[小文字]『貴方は今日からこの人と過ごすのよ。』[/小文字]
そんな言葉にはもう慣れてる。
緊張なんて全くしない。


施設育ちの高校生・千春は中学まで施設で育った。
千春の養父は数え2人。
最初の1人は千春が小学2年の頃の養父。
最後まで愛すからと言いながら結局自分を見捨て、酒に溺れた。
次の養父は千春が小学5年の頃の養父。
なんとヤクザグループのボスで、千春は少年院に入るところだった。
千春はそんな養父ばかりの生活が慣れている。
その影響か、千春の性格は常に省エネである。
そして今日、千春は高校生になった。
ついでに千春に3人目の養父ができた。
その養父は[漢字]冬馬[/漢字][ふりがな]とうま[/ふりがな]という。
見た目的に穏やかな感じだ。
(どうせ皆最初はそうなんだから。)
千春はそう思いながら、渋々冬馬という男について行った。

「千春ちゃん、だよね。よろしくね。」
冬馬は緊張しているのか、少し声が震えていた。
そんな中千春は一文字の口を全く開けない。
冬馬のことが信じられないのだろう。
冬馬は気まずい時間を掻き乱すように言った。
「実は僕、妻がいたんだ。でも、癌を患って眠りについちゃって。僕は不妊でさ。」
初めて話すかのような感じだった。
それでも千春は口を開けない。
目より下の黒色の前髪、人を信じたことなど一切ないとでも言いたげな半開きの目、一文字の口。
冬馬はそんな千春を養子にとって大丈夫かと心配していた。
「すみません、学校の時間なので。」
千春はやっとその口を開けてみせた。
千春は人との摂取があまりないので、大抵は一言で会話を終わらせる。
そんな千春を嫌う人物は多々いる。


千春は学校の教室のドアを開けてため息をつく。
うるさい男子。猿のように叫ぶ女子。
千春の存在はそんなクラスメイトに飲み込まれてしまうのだ。
ホームルームが終わり、担任の先生が決まった。
クラスメイトは一斉に教室を出ていく。
千春も最後の列に並んで帰って行く。
すると後ろから、千春の肩に手の感触がきた。
「鈴鹿さんだよね？僕、後ろの席の瀬戸考間。」
千春は黙ったまま、その考間と言った男子生徒の手を払った。
千春は冷たい視線を送って帰ってしまった。