クセの強い人外達は今日も学生寮に入り浸るようです。
【side ???】
[明朝体] 此処は幻の中。数十人の人々が、瞳をパチクリ見開きます。状況はサッパリ判りません。[/明朝体]
「タイクツですよ。やっぱりつまらないです。あーあ、今回こそ面白いかと思ったのに。」
[明朝体] 銀の狐は不貞腐れています。
それはそれは妖艶で、それはそれは無邪気です。尾の一振りで、その人間たち全てを殺し尽くしても、相変わらずの無表情です。[/明朝体]
「せやけど。アンタはまだ退屈凌ぎに人を殺すようなタイプやないんやろ。」
[明朝体] 紫の都市伝説は無表情です。
目の前に広がる[漢字]一面の死体[/漢字][ふりがな]・・・・・[/ふりがな]を、その鏡面のような瞳に映して居ながらも、それは変わりません。[/明朝体]
「けどよ、今のコレは対して変わんねぇだろ。結局、悪趣味な夢じゃねぇか。なぁ?」
[明朝体] 金眼の化猫は哂います。
彼ら彼女らだったものを、まだ死んでいないと評する都市伝説を。何も分からずに地に伏した、彼ら彼女らを。
狐がポンと手を叩くと、一瞬で巻き戻る死体達。彼ら彼女らはもう死んでいません。何事もなかったかのように、全て忘れて居るようです。
何か夢でも見たような? いやいや、そんな筈はない。だって、今の今まで私は/俺は/僕は。学校に、自宅に、商店街にいた筈だ。
『一体此処はどこかしら』と、瞳をパチクリ見開きます。状況はサッパリ判りません。[/明朝体]
「……まだ死んでへんのなら、俺は逆らえん。知っとるやろ。」
[明朝体] 都市伝説の顔が曇ります。
おやおや、如何したと云うのでしょう?[/明朝体]
「なら、俺も手前をまだ殺さねぇよ。知ってるだろうがな。」
[明朝体] 化猫は哂っています。
意にも介して居ないようです。[/明朝体]
「それでは……もう一度、面白おかしく遊びましょうか。」
[明朝体] 全ては、[漢字]彼女[/漢字][ふりがな]狐[/ふりがな]の掌の上で。夢幻の悪戯の中で。
繰る繰ると廻るお人形遊び。着せ替えて、飾り立てて、憐れな姿を面白がって、からからと軽快に嗤います。
化かして騙して連れ込んで、さてさてお次はどのように愉しみましょう?
ひと月から一週間、散々遊んで飽きてきたので、そろそろ次を見繕いましょうか。
それとも、また熟れる迄百年ほどを眠って待つとしましょうか?
時間はたっぷり、人はちょっぴり。ならば、大切に使わなければなりません。
同じ状態であるものなんて、如何せ一つもありません。
千変万化の人の[漢字]感情[/漢字][ふりがな]ココロ[/ふりがな]は、彼女にとっては大変なご馳走のような物なのです。
だって……ね? 彼女は人々に信仰される、“カミサマ”なのですから。
如何せなら沢山の人に希われた方が、気分が良いに決まって居ます。
そして、そんな憐れな彼ら彼女らの貌が整って居るならより珍しくて面白いと、彼女はそう考えているもので。
さあ、また次のループが始まります。今度は物語を語らせるようです。彼女を面白がらせる事は出来るのでしょうか?[/明朝体]
「悪いけど、今回俺は協力しいひんよ。気分悪いし、目的もあんねん。」
「構わねえよ。如何せあの馬鹿主も、ソレを求めて手前を蘇生した訳じゃねえしな。」
[明朝体] 都市伝説は立ち去ります。化猫は居残ります。
そして狐は、自身が従える[漢字]化猫と都市伝説[/漢字][ふりがな]人ならざるものたち[/ふりがな]なんて気にしません。従えて居るとも思って居ません。
では、彼らは貴女にとって何なのか? と、もしも誰かに問われたならば。悠久の時を共に生きる友人であり、遊び相手であり……面白いモノだ、ときっと答えるでしょう。
勿論それらも大切ですが、然しそれだけではまだ足りぬ。
彼女が知りたいのは、求めて居るのは。[/明朝体]
「さあ、今度こそ面白いモノをくださいね?」
[明朝体] ただ、人間が足掻く姿だけなのですから。[/明朝体]
[中央寄せ][大文字]⚠︎ ⚠︎ ⚠︎[/大文字][/中央寄せ]
さて、○○たちは今。
どういうワケだか、手を繋いだ状態で寮近辺の商店街を散歩している。
「……つーか、いくらなんでもデート風にする必要はなくないですか。ねぇ。ないだろ。だから__」
マジで離してくださいよその手!! 握るな!!!
