二次創作
ビー玉さがし
#1
みだれとんだ誹謗と中傷は、めぐりめぐって周りまわり、結局僕にやって来た。今日の事件の話だ。あの警察はすごく頭が固くて、それに馬鹿だった。この僕の実力をちっとも認めずに、あれこれ苦言ばっかり。しかもどれもが見当はずれ。
全く、これだから一般人は。よく「頭の中がお花畑なんじゃないか?」なんて言うけど、一般人の頭の中には文句を吐き続ける花でも生えてるらしい。
愚かな赤子如きに憤慨するほど子供じゃないつもりだけど、かといってこの苛々を黙って飲みこむのも性に合わない。そもそも赤子なら罪はない、だけど相手は僕より年上の五十路だ。
「国木田ぁ。ビー玉ほしい」
腹立ち紛れに国木田に無茶をふっかけた。今探偵社にはビー玉どころかラムネひとつない。それに僕が推理するまでもなく国木田はビー玉を所持していない。
国木田は伸ばした背筋を固まらせて、「ビー玉ですか?」と聞き返した。色鉛筆の金色みたいな彩色の瞳が、ちらちら揺れる。どうすればいいか思案しているらしい。迷った末、国木田は手帳に手を伸ばした。
笑いそうになる。僕の我儘のために、大切な手帳の1ページを破ろうとしているのか。
国木田の目がきらりと煌めいた。
ああ、それが見たかったんだ。
僕はぴょんと椅子を飛び降りて、手帳を掴んだ国木田に近寄った。「乱歩さん?」と調子のはずれた声で驚く国木田の顔を、下からじいっと眺めこむ。
そのきらきらが、僕は好きなんだ。僕がそう云うと、国木田は首を傾げた。満足したんだよと云ってやると、それはよかったですと返される。まだその凛とした顔には疑問が色濃いけれど。
愉快だ。
太宰みたいな頭のまわる奴は仕事上最適だ。余分な言葉がいらないから楽だし。だけど国木田みたいな反応の素直な奴と話すのはやっぱり楽しいのだ。訳の分からないというその顔が面白い。
瞳のきらきらも、素直な応えも、全く愉快なことである。
全く、これだから一般人は。よく「頭の中がお花畑なんじゃないか?」なんて言うけど、一般人の頭の中には文句を吐き続ける花でも生えてるらしい。
愚かな赤子如きに憤慨するほど子供じゃないつもりだけど、かといってこの苛々を黙って飲みこむのも性に合わない。そもそも赤子なら罪はない、だけど相手は僕より年上の五十路だ。
「国木田ぁ。ビー玉ほしい」
腹立ち紛れに国木田に無茶をふっかけた。今探偵社にはビー玉どころかラムネひとつない。それに僕が推理するまでもなく国木田はビー玉を所持していない。
国木田は伸ばした背筋を固まらせて、「ビー玉ですか?」と聞き返した。色鉛筆の金色みたいな彩色の瞳が、ちらちら揺れる。どうすればいいか思案しているらしい。迷った末、国木田は手帳に手を伸ばした。
笑いそうになる。僕の我儘のために、大切な手帳の1ページを破ろうとしているのか。
国木田の目がきらりと煌めいた。
ああ、それが見たかったんだ。
僕はぴょんと椅子を飛び降りて、手帳を掴んだ国木田に近寄った。「乱歩さん?」と調子のはずれた声で驚く国木田の顔を、下からじいっと眺めこむ。
そのきらきらが、僕は好きなんだ。僕がそう云うと、国木田は首を傾げた。満足したんだよと云ってやると、それはよかったですと返される。まだその凛とした顔には疑問が色濃いけれど。
愉快だ。
太宰みたいな頭のまわる奴は仕事上最適だ。余分な言葉がいらないから楽だし。だけど国木田みたいな反応の素直な奴と話すのはやっぱり楽しいのだ。訳の分からないというその顔が面白い。
瞳のきらきらも、素直な応えも、全く愉快なことである。
/ 1