグ検出』のスキルを持つなら、俺は“原初のコード”を操作できる。お前の力は俺のものだ」
「お前……何を言っている?」
リオは反射的に警戒し、フィリアに手を振った。
「フィリア、離れろ!」
だが、リヴァスは冷笑を浮かべる。
「無駄だ。お前の“力”を抑えるコードをすでに書いた」
その瞬間、リオの体に圧力がかかり、動けなくなった。
フィリアも、何かに引き寄せられたかのように身動きが取れない。
「お前のスキルは俺の前では無力だ。さあ、目を覚ませ、リオ──お前がこの世界の“バグ”であることを、忘れるな」
リヴァスの言葉に、リオは心を揺さぶられる。
──俺が“バグ”?
──世界を変える力を持っている?
──それなら、この力をどう使う?
その時、リオの中に何かがはじけた。
「……俺はバグじゃない!」
リオが声を上げると、体中にコードが走り始めた。
周囲の空気が震え、リヴァスの力が一瞬で崩れた。
「っ……!」
「俺が誰だか、教えてやる」
リオは全身から力を解放する。
《コード修正──“原初のバグ”を起動》
リヴァスがその力に圧倒され、膝をつく。
「お前は……“始まり”のコードを触れてはいけなかった……!」
リヴァスが最後に呟くと同時に、リオは一歩踏み出し、その力を完全に解放した。
「これが、俺の“世界”だ」
リヴァスが消え去った瞬間、空気が再び静寂を取り戻す。
◆
「リオ……本当に、あなたが“原初のバグ”の使い手なのね」
フィリアが、少し震えた声で言った。
「でも、これは始まりだ。リヴァスが言っていた通り、俺は世界そのものを変えられる力を持っている。
だからこそ──俺は、王都へ向かう」
「……行きましょう。私も、あなたと一緒に」
二人は王都へ向かって歩き出した。
だが、その先には、まだ見ぬ真実が待っている。