そのメイド、要注意です。
「坊っちゃん?」
ライラは振り返り、馬車を見た。
特に見た目に変化もない、先程と全く同じ見た目の馬車。
だが、ライラが感じた違和感はそこではない。
馬車を引いていた馬が急停止し、困惑している御者に少しだけライラは注意を向けた。いつも街に行くのに、この森は通っていない。
御者はアラリック家に仕えている者だが、不可解な行動をしたからには警戒するを得ない。
「坊っちゃん?」
ライラはもう一度、同じ言葉を馬車に向けて発する。
だが、想像していた返事は無く、ライラは躊躇なく馬車に近寄った。
扉は閉まっており、デインが開閉をした痕跡は全く無い。
ライラの手袋がされた手が、金色のドアノブを掴む。それを下げ、ライラは勢いよく扉を開いた。
その勢いは、扉が壊れるのではないかと思わせるほどであり、実際に壊れた。だが、ライラはそちらには目もくれずに、中を見て、その眼鏡の奥で黒瞳を細めた。
_______そこに、デインの姿はなかった。
中に入って軽く調べてみると、つい先程までデインが座っていた場所には微かな温もりがあり、デインがいたという事実を証明していた。
だが、デインはいない。
ライラは何かあれば対応できるように全方向に警戒を向けていた。なのに、デインは姿を消した。
物音も声も無く、消えたデイン。
ライラは、物凄い速度で思考を回転させ、あらゆる可能性を潰していく。
ライラが顎に手を添え、考えているその時だった。
短い悲鳴が聞こえたのは。
「うわっ!」
ライラは声に反応させ、馬車の外を確かめる。
待たせていたはずの御者の姿はそこにはなく、虚空に向かって威嚇をしている馬の姿しかない。
「_______そういう事か」
ライラは小さくそれだけ呟き、馬に近寄った。
優しく首を撫でてやり、馬を宥める。すると、馬はすぐに大人しくなり、自分を見つめるライラに目を向けた。
「すぐに屋敷まで引き返して、このメモを使用人に」
ライラはそう言いながら何かを書いたメモを、馬に向ける。
馬は彼女の言葉に頷くように首を動かし、ライラが持っていたメモを口に咥えると、そのまま屋敷の方角へと足を動かした。
馬を見送りながら、ライラは安心したように微笑んで________
「早く出てきたらどうです?______隠れてても無駄なのですから」
誰もいない森に向けてそう言った。
その言葉を言った瞬間、先程までは無かった人影が三十人程、素早くライラは囲むようにして立った。
その人影は全て、黒色のローブを着ており、フードを目深に被っていて顔を認識する事は出来ない。先程の動きを見るに、戦闘に関しては素人ではなさそうだ。恐らく全員、男ではあるだろうと、ライラは予想する。体つきがしっかりしているし、勘でそう判断しておこう。
「まずは、目的を聞きます。坊っちゃんは攫ったのはアナタ達ですか?」
囲まれているにも関わらず、ライラは微笑みを浮かべたままそう問う。だが、男らは沈黙しており、無音に等しい息遣いが聞こえるくらいだ。
「答えないなら構いません_______無理矢理聞くまでですので」
ライラがそう口にした瞬間、そこにあった女性の姿が瞬く間に消えた。
男らの間に困惑が広がる。だが、その困惑は次の瞬間には戦慄へと塗り替えられる。
「あら、人間ではあるようですね」
姿が全く見えないライラの声が、背後から聞こえてくる。
振り返ろうとしたが、それは物理的に阻まれた。
一人の男の頭が、鈍い音を立てて地面へと落ちる。
音もなく断たれた頭と体を繋げていた首はまるで芸術品のようにも思える程、綺麗に断たれている。それは、惚れ惚れする程美しい人体の破壊だった。
そして、それをした張本人である女性_______ライラは、メイド服のスカートを揺らしながら、手に持ったナイフをクルクルと器用に回しながら、震える程美しい笑みを浮かべた。
「さて______次に痛がりたいのは誰でしょうか?」
