「それから名前のことについて、だね。名前は、その宿している都道府県にある市町村から、取っているんだ。だから、僕の場合だと白川と、郡上という市町村から取っているんだ」

「ふーん、なるほどね」

と言うことは、三島大和も三島と大和というところから取っていることになるのか。大喜は納得して頷く。だが、疑問が1つ。

「でも、名字は変わらなかったよ」

郡上は、あ～、と言うと笑って答えた。

「そう、僕も名字は変わっていない。これはみんな共通だ」

「なるほど」

「それはそうと一度教室に戻らないかい？」

そう言われて大喜はやっとここが手洗い所の前だと言うことに気がついた。

「そうしよう」

手洗い所は教室から少し離れているので、2人は並んで廊下を歩き出す。教室と同じようにのどかな風が吹いていて、今までの疲れは一気に吹き飛ぶ。教室に入ると、知らない人が男の子が2人いた。2人とも同じ空間には居るものの、あまり接点がないようでお互いのことを無視しあっている。大喜はちょいと郡上を指で突いてこそっと聞いた。

「誰、あの人たち」

彼はニコッと笑い、教室にいる2人に呼びかける。

「紹介するよ。2人とも、新入りだよ」

2人は一斉に大喜のことを見て、興味がそそられたらしく近くによってきた。近くによってきて分かったことだが、2人はかなりの身長差だ。1人は大喜よりも少し背が高いくらいで、もう1人はこの3人の中で一番背が低い。

「ほら、自己紹介して」

郡上に促されるまま、自己紹介を始める。もう僕というのにも、新しい名前にも慣れた。

「はじめまして。僕の名前は三島大和です。よろしくお願いします」

「はじめまして。私の名前は[漢字]大蔵　白鷹[/漢字][ふりがな]おおくら　しらたか[/ふりがな]だ。よろしく」

身長の高い人はいかにも堅物って感じの人だ。

「僕の名前は[漢字]忍野　北杜[/漢字][ふりがな]おしの　ほくと[/ふりがな]！よろしく！」

北杜が手を差し伸べてきたので、大喜が握手をすると元気に握手を仕返した。愛想の良い人で精神年齢が低そうだ、と大喜は思う。