クセの強い人外達は今日も学生寮に入り浸るようです。
「[漢字] 痛 [/漢字][ふりがな]い゛っ゛っ゛っ゛て゛[/ふりがな]!?!?」
たかがドアにぶつかっただけとは思えない、あるいは交通事故の被害者か何かのような、そんなクソヤバい声が大学の構内に響く。
この声を上げているのは誰かって?
そう、○○こと、星海 ●●です。
結論から言うとさっきの破壊音の原因は、○○が後ろに下がった絶妙なタイミングでドアが開いたコト。
なお、「ごつん」は○○の頭にドアが当たった音、「どしゃん」はその反動で腕が書棚に当たって資料が落ちた音、「ばき」はその資料が古ぼけた足置きを壊した音だ。いや、大破壊だなホント。
「えっと…すみません、大丈夫…ですか……? …というか、黒髪って事は会長さ…いや、会長さんじゃない…ですね。」
そしてドアを開けたのは、なんと○○の同居人…星月さんであった。
え、まさかココの会員なのかこの人。正気か?何を好き好んでこんなモン研究しようとしてんだ??さては馬鹿か???
「おやおやぁ、今朝の●●さんじゃないですか。どうしたんです?そんなトコで座り込んで。」
え、しかもなんか今日の朝聞いた声が聞こえる気が…って、やっぱりそうじゃねぇか!!!
さらに驚くべきコトに、星月さんの後ろには今朝電車であった銀髪イケメン…もとい、楼さんが立っていた。
いや、一体全体どういう偶然だよ。
とはいえ、そんな心のツッコミを聞き取って代弁してくれる人なんて当然いるハズもなく。
かと言って星月さんとバッチリ目が合ってしまっているので、無言で片付けを開始するワケにもいかず。
なんて言うか、うん。
ぶっちゃけ、かなり気まずいんだが。
「えっと…うん、とりあえず。流歌くんも視信くんも●●ちゃんも、座っちゃってー?」
うっかり停止した○○達を再起動したのは火威さんだ。
来客用のソファー(らしきモノ)の上に載っていた資料を雑にどけて、全員に示す。
「あー…まぁ、それもそうですね。ありがとうございます。」
「はいはぁい。あ、僕も片付け手伝いましょうか?」
「楼。大人しゅう座っとき。余計なコトしはったら許さへんから。」
なんか…やっぱ、楼さんに対してだけは月ノ瀬さんが怖いんだが。
月ノ瀬さんに合わせて、存由夢先輩も「そうそう。ボクが片付けておくよ、安心して!」なんて言っているが…申し訳なさすぎる。さすがに自分でやるぞ。
「あ、いや…原因は○○ですし、存由夢先輩にやってもらうのも申し訳ないので…」
「んじゃ、一緒にやっちゃおっか。」
お礼を言いつつ、資料を手に持ちながら考える。月ノ瀬さんと楼さんってどういう関係なんだ?と。
うん、ちょっとよく分からない。だが楼さんは今、月ノ瀬さんに(ほぼ強制的に)座らせられている。そこから察するに、頭が上がらない…いやむしろ、逆らえない感じ…なのか?
というか、こうも美形ばかり並んでいると少し怖くなるな…そう思ってため息を吐き、床の資料を棚に戻す。
表題は『稲荷神社』に『廃工場』に『プラネタリウム』、他にも色々ある。まぁ、『路地裏』とかは大雑把すぎないか?とも思うが…そういえば全部、この文夏市に存在する場所だ。
…うん、詳しく考えるのはよそう。で、近づくのもやめとけばいいだろ。多分。
だがそんな心境を知ってか知らずか、湯巡さんが話しかけて来た。
「あぁそうだ、●●さんと言ったかな?」
何を言われるのかと思い、少しだけ身構える。しかし、出て来たのは意外な言葉だった。
「怪異の類いが嫌いだと言うのなら、直接の調査はしなくともいい。だが、研究会には入ってもらえないか?」
「…まぁ、そういうコト…なら。」
まぁ…ココまで言われておいて「知らん、帰る」ってのも色々と問題があるし……
いざ人外に出会した時に、助けてもらえるかもしれないし………
うん、納得したコトにするしかないのか……
「おやおや。お取り込み中でした?出直しましょうか。」
「あんたが居ようが居まいが変わらん。それに…どうせ、逃げ込みに来ただけやろ?」
「あっはは、バレちまいましたかー。いやぁ、ちょっと修羅場っちまったんですよねぇ。」
そう言って、からからと笑う楼さん。
うーん、ノンキに茶ぁしばきながら言う言葉じゃないんだが、ソレ。
そう思ったのも束の間、廊下の辺りがザワザワとし始めた。
あ、そろそろ三限目か。色々濃すぎて忘れてた。幸い○○は空きコマだけど…
「おっと…そろそろ時間か。失礼するよ。」
「待って待って、私も行きまーす!」
「あ、ボクもあったんだった!ごめんね!」
「●●、あんたに鍵預けとくさかい…戸締りはちゃんとせぇよ。」
「それじゃ…僕も、失礼しますね。」
そう口々に言い、湯巡さんたちは出て行ってしまった。……いや、入会した以上は会長さんたちと呼ぶべきか?