ライラは振り返り、馬車を見た。
特に見た目に変化もない、先程と全く同じ見た目の馬車。
だが、ライラが感じた違和感はそこではない。
馬車を引いていた馬が急停止し、困惑している御者に少しだけライラは注意を向けた。いつも街に行くのに、この森は通っていない。
御者はアラリック家に仕えている者だが、不可解な行動をしたからには警戒するを得ない。
「坊っちゃん?」
ライラはもう一度、同じ言葉を馬車に向けて発する。
だが、想像していた返事は無く、ライラは躊躇なく馬車に近寄った。
扉は閉まっており、デインが開閉をした痕跡は全く無い。
ライラの手袋がされた手が、金色のドアノブを掴む。それを下げ、ライラは勢いよく扉を開いた。
その勢いは、扉が壊れるのではないかと思わせるほどであり、実際に壊れた。だが、ライラはそちらには目もくれずに、中を見て、その眼鏡の奥で黒瞳を細めた。
_______そこに、デインの姿はなかった。
中に入って軽く調べてみると、つい先程までデインが座っていた場所には微かな温もりがあり、デインがいたという事実を証明していた。
だが、デインはいない。
ライラは何かあれば対応できるように全方向に警戒を向けていた。なのに、デインは姿を消した。
物音も声も無く、消えたデイン。
ライラは、物凄い速度で思考を回転させ、あらゆる可能性を潰していく。
ライラが顎に手を添え、考えているその時だった。
短い悲鳴が聞こえたのは。
「うわっ!」
ライラは声に反応させ、馬車の外を確かめる。
待たせていたはずの御者の姿はそこにはなく、虚空に向かって威嚇をしている馬の姿しかない。
「_______そういう事か」
ライラは小さくそれだけ呟き、馬に近寄った。
優しく首を撫でてやり、馬を宥める。すると、馬はすぐに大人しくなり、自分を見つめるライラに目を向けた。
「すぐに屋敷まで引き返して、このメモを使用人に」
ライラはそう言いながら何かを書いたメモを、馬に向ける。
馬は彼女の言葉に頷くように首を動かし、ライラが持っていたメモを口に咥えると、そのまま屋敷の方角へと足を動かした。
馬を見送りながら、ライラは安心したように微笑んで________
「早く出てきたらどうです?______隠れてても無駄なのですから」
誰もいない森に向けてそう言った。
その言葉を言った瞬間、先程までは無かった人影が三十人程、素早くライラは囲むようにして立った。
その人影は全て、黒色のローブを着ており、フードを目深に被っていて顔を認識する事は出来ない。先程の動きを見るに、戦闘に関しては素人ではなさそうだ。恐らく全員、男ではあるだろうと、ライラは予想する。体つきがしっかりしているし、勘でそう判断しておこう。
「まずは、目的を聞きます。坊っちゃんは攫ったのはアナタ達ですか?」
囲まれているにも関わらず、ライラは微笑みを浮かべたままそう問う。だが、男らは沈黙しており、無音に等しい息遣いが聞こえるくらいだ。
「答えないなら構いません_______無理矢理聞くまでですので」
ライラがそう口にした瞬間、そこにあった女性の姿が瞬く間に消えた。
男らの間に困惑が広がる。だが、その困惑は次の瞬間には戦慄へと塗り替えられる。
「あら、人間ではあるようですね」
姿が全く見えないライラの声が、背後から聞こえてくる。
振り返ろうとしたが、それは物理的に阻まれた。
一人の男の頭が、鈍い音を立てて地面へと落ちる。
音もなく断たれた頭と体を繋げていた首はまるで芸術品のようにも思える程、綺麗に断たれている。それは、惚れ惚れする程美しい人体の破壊だった。
そして、それをした張本人である女性_______ライラは、メイド服のスカートを揺らしながら、手に持ったナイフをクルクルと器用に回しながら、震える程美しい笑みを浮かべた。
「さて______次に痛がりたいのは誰でしょうか?」