国姫が転生したのに、歌えないってどういうことですか!?〜0からやり直し人生〜
「…いいじゃん、歌姫」
「は?」
「僕もそう思うよ」
アイストの衝撃的な登場に続いた、衝撃的な発言。
それに賛同するシン。
ベルの目は完全に点になっている。
「あ、あんたち、歌姫よ?わかってる?」
「ああ」「うん」
二人の声が重なる。ベルは後ずさった。
「そうだ。神父様に、シンの足を直してもらうついでに、ベルの喉も治してもらおうぜ」
一石二鳥だ、とよろこぶ二人をよそに、べるは目をまわしていた。
(信じられない)
笑われないどころか、良いと言われるとは、予想外だった。
しかも、本物の神父様に治してもらえるのだ。
こんなに素晴らしい事があっても良いのだろうか。
希望と不安が揺れ動き、ベルは何もかんがる事ができない。
そんなことを梅雨知らず。
二人は荷物をまとめて侯爵家へ向かう準備を始めている。
「シンは俺が抱えて行こう。アポ無しでも、おやじは怒らないだろ」
「わかった。ありがとう」
「よっしゃ、行くぞ!ベル?」
「あ、うん…」
テルビア侯爵はなんともあっさり、シンの滞在を許可した。すぐに部屋を用意し、神父様を呼ぶ馬を出してくれた。
しかし、
「神父様がこられない?」
「はい。使いの者によると、神父様の奥様がとこにふせっておられるようでして」
「マジか…」
王都ただ一つの教会の神父様がくる事ができないと、だいぶ遠いところに行かなくていけなくなる。
それだと、何日もかかるだろう。
シンは元気にしているが、治療は早い方がいい。
別の教会に使者は送ったが、それがいつになるか。
ベルは少し暗い気持ちで、自分の家に帰ることになった。
「うちで晩飯食べないか?」
「ううん。帰らないと」
アイストからの夕食の誘いを断り、玄関に向かう。
すると、アイストよりも低いがとても似ている声に名前を呼ばれた。
「ガーベル」
「おじさま…!」