二次創作
みんなの異聞録
あの夜、俺はたくさんの物を失い、それと同時にたくさんの人命を守り切った。俺は先の戦いで右腕を失った。慣れない左腕だけの生活は本当に辛かったが、それでも戦友や蔦子姉さん、錆兎を失った辛さよりも全然平気だった。
そして今日、新しい御館様・産屋敷輝利哉様に、御屋敷に呼ばれた。そこには柱の中でもう一人の生き残りである、風柱・不死川実弥もいた。彼は言う。
「お前も、御館様にお呼ばれして来たのかァ」
ああ、と俺は短く返す。その時襖が開き、輝利哉様とその妹君である、かなた様とくいな様が入ってきた。
「来てくれてありがとう」
やはり自分たちの代の御館様の御子息は父に似て、ふわふわとした声だった。柔らかな言葉に心が軽くなる。
「今日が最後の柱合会議だ」
そう言って御館様は俺たちの名を呼んだ。
「実弥、義勇。柱は二人だけになってしまったね、他の子供たちも大勢いなくなってしまった。けれど私たちは、鬼を滅ぼすことができた」
そして、続ける。清々しく晴れやかな表情で。
[明朝体][大文字][太字]「鬼殺隊は今日で解散する」[/太字][/大文字][/明朝体]
俺たちは言われるがまま、「御意」と一言のみ。それでも俺は晴がましい気持ちだった。きっと不死川もそうだろう。
その後、御館様の後ろに控えていたかなた様とくいな様が口を開いた。
「長きに渡り、身命を賭して」
「世の為人の為に戦って戴き、尽して戴いたこと」
三人は、丁寧に手をつき、深々と頭を下げた。
[明朝体][大文字][太字]「産屋敷家一同、心より感謝申し上げます」[/太字][/大文字][/明朝体]
それを見て、俺たちは声をいっせいにあげた。
「顔を上げてくださいませ!!」
「礼など必要ございません」
その後、俺たちからの感謝の意を思い思いに述べ、そして不死川と俺は笑みをこぼしあい、その場を辞した。
「不死川」
俺は屋敷を出る時に彼を呼び止めた。
彼はいつも通りの調子で、ややイラつきがちな目で俺を睨めつけた。
「なんだァ冨岡ァ」
「遅れてしまったが、受け取って欲しい」
「アァ?」
俺が懐から取り出したのは、紙に包まれた、こぢんまりとしたもの───『おはぎ』。おはぎは不死川の大好物であると、柱稽古の時、炭治郎から聞いた。炭治郎に「おはぎを渡したら仲良くなれるかもしれない」という話をすると、彼は「いいですね!」と肯定してくれたのを良く覚えている。
「馬鹿にしてんのかァ?」
「戦勝祝いだと思って受け取ってくれ」
そう言うと不死川は、一瞬驚いたような感嘆したような表情をして、それから、
「…ありがたく頂くぜェ」
と言って、俺に背を向けた。
その時不死川がどんな表情をしていたかは、俺は知らない。
そして今日、新しい御館様・産屋敷輝利哉様に、御屋敷に呼ばれた。そこには柱の中でもう一人の生き残りである、風柱・不死川実弥もいた。彼は言う。
「お前も、御館様にお呼ばれして来たのかァ」
ああ、と俺は短く返す。その時襖が開き、輝利哉様とその妹君である、かなた様とくいな様が入ってきた。
「来てくれてありがとう」
やはり自分たちの代の御館様の御子息は父に似て、ふわふわとした声だった。柔らかな言葉に心が軽くなる。
「今日が最後の柱合会議だ」
そう言って御館様は俺たちの名を呼んだ。
「実弥、義勇。柱は二人だけになってしまったね、他の子供たちも大勢いなくなってしまった。けれど私たちは、鬼を滅ぼすことができた」
そして、続ける。清々しく晴れやかな表情で。
[明朝体][大文字][太字]「鬼殺隊は今日で解散する」[/太字][/大文字][/明朝体]
俺たちは言われるがまま、「御意」と一言のみ。それでも俺は晴がましい気持ちだった。きっと不死川もそうだろう。
その後、御館様の後ろに控えていたかなた様とくいな様が口を開いた。
「長きに渡り、身命を賭して」
「世の為人の為に戦って戴き、尽して戴いたこと」
三人は、丁寧に手をつき、深々と頭を下げた。
[明朝体][大文字][太字]「産屋敷家一同、心より感謝申し上げます」[/太字][/大文字][/明朝体]
それを見て、俺たちは声をいっせいにあげた。
「顔を上げてくださいませ!!」
「礼など必要ございません」
その後、俺たちからの感謝の意を思い思いに述べ、そして不死川と俺は笑みをこぼしあい、その場を辞した。
「不死川」
俺は屋敷を出る時に彼を呼び止めた。
彼はいつも通りの調子で、ややイラつきがちな目で俺を睨めつけた。
「なんだァ冨岡ァ」
「遅れてしまったが、受け取って欲しい」
「アァ?」
俺が懐から取り出したのは、紙に包まれた、こぢんまりとしたもの───『おはぎ』。おはぎは不死川の大好物であると、柱稽古の時、炭治郎から聞いた。炭治郎に「おはぎを渡したら仲良くなれるかもしれない」という話をすると、彼は「いいですね!」と肯定してくれたのを良く覚えている。
「馬鹿にしてんのかァ?」
「戦勝祝いだと思って受け取ってくれ」
そう言うと不死川は、一瞬驚いたような感嘆したような表情をして、それから、
「…ありがたく頂くぜェ」
と言って、俺に背を向けた。
その時不死川がどんな表情をしていたかは、俺は知らない。