国姫が転生したのに、歌えないってどういうことですか!?〜0からやり直し人生〜
ベルは大きな紙を広げて、羽ペンを走らせる。
(4年で習得しないと)
ベルは10歳だ。
歌姫専門学校の入学年齢は14歳。
ベルに残された時間は4年ということだ。
一年間で治癒魔法を手に入れて、声帯を治し、歌の練習をしなければいけない。
治癒魔法は高度な魔法だ。
とても一年で、6歳の子供が習得できる魔法じゃやない。
しかしベルは必死だった。
ベルは毎日、治癒魔法を手に入れるための特訓をした。
治癒魔法は魔力が500以上でないと扱うことができない。
まずは、魔力の量を増やさなければいけないのだ。
しかし6歳の少女の平均的な魔力量は、50にも満たないと言われている。
扱える魔法は風魔法がせいぜいだ。
ベルは生まれつき闇魔法を持っているため、同年代の少女よりも魔力が多く、100あった。
それでも五倍だ。
魔力を上げるための主な練習は、魔法を扱える体づくり、小さな魔法をなんども練習することが挙げられる。
ベルは毎日朝早くから屋敷の外を走り、体力をつけた。
身近に習得できる水魔法を手に入れて、水魔法を操って練習した。
屋敷の裏にはちょうど良い池があり、面白く操っているだけで、魔力は少しずつ上がっていった。
「おい、最近どうしたんだよ?」
水で遊ぶベルに、一人の男が声をかけた。
アイストだ。
隣の侯爵家の息子で、赤毛の髪はいつもボサボサで、服もだらしない。
こんなやつでも、家が隣ということもあり、ベルとフローラにとって、アイストは幼馴染だ。
「どうしたって?」
「ずっと水ばっか触ってるじゃないか。気晴らしに街に行かないか?」
「行かない」
ベルは水魔法をいじりながらアイストの誘いを断った。
最近は水魔法でできた立体のものを固定することができるようになった。
水以外にも、風や火も使えるようになった。
(それどころじゃないし)
魔力は上がっていると言っても、正確な量はわからない。
魔法量を計るには、魔法省にお金を払わなければいけない。
正直、めんどくさい。
「移動図書室が来ているらしいぜ」
「…行く」
ベルは、ジゼルの頃から本好きだった。
読書は、無限の可能性がある。
なれない自分になることができる。
この屋敷の本は読み切ってしまい、ちょうど暇していたところだ。
ご丁寧に、アイストはすでに馬車を用意していて、ベルはさっさと馬車に乗り込んだ。
さすが侯爵家。
椅子がふかふかだ。
「フローラは、来ないの?」
四人がけの馬車に二人だと、妙に空いている感じがする。
「今から魔法の家庭教師が来るんだってさ」
「そう」
がたんっと馬車が揺れ、目的地についたようだ。
ベルが馬車を降りると、そこは図書館の前ではなかった。
「腹減ったし、なんか食ってかね?」
「…口が悪い」
食べない、と言わなかったのは食べる、ということだな。
アイストは口が悪いと言われたことはスルーし、店を見ていく。
ベルとアイストは良さそうな店に入り、お昼を食べた。
「前から思ってたけど、お前って歳の割に所作が綺麗だよな。
なんか教師つけてもらってんの?」
「みようみまねよ。お父様は私に先生なんて呼ばないわ」
ベルの家は、完全にフローラ中心だ。
美しい容姿の上、フローラは歌姫なのだから、あ大切にされて当然。
比べてベルは闇魔法を持ち銀とは違う灰色の髪だ。
何度も人から煙たげられた。
それは家族になっても同じで、父がベルの名前を呼んだのはもう、随分昔になる。
ベルの食事のマナーはほとんどがジゼル時代だ。
皇太子の婚約者になったため、花嫁修行のような感じで授業を受けた。
フィリクスは気にしないと言ったが、ジゼルは平民の生まれで最悪のマナーをなおしたいと練習した。
「俺は、ベルも可愛いと思うけどな」
アイストはぼそっと言った。
しかし、ベルには聞こえなかったようで、
「何か言った?」
と返された。
「いや、なんでもない」
アイストは熱い頭のかぶりをふった。
「アイスト?顔が赤いわ!何か、辛いものでも食べたの!?」
ベルはアイストの顔の赤さが異常なことに騒いだが、「大丈夫、大丈夫だって!」とアイストに沈められた。
食事を終えると、二人は目的の移動図書館に行った。
移動図書館は王家が運営している国立図書館のミニバージョンだ。
馬車で運ばれた本が、広場の一角に並べられる。
貸し出しは一人十冊、一週間まで。
移動図書館が滞在している間までだ。
「うわぁ」
ジゼルの頃にも移動図書館はあったが、規模が大きくなっていた。
膨張魔法を使っているのだろう。
一見小さなテントだったが、中に入ると大きな部屋になっていた。
小さな子供から貴族まで、いろんな人がいた。
ベルは早速本を手に取り、ペラペラとめくる。
全て読みたいが、目当ての本も読みたい。
久しぶりに水以外のものを見て、ベルの気分が絶好調だった。
ベルはきっちり十冊の本を借りて、家に帰った。
部屋でランプを灯して借りた本を簡単に見てみる。
気分は浮かれていても、本の内容は魔法関連だ。
魔力量の上げ方、治癒魔法の獲得方法、治癒魔法の発動条件…。
見てみると、まだまだやるべきことはたくさんあった。
