「夕菜が困ってるし、朝食に遅れる。
そのへんで離してくれ」
ふいに、若よりも後ろから聞こえた声は、
「僚太」
だった。

「僚太くんっ久しぶり！」
「夕菜、ご飯食べに行こ？」
「えっ」
待って、今の、翠さんの言葉完全にスルーじゃなかった？

「もう！いつになったらスルーが無くなるの？」
「…一生。さ、行こ？」
　僚太は私の手を取って、食堂の方に歩いた。
私はそっちに行かなくちゃいけなくなって、ペコっと頭だけで礼をした。

　ん？まてよ。
若の後ろからってことは、若の部屋の方…屋敷の左側だよね。
僚太っていつもそっちから現れるよね。
変な人。

　いつもだったら。ご飯のあとすぐに仕事が始まるけど、今日はお休みだ。
休みの日は人によって違って、私は毎週木曜日が休みの日。
　何しよっかな〜って思っていたら、涼太からお誘うがあった。

「今日、一緒に街の方行かない？」
「街？」
　「うん。夕菜とデートしたい」
デート？
デートにはならないと思うけど…。

「いいよ！」

　ということで、身支度をして、玄関で僚太を待った。
「おまたせ！ごめん、遅れて」
「全然！」
「じゃあ、行こっか」
「うん！」