クセの強い人外達は今日も学生寮に入り浸るようです。
「んー、ココならよく見えると思ったんですがねぇ。いねぇか……」
「良い加減にしやがってくださいよマジで。下してもらえますかねクソが。」
さっきまで大絶叫していたのと同じ人物の言葉だとは思えない、あるいは日常会話か何かのような、そんな落ち着いた(ように聞こえるだけの)声が時計塔の上で響く。
この声を上げているのは誰かって?
そう、○○こと、星海 ●●です。
「いやいやぁ、今は降ろしてますぜ?」
「超上空。現在地は地上数十メートル。イコール下してない、あーゆーあんだすたんど?」
「ハハ、カタコトになってますけど……どうしたんです?」
高所恐怖症なんだよボケナスが。怒りのあまりシンプル口悪くなってるだろ、どうしてくれるんだこのクソ人外。
つーかもはや一周回って冷静になって来たぞ、どうしてくれようこの仕打ち。
「んー、まぁ良いですぜ、下しましょう。」
○○が呆気に取られているのも気にせず、『僕が探してる相手も今はいねぇみたいですし?』と嘯く楼さん。
「……その、探してるのって?」
「ちょっとした同族ですよ、[漢字]電網潜り[/漢字][ふりがな]ハッカー[/ふりがな]の。」
ハッカーか……会ったことのない人種すぎて逆に一切想像が付かん。この人顔広すぎんか?
あと人外がハッカーしてるのってなんか違和感あるんだが。鉄とか電気とかって苦手じゃないんだ。
「そこそこ有名な配信者だか何だかもしてたと思うんですけど……ま、ソッチは覚えてねぇんで勘弁してくださいよっと。」
そう片手をヒラヒラと降ると、『で、今はそんなん良いでしょう。』と誤魔化すように笑った。相変わらずチェシャ猫そっくりだ。
「ホラホラぁ、下りるんでお手をドーゾ?」
「……まっすぐ下りるだけにしてくださいよ。まっすぐですからね。あといきなり飛び……」
『いきなり飛び降りたら怒る』と言うか言わないかの内に、楼さんは○○の手を引いて。
ここまで来たらお察しの通り、ぴょんと飛び降りられました。浮遊感に顔を顰める間もなく、○○を抱えた状態で楼さんはふわふわと飛んでいる。
マジでなんなんだ、コイツ……
「ま、アイツ一人いなくてもなんとかなるでしょうし。ホラホラぁ、お次はデパート行きますよ。」
「電車で!!! 行きましょう!!!!」
「いやいやぁ、ナニ言ってんですか。飛んだ方が速いし、そもそもタダですぜ? 僕がトクベツに運んであげますから。」
「楼さんこそイイ笑顔でなに言ってやがんですか。キレますよ。」
つーかなぜデパート。あぁ、他の協力者とかそういう話なのか? このヒト、顔は広そうだしな。
内心で自分を納得させてうんうんと頷いていると、楼さんが顔を歪めたような気がした。
……まぁこのヒト何考えてるか分からんし、また何かミョーなモンでも見つけたのかな。
「あぁそうそう。この事件、特にカワイイ子が攫われてるっぽいんですよねぇ。んで幸い、アンタも顔は整ってる方ですし?」
……待てよ、猛烈に嫌な予感がする。具体的に言うとコレはアレだ、ヘビに睨まれたカエルというか、食われる寸前のシマウマというか……
「つーわけで、アンタをカワイイ感じに仕立て上げて潜入してもらおうかなっと思いまして。」
は?
「ふっっっっっざけんなボケ!!!!!! この鬼畜!!!!!! 悪魔!!!!!!!! 人でなし!!!!!!!!」
オイオイオイ正気かよコイツ!!!
[漢字]人を囮にする前提の計画[/漢字][ふりがな]・・・・・・・・・・・[/ふりがな]立ててやがる!!!! キレそうっつーかキレたわさすがの○○も!!!!!
「おやおやぁ、まさか●●さんともあろう方がご存知ねぇんで? 僕ぁ立派なヴァンパイアですよっと。」
『なら人でなしなのは当然ですし? 少なくとも悪魔じゃあありませんよねぇ。』と口笛を吹きながら、○○が暴れるのもモノともせずにデパートにまっしぐら。
クッソ、一ミリも動かないんだが!!!! なんなんだよオイ!!!!!