「おっと、これはこれは手厳しい。けどまぁもし相手方に聞かれてたらマズイですし? 今更どうこうってのもねぇ?」
『それにホラ、もしかすると間違って僕ごと攫ってくれるかもしれねぇっしょ』とか言われたって……いやまぁ助けが来るかどうかすら分からない中待つよりはマシかもしれんが……
いや、やっぱイヤだな、うん。明らかに嫌がらせだろコレ。顔笑ってるし。対するコッチは明らかに顔引き攣ってるだろうコトも簡単に想像できるんだが。
「ホラホラぁ、笑顔笑顔。折角お洒落したってのに、美人さんが台無しですぜ?」
「あ、ハイ……って出来るか!!」
人外怖い。さっきからめっちゃ手振り解こうとしてるけど取れん。でも痛くはないのが絶妙に気持ち悪い。
「……えっと……一体何をしているんですか、星海さんに楼さん……?」
聞き覚えのある声で振り返ると、そこにいたのは○○の同居人こと星月さんであった。
「あっえっちょ……違う違う違いますってマジで楼さんとはそーゆーのではなくてですね!?!?」
「あんれまぁ、相変わらず他人行儀ですねぇ●●さんってば? いっそ気軽にシノブちゃん、とかでも良いんですぜ?」
「黙っててください本当に!! ホラ星月さん混乱してるでしょう!!!」
そうこうしている内に、星月さんの後ろから追加の人影がひょっこり。
見ると彼は綺麗な黒色の涼やかな目元に同じく黒のウルフカットと、ありふれた色味だが目を引くような綺麗な顔立ちをしている。星月さんと並ぶと……うん、失礼かもだが正直、月とスッポン美女と野獣。なお、星月さんがスッポンの側。星月さん、良くも悪くもどこにでも居そうな顔だしな。
おまけに彼はこの一カ月で随分と見慣れた、この辺りの高校の制服を着ている。二つあるけど、確かこっちは私立の進学校の方だったか。もしや頭良いんかな。
「……ねぇ流歌ぁ、このうっさい人と怪しい人誰? 知り合い?」
訂正、顔が良いだけで失礼なクソガキかもしれん。
「ちょ、雪くん、初対面でそれは……」
「まぁ、確かにそうかも。でもうるさいのは事実じゃない?」
「それは……まぁ……はい……」
あと助太刀するならもうちょい頑張ってくださいよ星月さん……なんて、ついつい思っていると。
怪訝そうな顔をした彼が催促するように星月さんをつついている。
「で、結局誰?」
「えっと、大学の研究会の仲間ですね。こちらは星海●●さん、もう一方は楼視信さんです。」
「なんだ、前話してた寮の人と寮にしょっちゅうくる先輩じゃん。」
寮の話とか他の人にしとったんか、この人。意外や意外っつーか……しそうにないと思ってた。なんてちょっと失礼な事を考えていると、何やら若干不機嫌そうな楼さんがずいと前に歩み寄る。
「んで、星月さん? 僕らの紹介も良いですけど、ソッチの少年は一体全体どなたで?」
「あ、すみません……彼は、[太字][漢字]氷月[/漢字][ふりがな]ひょうが[/ふりがな] [漢字]雪[/漢字][ふりがな]ゆき[/ふりがな][/太字]くん、僕の……なんでしょう、友人……?」
「そうそ、流歌の高校もこのすぐ近くてさぁ。家近いし部活一緒だったし、どっちもホント少人数だから、合同でやる事も多かったんだよ。ま、後輩とか弟分みたいなものかなぁ。」
あ、ちなみに今僕高二ね、と付け加える氷月さん。
その途端ふと思い出したように、『僕の最後の年とか、そちらの高校さんの部員は雪くんしかいませんでしたしね……』『んなコト言ったら流歌の高校だって流歌と後輩一人だけだったじゃん。』と、思い出話に花を咲かせはじめた。
……いや、よく存続してたなそんな部活。流石に言わないけど。
「しっかしまぁ、よく存続してましたねぇそんな部活?」
いやあなたが言うんかい楼さん。○○、一応空気読んで黙ったんだが?
