[太字]五十年前[/太字]

　ジゼルリリアナは親友であった。
2人とも平民の生まれで、貴族の養子となり、専門学校に入学した。
お互いを知ったのは、入学してから。

案内された教室で、隣の席になったのだ。
『よ、よろしくね』
『うんっ』

　成績の良し悪しはあったものの、2人は専門学校を卒業し、高等学校に行った。
違いが出てきたのは、そのあたりからだ。

『ジゼルさんは本当に美しい歌声ですわ』
教師も、友達も、自然と寄ってくるジゼル。
しかしリリアナには、そう言った友達はできなかった。

ジゼルには才があった。
そう片付けてしまうのは惜しいほど、リリアナの努力はすごかった。
教師たちも認めているが、ジゼルには、かなわなかった。

　高等学校二年生にある、中間抜き打ちテスト。
筆記と実技で点数が決まる。
点数が半分以下(100点満点だが、ボーナスもあった)の場合、一年生に戻される。

ジゼルは筆記、特に実技で満点以上を出し、見事合格。
リリアナは緊張して失敗してしまい、不合格となってしまった。

『落ち込まないで、リリアナ』
『…あなたに、何が分かると言うの？』
『え？』
『あんたみたいな才能あるやつに、私の気持ちがわかるかよ！』

それ以降、ジゼルとリリアナは一緒にいなくなってしまった。