ヒーロー部!!~僕らの冒険物語~
「...ふう」
鞄を置いて、一息つく。
少し埃っぽい部屋には、私が一番乗りで来たらしく、誰もいない。
中学2年。
一昨日入部したばかりの『ヒーロー部』。
『ヒーロー部』は、困っている依頼人を助ける部。
といっても、一昨日できたばかりだから、依頼人はまだ来たことがない。
それにしても、部の名前が『ヒーロー部』はちょっとダサいと思う。
でも部長がこれと言って譲らないから仕方ない。
「ミオっ!お客さん、お客さんが来たよ!」
「えっ!」
扉を開けて飛び込んで来たのは、同じクラスのユイナだ。
私はびっくりして肩を跳ねさせた。
「と、とりあえず案内してくれる?私、お菓子の用意するから」
「分かった!」
ユイナが走り去ったのを確認して、私は棚を漁る。
何とかジャムクッキーを引っ張り出して、紅茶を...と思ったが、紅茶はないので麦茶だ。
申し訳程度にソファのゴミを払ったところで、もう一度扉が開く音がした。
ユイナの後ろから部屋に入ってきたのは、薄緑の髪の女の人だった。
綺麗なストレートの髪は、後ろで編み込みをしてある。
3人でソファに腰掛けたところで、女の人が口を開いた。
「私は、ノーヴァ国という、地球ではない場所から来ました」
ん??
今、さらっととんでもないこと言いました?
まあ、とりあえず話を聞こう。
「私の妹、ユメカはノーヴァ国の姫なのですが、何者かに拐われたのです。ノーヴァ国は、ユメカがいなくなった途端に活気をなくしました」
ほうほう。ん?まさか...
この話の流れは...
「お願いします!どうか、どうかユメカを、ノーヴァ国を救ってください!」
うぐっ。
断れない...。
これは私たちが勝手に決めてはいけないことだし、ましてや異世界なんて何が起こるか分からないのだ。
だけど、だけど...
「...分かりました。お受け、します」
「ミオ!!」
ユイナの焦った声が聞こえる。
ごめん、ユイナ。
私に何ができるのか、分からないけど...
目の前に助けられる人がいるなら、助けたい。
ただの偽善かもしれない。それでも、私はそう思う。
ユイナは仕方ないな、と笑った。
「分かったよ、ミオ」
「ありがとう...」
「ありがとうございます!!」
女の人は、ほっとしたような顔をした。
「遅れましたが、私はユメミといいます」
「ユメミさん、私たちが力になります」
「ありがとうございます...!」
ユメミさんを見送って、私たちは顔を見合わせた。
どうやら、幻でも夢でもないらしい。
そこへ、人がやって来た。
「やっほー!だれかいるかぁ?」
「部長!...と、タク!」
「こんにちは」
『ヒーロー部』部長のヨシと、1年のタクだ。
タクはヨシのことを『師匠』と呼んで慕っている。
私とユイナは、先程の話をした。
とてもではないが、顔を上げることはできなくて、ずっとうつむいていた。
ヨシから声をかけられる。
「お前ら」
怒られる...そう思って目を瞑ったが、想像とは全く違う言葉が放たれた。
「よくやった」
慌てて顔を上げ、ヨシの顔を見る。
その目は私たちをじっと見て、少し微笑んだ。
ああ、そうだ。
この人はこういう人だった。
だから、ついていきたくなるんだろうな。
泣きそうになったのを堪えて、また少しうつむいた。
ヨシがまた口を開いて、明るい声で言った。
「本当によくやったよー!美人だったんだろ?初めての依頼人が美人なんて最高じゃん!ラッキー!お前ら、グッジョブ!」
一気に場の空気が冷えた。
ユイナはぷるぷると肩をふるわせている。
あーあ、そうだった。
この人はこういう人だった。
ユイナとヨシは追いかけっこを始めたらしく、廊下からどたばたという音とユイナの声が聞こえてくる。