「まあ……オカルト部なんですが、歴史だけはありましたし……正直、先生方のお目溢しでしたよ……」
なんつーかこう、星月さんってホントにオカルト好きなんだな……
「……アレ? というか、存由夢先輩はどちらに? 今、一緒じゃないんですか?」
「ああ、はい。今はいらっしゃいません。お一人で都立の大きい図書館に向かわれてしまいました……」
なんでも彼から聞いた事によれば、彼は現在存由夢先輩とは別行動中で、氷月さんの学校のオカ研で保存している文献の調査のために彼を頼ったんだそうな。
『今はもう隣の高校のOBという程度ですから、流石に気軽に入れないんですよ……』と情けなさそうに笑っている。
……もしや当時は気軽に入ってたのか?
「てか流歌ぁ、サッサと行こーよ。もう部外者の流歌が資料室に入る許可もらうために、僕そこそこ頑張って話付けたんだけど? お礼は?」
「あ、そうですね……お二人もお邪魔してしまってすみません。失礼します……って雪くん、引っ張るのはちょっと辞めてくださいね……」
「問答無用! ええいひったてい! アイス奢りの約束を忘れたか!」
「あはは、時代劇じゃないんですから……あ、それじゃあまた。あ、これ、今のところの調査メモです。」
なんだか愉快な会話をしながら、彼らは角を曲がって去っていった。
メモ……というか、ノートを見ると、これまた詳細な情報の数々。
○○は知識がないからサッパリ分からん。そのためなのか、一々端っこに小さいうさぎやら猫やらで用語集がついている。……あ、稲荷って書いてある。コレ終わったら、お稲荷さんでも食べに行こうかな?
「へぇ、コイツぁ中々キレーにまとめてありますねぇ。役に立ちそうで何よりっすわぁ。」
軽口を叩きながらひょいと覗き込んで、『どーせ見たって分からねぇっしょ』と失礼なコトを抜かしながら、○○の手から手帳を奪い取る。
「……待てよ。狐……今は新月だよな? そんなら確か、この辺りに古いのが……」
ぶつぶつと呟くようにしてノートをなぞる楼さん。スマホを出して地図と睨めっこしている。人外は人外の知識があるのは当然としても、○○を置いてけぼりにしないでいただきたい。
こおん、と澄んだ音が響く。なんだろう、と思っていたが、楼さんが合点がいったように頭を抱えているのでついそちらに気を取られた。
あぁクソ、と綺麗な顔を歪めて放ったその一言は、彼の特異性……認識阻害だかなんだかのせいで、周りには聞こえていないようだ。
実際。緩やかに、穏やかに。普段生きていく上で必ず感じている、周りの人からの視線というモノが、ゼロになっていく感覚がする。
例えて言うならそう、空気や石ころですらない、存在しないモノになってしまったような。
「……あの?」
思わず声を掛けた、その刹那。
「……ビンゴ。想定の中で最悪のパターンじゃねぇか! [漢字]神隠し[/漢字][ふりがな]・・・[/ふりがな]だ!」
[明朝体] 此処は幻の中。数十人の人々が、瞳をパチクリ見開きます。状況はサッパリ判りません。[/明朝体]
「タイクツですよ。やっぱりつまらないです。あーあ、今回こそ面白いかと思ったのに。」
[明朝体] 銀の狐は不貞腐れています。
それはそれは妖艶で、それはそれは無邪気です。尾の一振りで、その人間たち全てを殺し尽くしても、相変わらずの無表情です。[/明朝体]
「せやけど。アンタはまだ退屈凌ぎに人を殺すようなタイプやないんやろ。」
[明朝体] 紫の都市伝説は無表情です。
目の前に広がる[漢字]一面の死体[/漢字][ふりがな]・・・・・[/ふりがな]を、その鏡面のような瞳に映して居ながらも、それは変わりません。[/明朝体]
