文字サイズ変更

「お前は役立たずだ」と追放された俺、実は最強スキル『バグ検出』の持ち主だった件

#6

王都の闇と、“始まりのバグ”

倒れたレオンを支えるマリアの手が震えている。
ギルは無言で拳を握ったまま、何も言わず立ち尽くしていた。

静かな夜。
崩れた英雄たちの影の中で、レオンはぽつりと口を開いた。

「……あの時、俺たちは“バグ”を見たんだ」

「“あの時”って?」

「初めて魔王と接触した時だ。王都から与えられた討伐任務で、俺たちは“魔王の心臓”を破壊した……はずだった」

(はずだった?)

「だが……心臓の中には、人間の魂があった」

「……!」

「俺たちは“魔王”なんて存在しない、ただの兵器だったって知った。
王都が作り出した、“敵”というコードがそこにあったんだ」

それは、つまり──

「王都が……魔王を作った?」

「そうだ。あの戦争は全部、王族と聖騎士団の“演出”だった。英雄を作り、民を扇動し、力を握るための。
……俺たちは、そのために仲間を失い、命を懸けたんだ」

言葉が出なかった。

だが、俺の中で《バグ検出》が作動する。

《重大構造バグ検出:王都支配階層/コード改竄ログ有》

「……フィリア」

「うん。わたしの一族も、同じような情報をつかんでた。
でも……告発しようとした精霊王族は、全員“事故死”扱いにされた」

つまり、世界は最初から“歪んでいた”。

「なら──俺のやるべきことは、はっきりしてる」

立ち上がる。拳を握る。
コードが光る。再び、《生成スキル》が発動する。

《新規コード展開:世界構造改修準備》

「王都に行く。すべての“偽り”を、修正してやる」

仲間たちも頷いた。

再び、英雄たちは歩き出す。
だが今回は、誰かの命令ではなく──自分の意志で。



そのころ──王都・バリス王宮地下。

謎の人物が、一枚の書状を手にしていた。

『コード使い、起動確認。対象“リオ”、フェイズIIへ進行』

「……ようやく起きたか、“原初のバグ”」

男の顔は、リオと瓜二つだった。



第6話『双子の真実と、“原初のコード”』
王都へ向かう道の途中、リオとフィリアは森を抜け、広がる平原を歩いていた。空は少し曇り、風が肌を撫でる。

「リオ、少し休憩しようか?」

フィリアが声をかけるが、リオはしばらく無言で歩き続ける。

「……俺、なんか変だ」

「変?」

「世界が、やけに近くなった感じがする。俺のスキルも、どんどん強くなっていく。でも、同時に──何か“見えない力”が俺を見ているような気がする」

フィリアがリオの横顔をじっと見つめる。

「それは、おそらくあなたが“原初のバグ”に触れている証拠よ」

「原初のバグ?」

「あなたのスキル、《バグ検出》はただの能力じゃない。世界そのものを構成する“コード”に干渉できるもの。
そして、“バグ”を修正する力は、世界の根本に干渉できる力──つまり、世界そのものを変えることができる力を持っている」