平和だなぁ。
鞄を置いて、一息つく。
少し埃っぽい部屋には、私が一番乗りで来たらしく、誰もいない。
中学2年。
一昨日入部したばかりの『ヒーロー部』。
『ヒーロー部』は、困っている依頼人を助ける部。
といっても、一昨日できたばかりだから、依頼人はまだ来たことがない。
それにしても、部の名前が『ヒーロー部』はちょっとダサいと思う。
でも部長がこれと言って譲らないから仕方ない。
「ミオっ!お客さん、お客さんが来たよ!」
「えっ!」
扉を開けて飛び込んで来たのは、同じクラスのユイナだ。
私はびっくりして肩を跳ねさせた。
「と、とりあえず案内してくれる?私、お菓子の用意するから」
「分かった!」
ユイナが走り去ったのを確認して、私は棚を漁る。
何とかジャムクッキーを引っ張り出して、紅茶を...と思ったが、紅茶はないので麦茶だ。
申し訳程度にソファのゴミを払ったところで、もう一度扉が開く音がした。
ユイナの後ろから部屋に入ってきたのは、薄緑の髪の女の人だった。
綺麗なストレートの髪は、後ろで編み込みをしてある。
3人でソファに腰掛けたところで、女の人が口を開いた。
「私は、ノーヴァ国という、地球ではない場所から来ました」
ん??
今、さらっととんでもないこと言いました?
まあ、とりあえず話を聞こう。
「私の妹、ユメカはノーヴァ国の姫なのですが、何者かに拐われたのです。ノーヴァ国は、ユメカがいなくなった途端に活気をなくしました」
ほうほう。ん?まさか...
この話の流れは...
「お願いします!どうか、どうかユメカを、ノーヴァ国を救ってください!」
うぐっ。
断れない...。
これは私たちが勝手に決めてはいけないことだし、ましてや異世界なんて何が起こるか分からないのだ。
だけど、だけど...
「...分かりました。お受け、します」
「ミオ!!」
ユイナの焦った声が聞こえる。
ごめん、ユイナ。
私に何ができるのか、分からないけど...
目の前に助けられる人がいるなら、助けたい。
ただの偽善かもしれない。それでも、私はそう思う。
ユイナは仕方ないな、と笑った。
「分かったよ、ミオ」
「ありがとう...」
「ありがとうございます!!」
女の人は、ほっとしたような顔をした。
「遅れましたが、私はユメミといいます」
「ユメミさん、私たちが力になります」
「ありがとうございます...!」
ユメミさんを見送って、私たちは顔を見合わせた。
どうやら、幻でも夢でもないらしい。
そこへ、人がやって来た。
「やっほー!だれかいるかぁ?」
「部長!...と、タク!」
「こんにちは」
『ヒーロー部』部長のヨシと、1年のタクだ。
タクはヨシのことを『師匠』と呼んで慕っている。
私とユイナは、先程の話をした。
とてもではないが、顔を上げることはできなくて、ずっとうつむいていた。
ヨシから声をかけられる。
「お前ら」
怒られる...そう思って目を瞑ったが、想像とは全く違う言葉が放たれた。
「よくやった」
慌てて顔を上げ、ヨシの顔を見る。
その目は私たちをじっと見て、少し微笑んだ。
ああ、そうだ。
この人はこういう人だった。
だから、ついていきたくなるんだろうな。
泣きそうになったのを堪えて、また少しうつむいた。
ヨシがまた口を開いて、明るい声で言った。
「本当によくやったよー!美人だったんだろ?初めての依頼人が美人なんて最高じゃん!ラッキー!お前ら、グッジョブ!」
一気に場の空気が冷えた。
ユイナはぷるぷると肩をふるわせている。
あーあ、そうだった。
この人はこういう人だった。
ユイナとヨシは追いかけっこを始めたらしく、廊下からどたばたという音とユイナの声が聞こえてくる。
平和だなぁ。