まぁ何はともあれ、鍵を○○に渡して授業に行ったのは確かだ。
って、なんかこの鍵、数字が書かれたメモがついてるんだが。
えっと…あ、下に走り書きが。『ボクらの番号!大事に扱ってね!』って、存由夢先輩の字で書かれてる。
てことはコレ、研究会メンバーの番号か。
よく見れば星月さんの番号も書いてあるし、やっぱあの人も会員みたいだ。
とは言え二人だけで放置されてもな…と思い、ワンチャンの希望に賭けて斜め前に座る楼さんを見てみるが、ヘラヘラと笑ったままで席を立つ気配は無い。
まぁそりゃそうだよな!学科同じだしな!!
なんて思っていると、一瞬だけ楼さんの表情が抜け落ちたように見えた。
とは言え次の瞬間には今朝と同じダメそうな雰囲気……うん、きっと見間違いだな。
「やれやれ、やっと行った…」
あれ、楼さん何か言ったか?
まぁいいや、ひとまずカフェにでも行ってのんびりするか。
荷物を纏めて席を立つ。鍵は渡されたが…楼さんに出てもらうのもなんだか申し訳ないし……
よし、テイクアウトしてこっちで食べるか。
その間、ちょっと留守番してもらうぐらいなら平気だろ。
「あれ?ちょいちょい●●さん?ドコ行くんです?」
「え、まぁ…ちょっと、カフェにでも行こうと思います。予習とかも…しておきたいですし。」
そう答えると、楼さんはにんまりと笑った。
「んじゃ、オススメの場所案内しますよ。こー見えて僕、この近くのカフェでバイトしてるんすわぁ。」
…え?
[中央寄せ][大文字]⚠︎ ⚠︎ ⚠︎[/大文字][/中央寄せ]
「お、来た来たぁ。ココのパンケーキ、ホント美味いんですよねぇ……あ、良けりゃ一口要ります?」
そう言って、切り分けたパンケーキ(ベリーソース付き)をこちらに差し出す楼さん。
「いや、大丈夫です……○○もパンケーキですし……」
ど う し て こ う な っ た 。
見ての通り○○こと星海●●は、ただいま切実に困惑中だ。
いや、本当にどうしようかコレ。
…てかこのパンケーキ、マジで美味いな。
チョコソースも結構濃いめの味なのにクドくないし…パンケーキ本体も当然のようにフワッフワのトロットロ。
うん、てかコレ、絶対にヤバいヤツだ。
主にカロリーとか腹回り的に。
ちなみに値段は全然安い。なんならちょっと異常なぐらい安い。
「ああそうそう、ココのティーラテも美味いんですよねぇ。良かったら一杯どーです?」
「あ、じゃあ…頼んでみます。」
前言撤回、ほうじ茶ラテ飲みたいし頼む。
ってうわぁ……こっちのパフェも美味そうなんだが………
ヤッベ、決められる気がしない……
「まぁまぁ、最初ですし? ひとまず、好きなモン頼んでみても良いと思いますけどねぇ。」
悪魔のような囁きに(ついうっかり)屈して、○○は両方頼む事にしてしまった。
その後数分もせず、頼んだパフェとほうじ茶ラテが届けられる。
不思議に思って今更ながらによく見てみると、店内に○○ら以外の客はいない。
そりゃ早いわな、他の注文無いんだし。
なんて思いつつ、目の前のパフェに手を付ける。
「って、美味し……」
「そうでしょう?初めて食った時、「コレだ!」ってもうビビッと来まして。しかもドリンクも美味いんですよねぇ、ココ。」
…うわホントだ、美味しい……
ひょっとすると、ココまで美味しいほうじ茶ラテって今まで飲んだことないかもしれないな。
そう思った矢先。突然、目の前がふわりと暗くなった。
違う、瞼が落ちてるのか。
だがそう気づいてもすでに間に合わず、あっという間に意識が沈んでいく。
足掻けば足掻くほど眠くなり、まるで流砂みたいだな…と、少しだけ冷静さを残した頭で考える。
って違う、そんなコト…考えてる……ヒマ……なん……て………
明滅する視界の中、楼さんが何故か[漢字]嗤っている[/漢字][ふりがな]・・・・・[/ふりがな]コトを脳が認識するよりも前に、○○は完全に寝入ってしまった。
たかがドアにぶつかっただけとは思えない、あるいは交通事故の被害者か何かのような、そんなクソヤバい声が大学の構内に響く。
この声を上げているのは誰かって?