[中央寄せ][大文字]⚠︎ ⚠︎ ⚠︎[/大文字][/中央寄せ]
「……きゅう」
星海●●、只今デパート裏にて座り込んでグロッキーなう。マジ何なんだよアレ……殺人的なスピードだし落っこちかけるし、おまけにめちゃくちゃ乱気流に巻き込まれたんだが……
「あーあ疲れたっと。やっぱ人ひとり抱えて飛ぶのも骨が折れますわぁ、どっかの誰かさんが暴れたせいで余計に厄介な状況になりましたし?」
「……そのどっかの誰かさんが暴れた原因は○○の目の前にいるんですが。」
苦し紛れの憎まれ口を叩いて楼さんをジロリと睨むが、彼はワザとらしく周辺を見渡すばかり。
「んー? 生憎、僕らの他に人はいなさそうですがねぇ?」
「……鏡って知ってます? 多分使えば見えると思いますよ、元凶。」
「そいつぁ嫌がらせで? なら珍しく正解だ、心当たりはありませんが。僕らヴァンパイアは鏡にゃ映りませんよー?」
マジでああ言えばこう言うなこのヒト……なんなんだよ……
ヘラヘラとしたまま差し出された手を引っ掴み、『せめてぐうの音くらいは聞いておきたかった……』なんて少しだけ思いつつ、埃を払って立ち上がる。
憎まれ口叩いてちょっと復活したっつーか、こんな奴に面白がられてたまるか、みたいなメンタルだ。
「……てか○○、スカートとか嫌いなんですけど。」
『切り替えはっや』と呟きながら、楼さんはそっと○○から遠ざかる。クソ、蹴り入れようとしてたのバレてら。
「そーいやアンタ、厚手のジーンズばっかりですよねぇ。しかも冬物。この時期じゃあ割と暑いでしょうに、春物のヒラヒラしたのとか短いのとかは着ねぇんで?」
「……[太字]黙ってください[/太字]。」
そう、誰にだって触れられたくないコトくらいある。軽口で返せないコトもある。いわゆる地雷というアレだ。
そして、このヒトはきっと。
[漢字]ソレが分からないKYではない[/漢字][ふりがな]・・・・・・・・・・・・・・[/ふりがな]と、この短い付き合いでも理解ができる。
ギロリ、ときつく睨みあげると、少しだけ楼さんが怯んだ気がした。
……まさか、な。どうせどこまで行ってもこのヒトは人外だ、○○ごときにビビるコトもなければ、○○ごときに気を使うコトもない。
視線を逸らし、珍しく無言でデパートの入り口に向けて歩き出す楼さんは、その後一度も○○を振り返らなかった。
[中央寄せ][大文字]⚠︎ ⚠︎ ⚠︎[/大文字][/中央寄せ]
「……」
さて。そんなこんなでデパート内に入ったわけだが。今○○が思っているコトは非常に単純だ。
気まずい!!! とても気まずい!!!! 沈黙キツい!!!!! 楼さんがずっとこっち見ないでズカズカデパートを歩いていく!!!!! 足早い!!!!!!
「……あの。別に○○としては、アレ以上掘り下げてこないなら怒る理由もないんですが。黙ってられると居心地悪いんで、なんか喋ってくださいよ。あと早いです。」
「……ん? あーいや、すんませんねぇ、ちょっとした考え事を。アンタとはまた別件ですけど。」
「あーそうですか気を回した○○がバカでした!」
自由だな本当に!!!
なんつーかこう、流石は人外。人にズカズカ踏み入っといて、気にしてるかと思えば別件で黙ってるときた。キレそうなんだが。
「へいへい、すみませんねぇ。お詫びに服は僕が出すんで勘弁してくださいよっと。」
「どうせ経費で落とすんですよね?」
「あらら、バレてら。まぁまぁ、アンタの財布から出るワケじゃないって点は変わりませんし?」
肩を竦める楼さんに○○は一言。
「依頼人さんの懐から出るか楼さんの懐から出るかなら大分違いますが。」
その途端『僕の財布にダメージ与えようとしないでくれませんかねぇ!?』と戯けたように突っ込まれた。精々無駄な出費で苦労しやがれバーカ。
いいや、むしろこの際○○の趣味の服を経費で落とせないくらいに買い漁ってやる!!!
……と、思っていたのだが。
あれよあれよという間に楼さんによってセール品で全身コーディネートを決められた。
コレとコレとコレ! みたいな感じでパパッと見繕われて、試着室に女性の店員さんと一緒にポン、だった。うわーん洒落たカッコのアパレル店員怖い! 断れん!!
お似合いですよ、とお決まりの言葉をテキトーに聞き流しつつ鏡を眺めると、ソコには大きめのシルエットのニットカーディガンに黒のハイネック、白の七十年代フレアを穿いた○○が。
うーん、普段の○○なら絶対選ばんなコレ。服飾の趣味、ロックっつーか若干サブカルに寄ってるし。
「おーい、着れたんなら僕にもどんな具合か見せてくれません?」
「……まあ、ズボンではありますけど……」
「いやいやぁ、中々お似合いじゃないですか●●さん? ホーント、さっすが僕っすわぁ。」
むしろ○○が選ぶより似合ってるかもしれないまであるのが実に解せん! おまけにちゃっかりとさっきガチギレしたヒラヒラ系統は避けてきてるのも何かこう……余計にイラつくんだが!!
