夢の中で逢いましょう
目を開けるとそこは碧くんと話したあの川の土手だった。
「つながっている……?」
もし、このまま夢が続けば、家や寝る所は無い。ホテルに行くお金だって持っていない。どうやって、この世界で生きていけばいいのだろう。
茜色に染まっていた空も段々と暗くなり、夜が来た。
仕方なく私は[漢字]土手[/漢字][ふりがな]ここ[/ふりがな]で寝ることにした。
「あ。……えっと。……八神」と後ろから声が聞こえた。
私はすぐに起き上がり、「覚えてたんだ!」と言った。
「当然だろ。ついさっきのことなんだから」
ついさっき……。
「ついさっきって、別れてから何分たったの?」
「えーっと……」と碧くんはポケットの中にあるスマホを取り出し、「二十分」と呟いた。
「そう……」私は一言言い、目の前にある川を見た。耳を傾けると、ザーっと川が流れる音がする。どこまでも広がる青々とした草。空には無数の星。いつでも、どこでも見れる普通の光景だったが、目が離せなかった。
「なあ」と碧くんが話しかけてきた。私は無言で振り返った。
サーっと優しい風が吹く。サーっと草の音がする。髪がなびいて私の顔にかかる。それを耳にかける。「何……?」と私は不思議そうに見つめた。
碧くんは「家、無いんだろう」と言った。何故、知っているのだろう、と思い、訊いてみた。
「いや、普通に考えて無いだろう」
確かに、目を覚ますと知らない場所にいて、家があるとは絶対に考えられない。
「確かに……」
「だからさ、俺の家に……」と碧くんは少し照れ臭そうに言った。
「いいの⁉︎」
私は興奮したように言った。だって、推しの家に行けるということだもん。
「うん」と碧くんは迷わず言った。
「じゃあ……。お願いします……」私も少し照れ臭かった。
並んで碧くんの家に向かって歩く。勿論、無言で。
何も話すことがない。だって、まだ会ってから数時間しか経っていないのだから。
「えっと……。家、意外と遠いね」それだけしか言えなかった。無理に話したって申し訳ないし。それに私だって気まずいし……。
「そう? そんなに?」意外と彼は話してくれた。私は少し嬉しかった。
「ただいまー」と碧くんはドアを開けた。
「おかえり。……あら? 碧が言ってた人って……。この子のこと?」と碧くんの母が言った。
本当に……。本当に私は[漢字]「青空の中で君と」[/漢字][ふりがな]アニメ[/ふりがな]の世界に居るんだ。私は碧くんと彼の母を見て実感した。
「あ、はい! 私、八神るりと言います!」
私は笑顔で言ったはずだが、緊張して顔がこわばり、作り笑いのようになってしまった。
……やっぱり緊張するなあ
私はぼんやりと思った。
「水無月 碧の母、水無月 ひとみです。よろしくね。るりちゃん」とひとみさんは微笑んで言った。
「よ、よろしくお願いします!」私も彼女の微笑みにつられ、笑った。
すると、ひとみさんは何か思い出したかのように「あ! あれ、買い忘れた!」と言い、「ちょっとスーパー行ってくるね」と急いで外に出た。
二人きりになった。すると、碧くんが口を開き、「ちょっと紅茶淹れてくる。好きなとこ、見てていいよ」と笑みを浮かべて言った。
何故……? 私でも親友に合わない。なのに何故、無口な碧くんが……?
「えっ⁉︎ 家主がそんなこと言う⁉︎」
私は驚いた。
「別にいいじゃん。変にじろじろ見られるの、嫌だし」
「そりゃあ、そうだけど……。じゃあ、お言葉に甘えて」
私はそう言い、探索を始めた。
碧くんの部屋に入った。壁が本棚に埋め尽くされていて、壁があまり見えない。本棚はすごく整っているが、本のタイトルは全て文字化けのようになっていて、読めない。だが、その中に一つ『ユメノキロク』というタイトルの本があった。
気になって中を見てみると、真っ白なページ──何も書いていないページだらけだった。
とうとう最後のページになった。何も無いだろう、と思いながらも開いてみる。すると、最後に小さく、『また君に会えるといい』と書かれていた。その字は碧くんが書く字に似ていた。
学習机の上を見た。奥に家族写真が丁寧に飾ってあった。そこにはぎこちない笑顔を浮かべる碧くん、後ろには優しい笑みを浮かべる両親の姿があった。その家族写真の横に瑠璃色のハンカチが、丁寧にたたまれていた。広げてみると、『Y.R』というイニシャルが縫われていた。
「もしかして……。これ……」
私は口を閉じた。
──なんか、見られている気がする
私は怖くなり、その場を去った。
私はリビングに戻った。
「何か見た?」
……さっきのこと、言わないほうがいいかな?