そう、○○こと、星海 ●●です。
結論から言うとさっきの破壊音の原因は、○○が後ろに下がった絶妙なタイミングでドアが開いたコト。
なお、「ごつん」は○○の頭にドアが当たった音、「どしゃん」はその反動で腕が書棚に当たって資料が落ちた音、「ばき」はその資料が古ぼけた足置きを壊した音だ。いや、大破壊だなホント。
「えっと…すみません、大丈夫…ですか……? …というか、黒髪って事は会長さ…いや、会長さんじゃない…ですね。」
そしてドアを開けたのは、なんと○○の同居人…星月さんであった。
え、まさかココの会員なのかこの人。正気か?何を好き好んでこんなモン研究しようとしてんだ??さては馬鹿か???
「おやおやぁ、今朝の●●さんじゃないですか。どうしたんです?そんなトコで座り込んで。」
え、しかもなんか今日の朝聞いた声が聞こえる気が…って、やっぱりそうじゃねぇか!!!
さらに驚くべきコトに、星月さんの後ろには今朝電車であった銀髪イケメン…もとい、楼さんが立っていた。
いや、一体全体どういう偶然だよ。
とはいえ、そんな心のツッコミを聞き取って代弁してくれる人なんて当然いるハズもなく。
かと言って星月さんとバッチリ目が合ってしまっているので、無言で片付けを開始するワケにもいかず。
なんて言うか、うん。
ぶっちゃけ、かなり気まずいんだが。
「えっと…うん、とりあえず。流歌くんも視信くんも●●ちゃんも、座っちゃってー?」
うっかり停止した○○達を再起動したのは火威さんだ。
来客用のソファー(らしきモノ)の上に載っていた資料を雑にどけて、全員に示す。
「あー…まぁ、それもそうですね。ありがとうございます。」
「はいはぁい。あ、僕も片付け手伝いましょうか?」
「楼。大人しゅう座っとき。余計なコトしはったら許さへんから。」
なんか…やっぱ、楼さんに対してだけは月ノ瀬さんが怖いんだが。
月ノ瀬さんに合わせて、存由夢先輩も「そうそう。ボクが片付けておくよ、安心して!」なんて言っているが…申し訳なさすぎる。さすがに自分でやるぞ。
「あ、いや…原因は○○ですし、存由夢先輩にやってもらうのも申し訳ないので…」
「んじゃ、一緒にやっちゃおっか。」
お礼を言いつつ、資料を手に持ちながら考える。月ノ瀬さんと楼さんってどういう関係なんだ?と。
うん、ちょっとよく分からない。だが楼さんは今、月ノ瀬さんに(ほぼ強制的に)座らせられている。そこから察するに、頭が上がらない…いやむしろ、逆らえない感じ…なのか?
というか、こうも美形ばかり並んでいると少し怖くなるな…そう思ってため息を吐き、床の資料を棚に戻す。
表題は『稲荷神社』に『廃工場』に『プラネタリウム』、他にも色々ある。まぁ、『路地裏』とかは大雑把すぎないか?とも思うが…そういえば全部、この文夏市に存在する場所だ。
…うん、詳しく考えるのはよそう。で、近づくのもやめとけばいいだろ。多分。
だがそんな心境を知ってか知らずか、湯巡さんが話しかけて来た。
「あぁそうだ、●●さんと言ったかな?」
何を言われるのかと思い、少しだけ身構える。しかし、出て来たのは意外な言葉だった。
「怪異の類いが嫌いだと言うのなら、直接の調査はしなくともいい。だが、研究会には入ってもらえないか?」
「…まぁ、そういうコト…なら。」
まぁ…ココまで言われておいて「知らん、帰る」ってのも色々と問題があるし……
いざ人外に出会した時に、助けてもらえるかもしれないし………
うん、納得したコトにするしかないのか……
「おやおや。お取り込み中でした?出直しましょうか。」
「あんたが居ようが居まいが変わらん。それに…どうせ、逃げ込みに来ただけやろ?」
「あっはは、バレちまいましたかー。いやぁ、ちょっと修羅場っちまったんですよねぇ。」
そう言って、からからと笑う楼さん。
うーん、ノンキに茶ぁしばきながら言う言葉じゃないんだが、ソレ。
そう思ったのも束の間、廊下の辺りがザワザワとし始めた。
あ、そろそろ三限目か。色々濃すぎて忘れてた。幸い○○は空きコマだけど…
「おっと…そろそろ時間か。失礼するよ。」
「待って待って、私も行きまーす!」
「あ、ボクもあったんだった!ごめんね!」
「●●、あんたに鍵預けとくさかい…戸締りはちゃんとせぇよ。」
「それじゃ…僕も、失礼しますね。」
そう口々に言い、湯巡さんたちは出て行ってしまった。……いや、入会した以上は会長さんたちと呼ぶべきか?
