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そのメイド、要注意です。

#2

#2 そのメイド、はぐらかす。

ある日、デインは勉強をしていた。

十歳の少年でも、デインは世界有数の財閥の跡継ぎ息子なのだ。人一倍の努力と知識は必要とされる。

その日も、デインはいつも通り自分の部屋で、机に向かって勉強をしていた。

ふと、ドアからノック音が聞こえる。

一言だけ返事をすると、ドアがゆっくりと開き、ライラとは別の使用人が入ってきた。


「坊っちゃん、外出の準備が済みましたのでどうぞ、お外に」


使用人の言葉を聞き、デインは「分かった、今行く」と返事し、すぐに近くに掛けていた上着を羽織る。

外出と言っても、街中を軽く見て回り、気になる物があれば買う程度の事だ。デインの父は、街を見てくる事も勉強の一環だと言っており、デインはよく外出している。

玄関ホールを出て、真っ直ぐ進むとすぐに門が見えてくる。

デインの背丈よりも何倍も大きい門を出ると、そこには馬車があった。

黒が基調のボディに、金色でシンプルかつ厳かな装飾を施したその馬車は、アラリック家の人間しか乗れない馬車だ。

馬車のすぐ近くにはいつも通りヘラヘラと笑っているメイド―――――――ライラが立っている。


「この前も行ったばっかでしょうに、また行くんですか?」


「仕方がないだろ、父上に言われているのだから。嫌なら着いてくるな」


「と、言われましてもねぇ・・・・・・私は坊っちゃん専属のメイド兼護衛なので、そうもいかないのですよ、残念ながら」


両手を上げてそう言うライラに、デインは溜息を吐く。

彼女のこの態度にはもう慣れたが、やはり疲れてくる。だが、ライラから使用人を変える事は禁止されているし、ライラは掃除以外の仕事は完璧に出来るので文句のつけようもない。

あとは、その性格されどうにかなれば良いのだが。

デインはそう思いながら、馬車に乗り込む。

内装はワインレッドの上等な生地で作られた四人掛けのソファがあり、座り心地は充分だ。奥の方にデインは座り、その目の前にライラは腰掛ける。

二人が乗ったのを見ると、御者台に座った御者が馬車を発進させた。


「今日行くのは[漢字]倫敦[/漢字][ふりがな]ロンドン[/ふりがな]でしたっけ?」


「ああ、行ったことがあるのか?」


「ええ、随分前に一度だけ。人も多くてとても良い街でしたよ」


にっこりとした笑みでライラはそう言う。

彼女は何故か世界のあらゆる事を知っている。

例えば、遠い東の国である日本の文化についてもよく知っていたり、たまに聞いた事もない言葉を喋る事があるのだ。

ライラはそれを聞かれた時、「昔は旅してましたから」と言っている。

だが、彼女の年齢は容姿から予想するに二十代前半だ。そんな若い頃から旅するなんて、変わった幼少期を過ごしたものだと、デインは思った。


「ライラ、お前は何歳だ?」


「女性にそんなストレートに年齢を聞くだなんて。坊っちゃん、モテませんよ」


「教える気は無いんだな」


一応聞いただけで、結果は分かっていた。

いつも通りの結果に、デインが少しだけ頬を膨らませていると馬車が急停止した。

窓を見ると街など見えておらず、森中だ。

ライラはすぐに馬車を出て、御者に聞いた。


「何故停止を?」


「それが、馬が急に止まってしまい・・・・・・動く気配も全く無いのです」


「・・・・・・坊っちゃん、中でちゃんと待っていて下さい。少し見てきます」


「あ、ああ」


ライラはそう言って御者台の方へと向かう。

「そういえば」と呟きながら、デインは窓の外を見た。

この森の事はよく知っている。街の人間達がよく噂をしているのだ。



_____『迷いの森』_____



この森に入った人間は、神隠しにあったように姿を消す。それも、消えるのは一人で森に入った者だけだ。

一度、警察が調査をしたが、人がいた痕跡どころか、動物が生活している痕跡すらもない。

姿を消した者達には、家族などの血縁者もおり、姿を消す理由は無いと言われている。警察はこの不可解な失踪を「事件」としており、誘拐したであろう犯人を探っている。

デインがライラに付いて、馬車を出ようとしたその時だった。




_________デインの視界が歪んだのは。

2025/05/21 17:03

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