「けどよ、今のコレは対して変わんねぇだろ。結局、悪趣味な夢じゃねぇか。なぁ?」
[明朝体] 金眼の化猫は哂います。
彼ら彼女らだったものを、まだ死んでいないと評する都市伝説を。何も分からずに地に伏した、彼ら彼女らを。
狐がポンと手を叩くと、一瞬で巻き戻る死体達。彼ら彼女らはもう死んでいません。何事もなかったかのように、全て忘れて居るようです。
何か夢でも見たような? いやいや、そんな筈はない。だって、今の今まで私は/俺は/僕は。学校に、自宅に、商店街にいた筈だ。
『一体此処はどこかしら』と、瞳をパチクリ見開きます。状況はサッパリ判りません。[/明朝体]
「……まだ死んでへんのなら、俺は逆らえん。知っとるやろ。」
[明朝体] 都市伝説の顔が曇ります。
おやおや、如何したと云うのでしょう?[/明朝体]
「なら、俺も手前をまだ殺さねぇよ。知ってるだろうがな。」
[明朝体] 化猫は哂っています。
意にも介して居ないようです。[/明朝体]
「それでは……もう一度、面白おかしく遊びましょうか。」
[明朝体] 全ては、[漢字]彼女[/漢字][ふりがな]狐[/ふりがな]の掌の上で。夢幻の悪戯の中で。
繰る繰ると廻るお人形遊び。着せ替えて、飾り立てて、憐れな姿を面白がって、からからと軽快に嗤います。
化かして騙して連れ込んで、さてさてお次はどのように愉しみましょう?
ひと月から一週間、散々遊んで飽きてきたので、そろそろ次を見繕いましょうか。
それとも、また熟れる迄百年ほどを眠って待つとしましょうか?
時間はたっぷり、人はちょっぴり。ならば、大切に使わなければなりません。
同じ状態であるものなんて、如何せ一つもありません。
千変万化の人の[漢字]感情[/漢字][ふりがな]ココロ[/ふりがな]は、彼女にとっては大変なご馳走のような物なのです。
だって……ね? 彼女は人々に信仰される、“カミサマ”なのですから。
如何せなら沢山の人に希われた方が、気分が良いに決まって居ます。
そして、そんな憐れな彼ら彼女らの貌が整って居るならより珍しくて面白いと、彼女はそう考えているもので。
さあ、また次のループが始まります。今度は物語を語らせるようです。彼女を面白がらせる事は出来るのでしょうか?[/明朝体]
「悪いけど、今回俺は協力しいひんよ。気分悪いし、目的もあんねん。」
「構わねえよ。如何せあの馬鹿主も、ソレを求めて手前を蘇生した訳じゃねえしな。」
[明朝体] 都市伝説は立ち去ります。化猫は居残ります。
そして狐は、自身が従える[漢字]化猫と都市伝説[/漢字][ふりがな]人ならざるものたち[/ふりがな]なんて気にしません。従えて居るとも思って居ません。
では、彼らは貴女にとって何なのか? と、もしも誰かに問われたならば。悠久の時を共に生きる友人であり、遊び相手であり……面白いモノだ、ときっと答えるでしょう。
勿論それらも大切ですが、然しそれだけではまだ足りぬ。
彼女が知りたいのは、求めて居るのは。[/明朝体]
「さあ、今度こそ面白いモノをくださいね?」
[明朝体] ただ、人間が足掻く姿だけなのですから。[/明朝体]
[中央寄せ][大文字]⚠︎ ⚠︎ ⚠︎[/大文字][/中央寄せ]
さて、○○たちは今。
どういうワケだか、手を繋いだ状態で寮近辺の商店街を散歩している。
「……つーか、いくらなんでもデート風にする必要はなくないですか。ねぇ。ないだろ。だから__」
マジで離してくださいよその手!! 握るな!!!