まぁ何はともあれ、鍵を○○に渡して授業に行ったのは確かだ。
って、なんかこの鍵、数字が書かれたメモがついてるんだが。
えっと…あ、下に走り書きが。『ボクらの番号!大事に扱ってね!』って、存由夢先輩の字で書かれてる。
てことはコレ、研究会メンバーの番号か。
よく見れば星月さんの番号も書いてあるし、やっぱあの人も会員みたいだ。
とは言え二人だけで放置されてもな…と思い、ワンチャンの希望に賭けて斜め前に座る楼さんを見てみるが、ヘラヘラと笑ったままで席を立つ気配は無い。
まぁそりゃそうだよな!学科同じだしな!!
なんて思っていると、一瞬だけ楼さんの表情が抜け落ちたように見えた。
とは言え次の瞬間には今朝と同じダメそうな雰囲気……うん、きっと見間違いだな。
「やれやれ、やっと行った…」
あれ、楼さん何か言ったか?
まぁいいや、ひとまずカフェにでも行ってのんびりするか。
荷物を纏めて席を立つ。鍵は渡されたが…楼さんに出てもらうのもなんだか申し訳ないし……
よし、テイクアウトしてこっちで食べるか。
その間、ちょっと留守番してもらうぐらいなら平気だろ。
「あれ?ちょいちょい●●さん?ドコ行くんです?」
「え、まぁ…ちょっと、カフェにでも行こうと思います。予習とかも…しておきたいですし。」
そう答えると、楼さんはにんまりと笑った。
「んじゃ、オススメの場所案内しますよ。こー見えて僕、この近くのカフェでバイトしてるんすわぁ。」
…え?
[中央寄せ][大文字]⚠︎ ⚠︎ ⚠︎[/大文字][/中央寄せ]
「お、来た来たぁ。ココのパンケーキ、ホント美味いんですよねぇ……あ、良けりゃ一口要ります?」
そう言って、切り分けたパンケーキ(ベリーソース付き)をこちらに差し出す楼さん。
「いや、大丈夫です……○○もパンケーキですし……」
ど う し て こ う な っ た 。
見ての通り○○こと星海●●は、ただいま切実に困惑中だ。
いや、本当にどうしようかコレ。
…てかこのパンケーキ、マジで美味いな。
チョコソースも結構濃いめの味なのにクドくないし…パンケーキ本体も当然のようにフワッフワのトロットロ。
うん、てかコレ、絶対にヤバいヤツだ。
主にカロリーとか腹回り的に。
ちなみに値段は全然安い。なんならちょっと異常なぐらい安い。
「ああそうそう、ココのティーラテも美味いんですよねぇ。良かったら一杯どーです?」
「あ、じゃあ…頼んでみます。」
前言撤回、ほうじ茶ラテ飲みたいし頼む。
ってうわぁ……こっちのパフェも美味そうなんだが………
ヤッベ、決められる気がしない……
「まぁまぁ、最初ですし? ひとまず、好きなモン頼んでみても良いと思いますけどねぇ。」
悪魔のような囁きに(ついうっかり)屈して、○○は両方頼む事にしてしまった。
その後数分もせず、頼んだパフェとほうじ茶ラテが届けられる。
不思議に思って今更ながらによく見てみると、店内に○○ら以外の客はいない。
そりゃ早いわな、他の注文無いんだし。
なんて思いつつ、目の前のパフェに手を付ける。
「って、美味し……」
「そうでしょう?初めて食った時、「コレだ!」ってもうビビッと来まして。しかもドリンクも美味いんですよねぇ、ココ。」
…うわホントだ、美味しい……
ひょっとすると、ココまで美味しいほうじ茶ラテって今まで飲んだことないかもしれないな。
そう思った矢先。突然、目の前がふわりと暗くなった。
違う、瞼が落ちてるのか。
だがそう気づいてもすでに間に合わず、あっという間に意識が沈んでいく。
足掻けば足掻くほど眠くなり、まるで流砂みたいだな…と、少しだけ冷静さを残した頭で考える。
って違う、そんなコト…考えてる……ヒマ……なん……て………
明滅する視界の中、楼さんが何故か[漢字]嗤っている[/漢字][ふりがな]・・・・・[/ふりがな]コトを脳が認識するよりも前に、○○は完全に寝入ってしまった。