ヒーロー部!!~僕らの冒険物語~
カインとタクの戦いが始まって、どれくらい経っただろうか。
私たちは、一言も喋ることなく、ただじっと二人を見ていた。
タクが使っているナイフはカインに渡されたものだ。
彼曰く、二人のナイフは同じものだということだが、私はどうもそれが信じられない。
タクは必死に自分を庇い続けている。
格闘技が趣味だという部長に日々しごかれていたようだが、だからといっていきなりナイフを持たされて戦えるわけがない。
逆にどうしてここまで動けるのかが不思議なくらいだ。
なぜ彼がこんなにも傷つかないといけないのか。
ふつふつと怒りがわいてきて、でもふと我に帰る。
待って。どうしてここに来ることになったんだっけ?
ユメミさんが来て、助けを求められて、依頼を受けて...
そうだ。私が勝手に引き受けたんだ。
一度引き受けた手前、断ることもできずに、皆も着いてきてくれたんだった...。
え?じゃあ.........
私のせいじゃん.........
その事に気づいて、どうしようもない絶望感を感じた。
だんだん呼吸が荒くなっていくのが分かる。
嫌だ、待って、私のせいで............!
思わずしゃがみこみそうになったとき、背中に暖かい手が触れた。
え、と思って見上げると、モモがいた。
「どうして...」
「ミオ、きっと大丈夫よ」
何が大丈夫なのか全く分からないけれど、不思議と心が落ち着いてくる。
そっか、そうだよね...
「モモ、ありが...」
私の言葉は途中で途切れた。
信じられないものを見てしまったから。
「ぐはッ」
タクが斬られた。
肩から腹にかけて、痛々しい斜めの傷ができている。
傷口からは、どばどばと血が流れ出ている。
耐えきれずに膝をついたタクの顔は青白かった。
泣きたくなるが、それは許されない。
一番泣きたいのはタクなのに、彼は涙を流そうとしないから。
タク、タク。
お願い、生きて......!
カインはゆっくりとタクに近づいた。
しげしげとタクを眺めた後、おもむろに口を開く。
「......驚いた。まだやる気か」
えっ?
私もまじまじとタクを見る。
心なしか、タクの周りでゆらゆらと何かがゆらめいている気がする。
「えっ...!」
さっきは声にならなかった心の声が、今度は声になった。
だって信じられないんだもの。
あんなに大きかった傷が、塞がりはじめている......!
「治癒だったのね...」
ぽつりとユメミさんが言った。
私は思わず尋ねる。
「どういうことですか?」
「彼の属性よ。戦闘スーツを身に付けたときから、能力持ちだとは分かっていたけれど...」
ユメミさんはまっすぐにタクを見ていて、目が合うことはない。
「稀に『能力』を持つ者が現れるの。効果は様々なんだけど、大抵は大きなショックを受けたときに発動するわ」
なるほど。つまりタクは、治癒の能力持ちだったんだ。
だからといって、不安が消えることはない。
「タク......」
ごくりと、誰かが唾を飲み込む音が聞こえた。
第2ラウンドだ。
私たちは、一言も喋ることなく、ただじっと二人を見ていた。
タクが使っているナイフはカインに渡されたものだ。
彼曰く、二人のナイフは同じものだということだが、私はどうもそれが信じられない。
タクは必死に自分を庇い続けている。
格闘技が趣味だという部長に日々しごかれていたようだが、だからといっていきなりナイフを持たされて戦えるわけがない。
逆にどうしてここまで動けるのかが不思議なくらいだ。
なぜ彼がこんなにも傷つかないといけないのか。
ふつふつと怒りがわいてきて、でもふと我に帰る。
待って。どうしてここに来ることになったんだっけ?
ユメミさんが来て、助けを求められて、依頼を受けて...
そうだ。私が勝手に引き受けたんだ。
一度引き受けた手前、断ることもできずに、皆も着いてきてくれたんだった...。
え?じゃあ.........
私のせいじゃん.........
その事に気づいて、どうしようもない絶望感を感じた。
だんだん呼吸が荒くなっていくのが分かる。
嫌だ、待って、私のせいで............!
思わずしゃがみこみそうになったとき、背中に暖かい手が触れた。
え、と思って見上げると、モモがいた。
「どうして...」
「ミオ、きっと大丈夫よ」
何が大丈夫なのか全く分からないけれど、不思議と心が落ち着いてくる。
そっか、そうだよね...
「モモ、ありが...」
私の言葉は途中で途切れた。
信じられないものを見てしまったから。
「ぐはッ」
タクが斬られた。
肩から腹にかけて、痛々しい斜めの傷ができている。
傷口からは、どばどばと血が流れ出ている。
耐えきれずに膝をついたタクの顔は青白かった。
泣きたくなるが、それは許されない。
一番泣きたいのはタクなのに、彼は涙を流そうとしないから。
タク、タク。
お願い、生きて......!
カインはゆっくりとタクに近づいた。
しげしげとタクを眺めた後、おもむろに口を開く。
「......驚いた。まだやる気か」
えっ?
私もまじまじとタクを見る。
心なしか、タクの周りでゆらゆらと何かがゆらめいている気がする。
「えっ...!」
さっきは声にならなかった心の声が、今度は声になった。
だって信じられないんだもの。
あんなに大きかった傷が、塞がりはじめている......!
「治癒だったのね...」
ぽつりとユメミさんが言った。
私は思わず尋ねる。
「どういうことですか?」
「彼の属性よ。戦闘スーツを身に付けたときから、能力持ちだとは分かっていたけれど...」
ユメミさんはまっすぐにタクを見ていて、目が合うことはない。
「稀に『能力』を持つ者が現れるの。効果は様々なんだけど、大抵は大きなショックを受けたときに発動するわ」
なるほど。つまりタクは、治癒の能力持ちだったんだ。
だからといって、不安が消えることはない。
「タク......」
ごくりと、誰かが唾を飲み込む音が聞こえた。
第2ラウンドだ。