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　「ただいまもどました〜」
「おっ夕菜おかえり〜」

学校から家に帰ると、米田さんに会う。

　米田さんは掃除組で、いつも玄関を掃除している。
イケメンで、かっこいい。
屋敷の前を通った女子高校生が、「あの人かっこいい！」ってよく言ってる。
オーラがすごいんだよねぇ。
　もちろん性格も完璧。
誰にでも分け隔てなく接してくれる。

「学校はどうだった？」
「うーんいつもと同じ」
「そっか。それが一番だよね」

私の平日の仕事は夜の洗濯物洗いと干すの。
みんながお風呂に入った後からしかできないから、この時間はゆっくりできる。

　「米くん」
玄関先で2人で話していたら、中から男の人が米田さんを呼んだ。
「組長が呼んでるよ」
「あ、はいっ」
「ホウキ、直しときますよ」
「あ、いいの？ありがとう！」

私は米田さんから箒を受け取った。
米田さんはいそいそと中に入って行った。

　「米田さん、なんで呼び出されたんでしょうね」
私は米田さんを呼びに来た男の人に話しかけた。

「あれ、知らない？手術の話だよ」
「手術？」
「ああ。女性の体を男性の体に変える手術だ」

　「じょ、性の体を…？米田さんって、女の人だったんですかぁぁぁ！！？？」
「あ、ああ。そうだよ。知らなかった？」
「はい。てっきりイケメンボーイかと…」

「イケメンね…。この屋敷、30人の5分の1くらいは、米くんみたいに体と心の性別が違う人たちだよ」
「トランスジェンダーってやつですか？」
「まあそうだけど、もういう言葉一つで表されるのは嫌だな」
「へ？」
「実は俺はゲイなんだ。でも、一言で“ゲイ”って表されると、なんだか違う人種みたいに、お前はあっちって言われてるみたいで…感覚なんだけどね」
「そうだったんだ…」

うっかり言わないように気をつけないと。
でも、そんなにいるなんてビックリ。
あんまり詳しくは知らないからなぁ…。

男の人と別れて屋敷に入ったら、屋敷がいつもとはちょっと変わって見えた。