二次創作
みんなの異聞録
私は一人、鬼殺隊の墓地を歩いていた。
二人分の供花を持って。
今日は姉さん達の墓参りだ──────。
墓は薄汚れていて、花はもう枯れていた。
柄杓に水を溜めて、ゆっくりと優しくかける。
私は、仲良く横に並ぶ、二つの墓に語りかけた。
「カナエ姉さん、しのぶ姉さん、ただいま」
当たり前だが、返事はない。
「今日はね、嬉しい報告を持ってきたのよ」
墓に花を供えながら、見つめた。墓石には『胡蝶カナエ之墓』、『胡蝶しのぶ之墓』とある。
「実は…」
そう言おうとした時、私の脳裏にカナエ姉さんの言葉がよぎる。
『いつか、好きな男の子でもできたら、カナヲだって変わるわよ』
綺麗な笑顔を顔いっぱいに刻んだカナエ姉さん。本当に優しい人だった。
(私の旦那さんになる人も、そんな優しい人なんだよ)
「私、今度炭治郎と結婚するの」
笑顔になれたから。
涙を流せるようになったから。
自分の心に素直になることができたから。
それは全部、炭治郎と姉さんのおかげなんだよ。
「姉さん達は、許してくれるよね? 結婚式、絶対見に来てよ」
そよ風が吹いて、満開に咲いた桜が花びらを散らす。
「これも全部、姉さん達の祝福なのかな」
私は、その桜の幹に寄りかかって、根元に座る。
線香の香りがふわりと鼻をつく。
その心地良さに、私は眠りに落ちた。
『カナヲ』
姉さんの声がした。
『姉さん?』
しかし、そこにいたのは…姉さんだけでなく、死んでしまった他の継子や玄弥、柱だった。
『え…』
私は大いに動揺した。
『俺たちは、無惨を倒したのだな!』
炎柱様が朗らかに叫ぶ。
『うむ、ようやく皆の仇を討てた』
岩柱様は手の数珠をジャリジャリいわせた。
『これで、みんな笑顔になれる時が来たのね』
恋柱様が頬を赤らめて空を仰ぐ。
『ああ、そうだ甘露寺。本当に良かった』
蛇柱様は恋柱様の肩に手を置いた。
『そのために命をかけたことは後悔してないよ』
霞柱様が晴れやかな目を伏せる。
[明朝体][大文字][太字]『私たちのこと、忘れないでね』[/太字][/大文字][/明朝体]
カナエ姉さんが言う。
それにしのぶ姉さんも続く。
[明朝体][大文字][太字]『私たちは、本当に存在した。鬼に理不尽に命を奪われ、仇を討つため。まだ奪われていない命を守るため。私たちは戦った』[/太字][/大文字][/明朝体]
姉さんたちの目には涙が浮かんでいた。
声も肩も震え、頬に一筋の涙を零している。
でも笑顔だった。
うん、わかってるよ。
必ずあとに繋げる。私たちのこと、姉さんのこと、鬼殺隊のこと、全部、あとに繋げるよ。
呼吸も。私たちの『物語』も。
私たちは伝説なんかじゃない。言い伝えでもなんでもない。本当にいた。
うん
うん…
わかってるよ だから…安心してね。
アゲハ蝶が私の髪飾りにとまった。
(私も蝶みたいになれるかな…)
私は夢を見ていたんだ。
姉さんたちに会える夢、なんて都合のいい夢だろうか。
私は髪飾りに触れた。
「姉さん、柱の皆さん、鬼殺隊の皆さん」
そして私は、青く澄み渡る空を見上げた。
「命を繋げてくれて、ありがとう」
その時、祝福するように、二匹のアゲハ蝶が空を舞った。
二人分の供花を持って。
今日は姉さん達の墓参りだ──────。
墓は薄汚れていて、花はもう枯れていた。
柄杓に水を溜めて、ゆっくりと優しくかける。
私は、仲良く横に並ぶ、二つの墓に語りかけた。
「カナエ姉さん、しのぶ姉さん、ただいま」
当たり前だが、返事はない。
「今日はね、嬉しい報告を持ってきたのよ」
墓に花を供えながら、見つめた。墓石には『胡蝶カナエ之墓』、『胡蝶しのぶ之墓』とある。
「実は…」
そう言おうとした時、私の脳裏にカナエ姉さんの言葉がよぎる。
『いつか、好きな男の子でもできたら、カナヲだって変わるわよ』
綺麗な笑顔を顔いっぱいに刻んだカナエ姉さん。本当に優しい人だった。
(私の旦那さんになる人も、そんな優しい人なんだよ)
「私、今度炭治郎と結婚するの」
笑顔になれたから。
涙を流せるようになったから。
自分の心に素直になることができたから。
それは全部、炭治郎と姉さんのおかげなんだよ。
「姉さん達は、許してくれるよね? 結婚式、絶対見に来てよ」
そよ風が吹いて、満開に咲いた桜が花びらを散らす。
「これも全部、姉さん達の祝福なのかな」
私は、その桜の幹に寄りかかって、根元に座る。
線香の香りがふわりと鼻をつく。
その心地良さに、私は眠りに落ちた。
『カナヲ』
姉さんの声がした。
『姉さん?』
しかし、そこにいたのは…姉さんだけでなく、死んでしまった他の継子や玄弥、柱だった。
『え…』
私は大いに動揺した。
『俺たちは、無惨を倒したのだな!』
炎柱様が朗らかに叫ぶ。
『うむ、ようやく皆の仇を討てた』
岩柱様は手の数珠をジャリジャリいわせた。
『これで、みんな笑顔になれる時が来たのね』
恋柱様が頬を赤らめて空を仰ぐ。
『ああ、そうだ甘露寺。本当に良かった』
蛇柱様は恋柱様の肩に手を置いた。
『そのために命をかけたことは後悔してないよ』
霞柱様が晴れやかな目を伏せる。
[明朝体][大文字][太字]『私たちのこと、忘れないでね』[/太字][/大文字][/明朝体]
カナエ姉さんが言う。
それにしのぶ姉さんも続く。
[明朝体][大文字][太字]『私たちは、本当に存在した。鬼に理不尽に命を奪われ、仇を討つため。まだ奪われていない命を守るため。私たちは戦った』[/太字][/大文字][/明朝体]
姉さんたちの目には涙が浮かんでいた。
声も肩も震え、頬に一筋の涙を零している。
でも笑顔だった。
うん、わかってるよ。
必ずあとに繋げる。私たちのこと、姉さんのこと、鬼殺隊のこと、全部、あとに繋げるよ。
呼吸も。私たちの『物語』も。
私たちは伝説なんかじゃない。言い伝えでもなんでもない。本当にいた。
うん
うん…
わかってるよ だから…安心してね。
アゲハ蝶が私の髪飾りにとまった。
(私も蝶みたいになれるかな…)
私は夢を見ていたんだ。
姉さんたちに会える夢、なんて都合のいい夢だろうか。
私は髪飾りに触れた。
「姉さん、柱の皆さん、鬼殺隊の皆さん」
そして私は、青く澄み渡る空を見上げた。
「命を繋げてくれて、ありがとう」
その時、祝福するように、二匹のアゲハ蝶が空を舞った。