翌朝。
森の外れ、霧の中に立つ一人の男。

「……いたぞ、コード使い」

銀髪を揺らすその男──かつての仲間、リーダーのレオンだった。

背後には、武闘家ギル、僧侶マリア、そして……魔導士ミレナの姿もある。だが彼女は目を伏せ、前を見ない。

「お前のスキルが“チート級”だって噂が広まってな。王都の連中がビビってる」

「だから、殺しに来たってわけか」

「当然だ。お前みたいなバグは、この世界に不要だ」

レオンが剣を構える。
その剣──俺の《バグ検出》には、真っ赤な表示が浮かんでいた。

《偽装武器：魔族製カースブレード（使用者精神侵食中）》

（……やっぱりな）

レオンはすでに“英雄”じゃない。
魔族に取り込まれ、その意思で動いている傀儡だった。

「リオ、覚悟しろ──ッ！」

レオンが一気に踏み込む。その速度は、かつての彼の比じゃない。

「フィリア！」

「はいっ！」

俺の合図で、フィリアが風壁を発動。だがレオンの剣は、それすら切り裂いた。

（こいつ……ただの魔剣じゃない。スキルそのものを“無効化”してくる……！）

◆

《新たなバグを検出──対象：魔剣のコード構造。バグ修正可能性：45％》

（45％か……やるしかない！）

俺は腕を前に突き出し、《バグ修正コード》を発動。
一瞬、空間がざらつき、青い光が剣を包んだ。

《魔剣の支配コードに干渉中──修正開始》

「なに……っ！？」

レオンの動きが止まる。目の奥で、黒い光が軋むように揺れる。

「……レオン。お前、もう自分じゃなかったんだな」

俺は手を握る。
その手に、銀の短剣が生成される。

《サブスキル《コード生成》発動──武器：純正コードブレード》

「これが、俺の力だ！」

俺は剣を振るう。銀の光が走り、レオンの魔剣が真っ二つに砕け散った。

「ぐああああああああっ！！」

レオンの体から、黒い霧が抜けていく──魔族の支配コードが、消えた。

◆

「……よかった。まだ戻れる」

俺はそう呟いた。

そのとき、フィリアが俺の肩に手を置いた。

「リオ……君のスキル、本当に世界を救えるかもしれない」

「だったら、修正しようぜ。全部の“バグ”をな」

そして、物語は新たな章へ向かう。