私はそう思い、口をつぐんだ。
「えっと……。特に……?」
「……そう。あ、紅茶」
と彼は言い、「はい」と私に紅茶を出した。「ありがとう」私はそう言い、息を吹きかけて飲んだ。
「……おいしい」
夢のはずなのに、何故、味が分かるのだろうか。私は本当に「夢の世界」にいるのだろうか。混乱したが、「そう? よかった」という碧くんの声で私は現実に戻された。
すると、
……あれ? なんだか眠くなって……。
私はその場で寝てしまった。
「また会おう」とノイズのかかった声で誰かが言った。
「つながっている……?」
もし、このまま夢が続けば、家や寝る所は無い。ホテルに行くお金だって持っていない。どうやって、この世界で生きていけばいいのだろう。
茜色に染まっていた空も段々と暗くなり、夜が来た。
仕方なく私は[漢字]土手[/漢字][ふりがな]ここ[/ふりがな]で寝ることにした。
「あ。……えっと。……八神」と後ろから声が聞こえた。
私はすぐに起き上がり、「覚えてたんだ!」と言った。
「当然だろ。ついさっきのことなんだから」
ついさっき……。
「ついさっきって、別れてから何分たったの?」
「えーっと……」と碧くんはポケットの中にあるスマホを取り出し、「二十分」と呟いた。
「そう……」私は一言言い、目の前にある川を見た。耳を傾けると、ザーっと川が流れる音がする。どこまでも広がる青々とした草。空には無数の星。いつでも、どこでも見れる普通の光景だったが、目が離せなかった。
「なあ」と碧くんが話しかけてきた。私は無言で振り返った。
サーっと優しい風が吹く。サーっと草の音がする。髪がなびいて私の顔にかかる。それを耳にかける。「何……?」と私は不思議そうに見つめた。
碧くんは「家、無いんだろう」と言った。何故、知っているのだろう、と思い、訊いてみた。
「いや、普通に考えて無いだろう」
確かに、目を覚ますと知らない場所にいて、家があるとは絶対に考えられない。
「確かに……」
「だからさ、俺の家に……」と碧くんは少し照れ臭そうに言った。
「いいの⁉︎」
私は興奮したように言った。だって、推しの家に行けるということだもん。
「うん」と碧くんは迷わず言った。
「じゃあ……。お願いします……」私も少し照れ臭かった。
並んで碧くんの家に向かって歩く。勿論、無言で。
何も話すことがない。だって、まだ会ってから数時間しか経っていないのだから。
「えっと……。家、意外と遠いね」それだけしか言えなかった。無理に話したって申し訳ないし。それに私だって気まずいし……。
「そう? そんなに?」意外と彼は話してくれた。私は少し嬉しかった。
「ただいまー」と碧くんはドアを開けた。
「おかえり。……あら? 碧が言ってた人って……。この子のこと?」と碧くんの母が言った。
本当に……。本当に私は[漢字]「青空の中で君と」[/漢字][ふりがな]アニメ[/ふりがな]の世界に居るんだ。私は碧くんと彼の母を見て実感した。
「あ、はい! 私、八神るりと言います!」
私は笑顔で言ったはずだが、緊張して顔がこわばり、作り笑いのようになってしまった。
……やっぱり緊張するなあ
私はぼんやりと思った。
「水無月 碧の母、水無月 ひとみです。よろしくね。るりちゃん」とひとみさんは微笑んで言った。
「よ、よろしくお願いします!」私も彼女の微笑みにつられ、笑った。
すると、ひとみさんは何か思い出したかのように「あ! あれ、買い忘れた!」と言い、「ちょっとスーパー行ってくるね」と急いで外に出た。
二人きりになった。すると、碧くんが口を開き、「ちょっと紅茶淹れてくる。好きなとこ、見てていいよ」と笑みを浮かべて言った。
何故……? 私でも親友に合わない。なのに何故、無口な碧くんが……?
「えっ⁉︎ 家主がそんなこと言う⁉︎」
私は驚いた。
「別にいいじゃん。変にじろじろ見られるの、嫌だし」
「そりゃあ、そうだけど……。じゃあ、お言葉に甘えて」
私はそう言い、探索を始めた。
碧くんの部屋に入った。壁が本棚に埋め尽くされていて、壁があまり見えない。本棚はすごく整っているが、本のタイトルは全て文字化けのようになっていて、読めない。だが、その中に一つ『ユメノキロク』というタイトルの本があった。
気になって中を見てみると、真っ白なページ──何も書いていないページだらけだった。
とうとう最後のページになった。何も無いだろう、と思いながらも開いてみる。すると、最後に小さく、『また君に会えるといい』と書かれていた。その字は碧くんが書く字に似ていた。
学習机の上を見た。奥に家族写真が丁寧に飾ってあった。そこにはぎこちない笑顔を浮かべる碧くん、後ろには優しい笑みを浮かべる両親の姿があった。その家族写真の横に瑠璃色のハンカチが、丁寧にたたまれていた。広げてみると、『Y.R』というイニシャルが縫われていた。
「もしかして……。これ……」
私は口を閉じた。
──なんか、見られている気がする
私は怖くなり、その場を去った。
私はリビングに戻った。
「何か見た?」
……さっきのこと、言わないほうがいいかな?
私はそう思い、口をつぐんだ。
「えっと……。特に……?」
「……そう。あ、紅茶」
と彼は言い、「はい」と私に紅茶を出した。「ありがとう」私はそう言い、息を吹きかけて飲んだ。
「……おいしい」
夢のはずなのに、何故、味が分かるのだろうか。私は本当に「夢の世界」にいるのだろうか。混乱したが、「そう? よかった」という碧くんの声で私は現実に戻された。
すると、
……あれ? なんだか眠くなって……。
私はその場で寝てしまった。
「また会おう」とノイズのかかった声で誰かが言った。