「おっと、これはこれは手厳しい。けどまぁもし相手方に聞かれてたらマズイですし? 今更どうこうってのもねぇ?」
『それにホラ、もしかすると間違って僕ごと攫ってくれるかもしれねぇっしょ』とか言われたって……いやまぁ助けが来るかどうかすら分からない中待つよりはマシかもしれんが……
いや、やっぱイヤだな、うん。明らかに嫌がらせだろコレ。顔笑ってるし。対するコッチは明らかに顔引き攣ってるだろうコトも簡単に想像できるんだが。
「ホラホラぁ、笑顔笑顔。折角お洒落したってのに、美人さんが台無しですぜ?」
「あ、ハイ……って出来るか!!」
人外怖い。さっきからめっちゃ手振り解こうとしてるけど取れん。でも痛くはないのが絶妙に気持ち悪い。
「……えっと……一体何をしているんですか、星海さんに楼さん……?」
聞き覚えのある声で振り返ると、そこにいたのは○○の同居人こと星月さんであった。
「あっえっちょ……違う違う違いますってマジで楼さんとはそーゆーのではなくてですね!?!?」
「あんれまぁ、相変わらず他人行儀ですねぇ●●さんってば? いっそ気軽にシノブちゃん、とかでも良いんですぜ?」
「黙っててください本当に!! ホラ星月さん混乱してるでしょう!!!」
そうこうしている内に、星月さんの後ろから追加の人影がひょっこり。
見ると彼は綺麗な黒色の涼やかな目元に同じく黒のウルフカットと、ありふれた色味だが目を引くような綺麗な顔立ちをしている。星月さんと並ぶと……うん、失礼かもだが正直、月とスッポン美女と野獣。なお、星月さんがスッポンの側。星月さん、良くも悪くもどこにでも居そうな顔だしな。
おまけに彼はこの一カ月で随分と見慣れた、この辺りの高校の制服を着ている。二つあるけど、確かこっちは私立の進学校の方だったか。もしや頭良いんかな。
「……ねぇ流歌ぁ、このうっさい人と怪しい人誰? 知り合い?」
訂正、顔が良いだけで失礼なクソガキかもしれん。
「ちょ、雪くん、初対面でそれは……」
「まぁ、確かにそうかも。でもうるさいのは事実じゃない?」
「それは……まぁ……はい……」
あと助太刀するならもうちょい頑張ってくださいよ星月さん……なんて、ついつい思っていると。
怪訝そうな顔をした彼が催促するように星月さんをつついている。
「で、結局誰?」
「えっと、大学の研究会の仲間ですね。こちらは星海●●さん、もう一方は楼視信さんです。」
「なんだ、前話してた寮の人と寮にしょっちゅうくる先輩じゃん。」
寮の話とか他の人にしとったんか、この人。意外や意外っつーか……しそうにないと思ってた。なんてちょっと失礼な事を考えていると、何やら若干不機嫌そうな楼さんがずいと前に歩み寄る。
「んで、星月さん? 僕らの紹介も良いですけど、ソッチの少年は一体全体どなたで?」
「あ、すみません……彼は、[太字][漢字]氷月[/漢字][ふりがな]ひょうが[/ふりがな] [漢字]雪[/漢字][ふりがな]ゆき[/ふりがな][/太字]くん、僕の……なんでしょう、友人……?」
「そうそ、流歌の高校もこのすぐ近くてさぁ。家近いし部活一緒だったし、どっちもホント少人数だから、合同でやる事も多かったんだよ。ま、後輩とか弟分みたいなものかなぁ。」
あ、ちなみに今僕高二ね、と付け加える氷月さん。
その途端ふと思い出したように、『僕の最後の年とか、そちらの高校さんの部員は雪くんしかいませんでしたしね……』『んなコト言ったら流歌の高校だって流歌と後輩一人だけだったじゃん。』と、思い出話に花を咲かせはじめた。
……いや、よく存続してたなそんな部活。流石に言わないけど。
「しっかしまぁ、よく存続してましたねぇそんな部活?」
いやあなたが言うんかい楼さん。○○、一応空気読んで黙ったんだが?