リオはその言葉を噛み締める。

「でも、どうして俺がその力を持ってるんだ?」

「それは……」

フィリアが言葉を濁す。その時、前方に異変を感じた。

「誰か来る!」

「待て、これは──」

声が届く前に、フィリアがリオの腕を引っ張り、木陰に隠れた。

──その瞬間。

「よくわかったな」

振り返ると、そこに立っていたのは、まさにリオ自身にそっくりな男だった。

「お前、誰だ?」

リオが問いかけると、男は冷ややかな笑みを浮かべて答える。

「俺の名前は──リヴァス。お前と同じく、“コード使い”だ」

「──!?」

その言葉に、リオは驚きの表情を隠せない。

「俺とお前、双子だ」

「双子? ……嘘だろ?」

「嘘じゃない。お前が“リオ”なら、俺は“リヴァス”。お前の記憶にないだろうけどな」

リヴァスが一歩踏み出す。すると、空気が歪み、彼の周囲に不自然な力が渦を巻く。

「お前が『バグ検出』のスキルを持つなら、俺は“原初のコード”を操作できる。お前の力は俺のものだ」

「お前……何を言っている?」

リオは反射的に警戒し、フィリアに手を振った。

「フィリア、離れろ!」

だが、リヴァスは冷笑を浮かべる。

「無駄だ。お前の“力”を抑えるコードをすでに書いた」

その瞬間、リオの体に圧力がかかり、動けなくなった。
フィリアも、何かに引き寄せられたかのように身動きが取れない。

「お前のスキルは俺の前では無力だ。さあ、目を覚ませ、リオ──お前がこの世界の“バグ”であることを、忘れるな」

リヴァスの言葉に、リオは心を揺さぶられる。

──俺が“バグ”?
──世界を変える力を持っている?
──それなら、この力をどう使う?

その時、リオの中に何かがはじけた。

「……俺はバグじゃない!」

リオが声を上げると、体中にコードが走り始めた。
周囲の空気が震え、リヴァスの力が一瞬で崩れた。

「っ……!」

「俺が誰だか、教えてやる」

リオは全身から力を解放する。

《コード修正──“原初のバグ”を起動》

リヴァスがその力に圧倒され、膝をつく。

「お前は……“始まり”のコードを触れてはいけなかった……!」

リヴァスが最後に呟くと同時に、リオは一歩踏み出し、その力を完全に解放した。

「これが、俺の“世界”だ」

リヴァスが消え去った瞬間、空気が再び静寂を取り戻す。



「リオ……本当に、あなたが“原初のバグ”の使い手なのね」

フィリアが、少し震えた声で言った。

「でも、これは始まりだ。リヴァスが言っていた通り、俺は世界そのものを変えられる力を持っている。
だからこそ──俺は、王都へ向かう」

「……行きましょう。私も、あなたと一緒に」

二人は王都へ向かって歩き出した。
だが、その先には、まだ見ぬ真実が待っている。

2025/05/21 21:59

月影 ID:≫ 5iUgeXQ3Vbsck
続きを執筆
小説を編集

パスワードをおぼえている場合はご自分で小説を削除してください。(削除方法
自分で削除するのは面倒くさい、忍びない、自分の責任にしたくない、などの理由で削除を依頼するのは絶対におやめください。

→本当に小説のパスワードを忘れてしまった
▼小説の削除を依頼する

小説削除依頼フォーム

お名前 ※必須
Mailアドレス
(任意)

※入力した場合は確認メールが自動返信されます
削除の理由 ※必須

なぜこの小説の削除を依頼したいですか

ご自分で投稿した小説ですか? ※必須

この小説は、あなたが投稿した小説で間違いありませんか?

削除後に復旧はできません※必須

削除したあとに復旧はできません。クレームも受け付けません。

備考欄
※伝言などありましたらこちらへ記入
メールフォーム規約」に同意して送信しますか?※必須
小説のタイトル
小説のURL
/ 6

コメント
[1]

小説通報フォーム

お名前
(任意)
Mailアドレス
(任意)

※入力した場合は確認メールが自動返信されます
違反の種類 ※必須 ※ご自分の小説の削除依頼はできません。
違反内容、削除を依頼したい理由など※必須

盗作されたと思われる作品のタイトル

※できるだけ具体的に記入してください。
特に盗作投稿については、どういった部分が元作品と類似しているかを具体的にお伝え下さい。

《記入例》
・3ページ目の『~~』という箇所に、禁止されているグロ描写が含まれていました
・「〇〇」という作品の盗作と思われます。登場人物の名前を変えているだけで●●というストーリーや××という設定が同じ
…等

備考欄
※伝言などありましたらこちらへ記入
メールフォーム規約」に同意して送信しますか?※必須
小説のタイトル
小説のURL