「兄さん！」
俺は急いで兄さんに駆け寄った。
自分の体に兄さんを抱えて、床に下ろした。

兄さんの頭から、赤い液体が。
ビリビリっと、俺は自分のズボンを破った。
そんなに清潔じゃないけど…ないよりはマシだ。
破ったズボンの破片を、兄さんの頭に巻いていく。

「兄さん、お兄ちゃんは？」
「さっきの爆発で、全員吹っ飛ばされて…兄貴は、俺を、逃して…」
じゃあ、一緒にいたってこと？
そのに九条もいるってこと？

「兄さん！そこ、どこ？」
「玄関から南の方向、3回だ。兄貴を、援護、してくれ…」
「わかった！兄さんは？」
「俺は、いい。よくなったら、すぐ、向かう」
「無理しないでね」
「わかって、る。早くいけ！」

　足音など、気にしている場合じゃない。
俺はひたすら南に向かって走った。

近づくほど、屋敷の破壊が酷くなっている。
こっちがわで、爆発したんだろう。
兄さんの話を聞く限り、兄さんとお兄ちゃんはずっと一緒だったのかな。
九条もそこにいて、俺と夕菜と別の方向にいた。
それも、結構距離がある。

　俺は、音のする部屋のドアを開けた。
大きい広間なのか、ドアも大きい。
ギイイと音を立てて、ドアは開いた。

　「初めまして、冬馬さん」

一歩足を踏み込んだ瞬間、シュッと何かが首元を掠めた。
熱くなる、首。
切られた。

小さな刃物が、目の前にある。
刃物を持っているのは、目に深い[漢字]眦[/漢字][ふりがな]まなじり[/ふりがな]を引いた若い女。

「仁さんはどうですか？あれはもう時期死ぬと思いますよ」
誰なんだ？
この女は。

「私は萌と言います。そうですね。夕菜の親友と言ったらわかるでしょうか。そして、親方様の娘です」