「まあ……オカルト部なんですが、歴史だけはありましたし……正直、先生方のお目溢しでしたよ……」
なんつーかこう、星月さんってホントにオカルト好きなんだな……
「……アレ? というか、存由夢先輩はどちらに? 今、一緒じゃないんですか?」
「ああ、はい。今はいらっしゃいません。お一人で都立の大きい図書館に向かわれてしまいました……」
なんでも彼から聞いた事によれば、彼は現在存由夢先輩とは別行動中で、氷月さんの学校のオカ研で保存している文献の調査のために彼を頼ったんだそうな。
『今はもう隣の高校のOBという程度ですから、流石に気軽に入れないんですよ……』と情けなさそうに笑っている。
……もしや当時は気軽に入ってたのか?
「てか流歌ぁ、サッサと行こーよ。もう部外者の流歌が資料室に入る許可もらうために、僕そこそこ頑張って話付けたんだけど? お礼は?」
「あ、そうですね……お二人もお邪魔してしまってすみません。失礼します……って雪くん、引っ張るのはちょっと辞めてくださいね……」
「問答無用! ええいひったてい! アイス奢りの約束を忘れたか!」
「あはは、時代劇じゃないんですから……あ、それじゃあまた。あ、これ、今のところの調査メモです。」
なんだか愉快な会話をしながら、彼らは角を曲がって去っていった。
メモ……というか、ノートを見ると、これまた詳細な情報の数々。
○○は知識がないからサッパリ分からん。そのためなのか、一々端っこに小さいうさぎやら猫やらで用語集がついている。……あ、稲荷って書いてある。コレ終わったら、お稲荷さんでも食べに行こうかな?
「へぇ、コイツぁ中々キレーにまとめてありますねぇ。役に立ちそうで何よりっすわぁ。」
軽口を叩きながらひょいと覗き込んで、『どーせ見たって分からねぇっしょ』と失礼なコトを抜かしながら、○○の手から手帳を奪い取る。
「……待てよ。狐……今は新月だよな? そんなら確か、この辺りに古いのが……」
ぶつぶつと呟くようにしてノートをなぞる楼さん。スマホを出して地図と睨めっこしている。人外は人外の知識があるのは当然としても、○○を置いてけぼりにしないでいただきたい。
こおん、と澄んだ音が響く。なんだろう、と思っていたが、楼さんが合点がいったように頭を抱えているのでついそちらに気を取られた。
あぁクソ、と綺麗な顔を歪めて放ったその一言は、彼の特異性……認識阻害だかなんだかのせいで、周りには聞こえていないようだ。
実際。緩やかに、穏やかに。普段生きていく上で必ず感じている、周りの人からの視線というモノが、ゼロになっていく感覚がする。
例えて言うならそう、空気や石ころですらない、存在しないモノになってしまったような。
「……あの?」
思わず声を掛けた、その刹那。
「……ビンゴ。想定の中で最悪のパターンじゃねぇか! [漢字]神隠し[/漢字][ふりがな]・・・[/ふりがな]だ!」