霧の森を抜け、神殿の前に立つリオとフィリア。
その巨大な扉の前に立った時、二人は言葉を交わすことなく、ただその圧倒的な存在感を感じていた。

「ここが……原初のコードの秘密が隠されている場所？」

「はい。霧の森の精霊たちが守っている場所。その力が、世界に大きな影響を与えることになる」

ミアが静かに語る。彼女の目には、どこか決意と不安が入り混じった表情が浮かんでいる。

「リオ、あなたは覚悟を決めるべきです。
この先に進めば、あなたが選ぶ道によって世界が変わる。その選択が、すべてを左右する」

リオは深く息をつき、目を神殿の扉に向けた。

「選ぶ道……か」

その言葉を噛み締めながら、リオは扉を開けた。

◆

神殿の中は、暗く、どこか神聖な雰囲気が漂っていた。
壁には古代の文字が刻まれており、その中には「原初のコード」に関する記録が残されている。

「これが……原初のコード？」

リオが呟くと、ミアは頷いた。

「はい。これこそが、この世界を根底から支配している力。
だが、このコードには大きな秘密が隠されている」

その時、神殿の中央にある祭壇から、突然、眩い光が放たれる。
その光に引き寄せられるように、リオは足を踏み出した。

「リオ、気をつけて！」

フィリアの声が響くが、リオはそのまま祭壇に近づく。
すると、光の中から一人の人物が現れた。その人物は、リオが予想していた通り、セヴァンだった。

「リオ、フィリア……来るべき時が来たようだな」

セヴァンの声は、冷徹でありながら、どこかしら楽しげな響きを持っていた。

「セヴァン……お前、ここにいたのか」

リオはその場に立ち止まり、鋭い目を向ける。
セヴァンはゆっくりと歩み寄り、その目をじっと見つめた。

「私は、ただこの世界の“秩序”を守ろうとしていただけだ。だが、君が現れてから、すべてが変わった」

「秩序……？」

「そうだ。この世界を支配する力が、君には備わっている。君の力が、私たちの手に渡れば、この世界は完全に支配できる。
だが、君がそれを使うか使わないか、それが問題なのだ」

セヴァンは手をかざし、祭壇から浮かび上がった光のコードをリオに向けて放つ。

「その力を使うことで、君は世界を“修正”することができる。しかし、選ぶべき道はどちらか一つ。
支配するか、壊すか──君がその選択を下すときが来た」

リオはコードを受け止め、その力を手にした。しかし、彼の心の中で、深い葛藤が渦巻いている。

（支配する……壊す……）

その瞬間、フィリアが前に出て、リオの手を握る。

「リオ、あなたには選ぶ力がある。
この力が、世界をどう変えるかは、あなた次第。どんな道を選んでも、私はあなたと一緒にいるわ」

リオはその言葉に胸を打たれ、再びセヴァンを見据える。

「セヴァン、お前の言う“秩序”なんて、俺には意味がない。
俺が選ぶ道は……“自由”だ。誰もが自由に生きられる世界を作りたい！」

その瞬間、リオの手に集まった光のコードが爆発的に膨れ上がり、神殿の空間を震わせる。

「何！？ この力は……！」

セヴァンは驚きながらも、その力を受け止めようとするが、リオの力がその全てを圧倒していく。

「俺が選ぶのは、誰もが自由に生きる世界だ！ それが、俺の“正義”だ！」

リオの力が全てを包み込み、セヴァンはその力に飲み込まれるように消えていった。
その瞬間、神殿の中に残されたのは、静寂だけだった。

◆

神殿を抜け出した後、リオとフィリアは再び霧の森を進んでいた。
セヴァンとの戦いで、リオは新たな決意を胸に抱えていた。

「これからだな、フィリア。俺たちが目指すべき未来は、まだ見えないけど──」

フィリアは静かに頷く。

「うん。私も、あなたと一緒に進んでいくわ」

リオは少し笑みを浮かべ、前を向いた。

「よし、行こう。まだまだ、俺たちの冒険は終わらない」

二人は歩みを進め、霧の森を抜けていった。未来には、どんな試練が待ち受けているのかは分からない。
だが、リオとフィリアは、どんな困難にも立ち向かう覚悟を決めていた。