一つ、ベルの目に止まる題名の本を見つけた。
「薬草による、魔力量を上げる方法…?」
(4年で習得しないと)
ベルは10歳だ。
歌姫専門学校の入学年齢は14歳。
ベルに残された時間は4年ということだ。
一年間で治癒魔法を手に入れて、声帯を治し、歌の練習をしなければいけない。
治癒魔法は高度な魔法だ。
とても一年で、6歳の子供が習得できる魔法じゃやない。
しかしベルは必死だった。
ベルは毎日、治癒魔法を手に入れるための特訓をした。
治癒魔法は魔力が500以上でないと扱うことができない。
まずは、魔力の量を増やさなければいけないのだ。
しかし6歳の少女の平均的な魔力量は、50にも満たないと言われている。
扱える魔法は風魔法がせいぜいだ。
ベルは生まれつき闇魔法を持っているため、同年代の少女よりも魔力が多く、100あった。
それでも五倍だ。
魔力を上げるための主な練習は、魔法を扱える体づくり、小さな魔法をなんども練習することが挙げられる。
ベルは毎日朝早くから屋敷の外を走り、体力をつけた。
身近に習得できる水魔法を手に入れて、水魔法を操って練習した。
屋敷の裏にはちょうど良い池があり、面白く操っているだけで、魔力は少しずつ上がっていった。
「おい、最近どうしたんだよ?」
水で遊ぶベルに、一人の男が声をかけた。
アイストだ。
隣の侯爵家の息子で、赤毛の髪はいつもボサボサで、服もだらしない。
こんなやつでも、家が隣ということもあり、ベルとフローラにとって、アイストは幼馴染だ。
「どうしたって?」
「ずっと水ばっか触ってるじゃないか。気晴らしに街に行かないか?」
「行かない」
ベルは水魔法をいじりながらアイストの誘いを断った。
最近は水魔法でできた立体のものを固定することができるようになった。
水以外にも、風や火も使えるようになった。
(それどころじゃないし)
魔力は上がっていると言っても、正確な量はわからない。
魔法量を計るには、魔法省にお金を払わなければいけない。
正直、めんどくさい。
「移動図書室が来ているらしいぜ」
「…行く」
ベルは、ジゼルの頃から本好きだった。
読書は、無限の可能性がある。
なれない自分になることができる。
この屋敷の本は読み切ってしまい、ちょうど暇していたところだ。
ご丁寧に、アイストはすでに馬車を用意していて、ベルはさっさと馬車に乗り込んだ。
さすが侯爵家。
椅子がふかふかだ。
「フローラは、来ないの?」
四人がけの馬車に二人だと、妙に空いている感じがする。
「今から魔法の家庭教師が来るんだってさ」
「そう」
がたんっと馬車が揺れ、目的地についたようだ。
ベルが馬車を降りると、そこは図書館の前ではなかった。
「腹減ったし、なんか食ってかね?」
「…口が悪い」
食べない、と言わなかったのは食べる、ということだな。
アイストは口が悪いと言われたことはスルーし、店を見ていく。
ベルとアイストは良さそうな店に入り、お昼を食べた。
「前から思ってたけど、お前って歳の割に所作が綺麗だよな。
なんか教師つけてもらってんの?」
「みようみまねよ。お父様は私に先生なんて呼ばないわ」
ベルの家は、完全にフローラ中心だ。
美しい容姿の上、フローラは歌姫なのだから、あ大切にされて当然。
比べてベルは闇魔法を持ち銀とは違う灰色の髪だ。
何度も人から煙たげられた。
それは家族になっても同じで、父がベルの名前を呼んだのはもう、随分昔になる。
ベルの食事のマナーはほとんどがジゼル時代だ。
皇太子の婚約者になったため、花嫁修行のような感じで授業を受けた。
フィリクスは気にしないと言ったが、ジゼルは平民の生まれで最悪のマナーをなおしたいと練習した。
「俺は、ベルも可愛いと思うけどな」
アイストはぼそっと言った。
しかし、ベルには聞こえなかったようで、
「何か言った?」
と返された。
「いや、なんでもない」
アイストは熱い頭のかぶりをふった。
「アイスト?顔が赤いわ!何か、辛いものでも食べたの!?」
ベルはアイストの顔の赤さが異常なことに騒いだが、「大丈夫、大丈夫だって!」とアイストに沈められた。
食事を終えると、二人は目的の移動図書館に行った。
移動図書館は王家が運営している国立図書館のミニバージョンだ。
馬車で運ばれた本が、広場の一角に並べられる。
貸し出しは一人十冊、一週間まで。
移動図書館が滞在している間までだ。
「うわぁ」
ジゼルの頃にも移動図書館はあったが、規模が大きくなっていた。
膨張魔法を使っているのだろう。
一見小さなテントだったが、中に入ると大きな部屋になっていた。
小さな子供から貴族まで、いろんな人がいた。
ベルは早速本を手に取り、ペラペラとめくる。
全て読みたいが、目当ての本も読みたい。
久しぶりに水以外のものを見て、ベルの気分が絶好調だった。
ベルはきっちり十冊の本を借りて、家に帰った。
部屋でランプを灯して借りた本を簡単に見てみる。
気分は浮かれていても、本の内容は魔法関連だ。
魔力量の上げ方、治癒魔法の獲得方法、治癒魔法の発動条件…。
見てみると、まだまだやるべきことはたくさんあった。
一つ、ベルの目に止まる題名の本を見つけた。
「薬草による、魔力量を上げる方法…?」