「まぁまぁ、こーゆーのは慣れてますんで? アンタ手足長いし、似合いそうかなあと。」
「うわナンパ師みたいな仕草……薄ら寒いんで勘弁してくださいよ。」
「オイオイひっでぇなぁ、シツレーなコト言わねぇでもらえますー?」
……つーか、よく考えたらこのヒト人外がどうこう以前に校内で有名なレベルのナンパ師だったわ!! 死ぬほど今更だった!!!
「そんじゃコレ、会計お願いします。●●さぁん、ソレ一旦脱いできて貰えます? んでタグだけ切って貰いましょうや。」
『あ、会計終わった後でもう一度ここの試着室借りても構いません? 着て行くんで。』とお得意の甘いマスクとやらで女性店員に微笑めば、○○の反論と安全上の問題その他諸々は店員さんの頭からスポンと飛んで行ってしまったらしい。いそいそと会計に向かっていった。
ケッ、イケメン様が……二次元だけで良いんだよそんなレベルのイケメン様は……まぁ○○の推しはVtuberですけど……なんて思いつつ、もそもそと脱いで店員さんに渡すと、あっという間にタグを切られる。そして○○がもう一度着ている間、きゃいきゃいと実に楽しそうに楼さんに話しかけているのが試着室の中からでも分かる。
オイ騙されんな店員さん、そのヒト顔が良いだけのナンパ師ですよ、なんなら人間ですらありませんよ……なんて言えるはずもなく。
『あの子が彼女? いやぁナイナイ、幼馴染ですって。合コン行くとか何とかで僕を頼ってきたんですよねぇ。あ、ちなみに僕ぁ今んトコフリーですよー』と○○に関するテキトーな嘘をばら撒きつつナンパに勤しむ楼さんをぶん殴りたい衝動に駆られながらも、買いたての一式を着てそそくさと離れるコトになりましたとさ。
[中央寄せ][大文字]⚠︎ ⚠︎ ⚠︎[/大文字][/中央寄せ]
デパートを出た矢先。『あ、そうそう。』とふと思い出したように、楼さんが止まる。ほい、と気軽に投げ渡されたのは、箱に入った雫型のネックレスだった。金鎖に、紫の……石、か? とにかく、見た目よりもずっしりとしている。
「無駄遣いでしょう、さすがに……」
「いやいやぁ、コッチは経費じゃなくて僕からですぜ? 念の為、大事に付けといてくださいよっと。」
「……あなたから貰うの、なんかちょっとイヤなんですけど」
「なぁに、ちょっとした獣避けのお守りみたいなモンだと思ってもらえれば。」
その言葉の真意を、この時の○○はまだ知らない。
「良い加減にしやがってくださいよマジで。下してもらえますかねクソが。」
さっきまで大絶叫していたのと同じ人物の言葉だとは思えない、あるいは日常会話か何かのような、そんな落ち着いた(ように聞こえるだけの)声が時計塔の上で響く。
この声を上げているのは誰かって?
そう、○○こと、星海 ●●です。
「いやいやぁ、今は降ろしてますぜ?」
「超上空。現在地は地上数十メートル。イコール下してない、あーゆーあんだすたんど?」
「ハハ、カタコトになってますけど……どうしたんです?」
高所恐怖症なんだよボケナスが。怒りのあまりシンプル口悪くなってるだろ、どうしてくれるんだこのクソ人外。
つーかもはや一周回って冷静になって来たぞ、どうしてくれようこの仕打ち。
「んー、まぁ良いですぜ、下しましょう。」
○○が呆気に取られているのも気にせず、『僕が探してる相手も今はいねぇみたいですし?』と嘯く楼さん。
「……その、探してるのって?」
「ちょっとした同族ですよ、[漢字]電網潜り[/漢字][ふりがな]ハッカー[/ふりがな]の。」
ハッカーか……会ったことのない人種すぎて逆に一切想像が付かん。この人顔広すぎんか?
あと人外がハッカーしてるのってなんか違和感あるんだが。鉄とか電気とかって苦手じゃないんだ。
「そこそこ有名な配信者だか何だかもしてたと思うんですけど……ま、ソッチは覚えてねぇんで勘弁してくださいよっと。」
そう片手をヒラヒラと降ると、『で、今はそんなん良いでしょう。』と誤魔化すように笑った。相変わらずチェシャ猫そっくりだ。
「ホラホラぁ、下りるんでお手をドーゾ?」
「……まっすぐ下りるだけにしてくださいよ。まっすぐですからね。あといきなり飛び……」
『いきなり飛び降りたら怒る』と言うか言わないかの内に、楼さんは○○の手を引いて。
ここまで来たらお察しの通り、ぴょんと飛び降りられました。浮遊感に顔を顰める間もなく、○○を抱えた状態で楼さんはふわふわと飛んでいる。
マジでなんなんだ、コイツ……
「ま、アイツ一人いなくてもなんとかなるでしょうし。ホラホラぁ、お次はデパート行きますよ。」
「電車で!!! 行きましょう!!!!」
「いやいやぁ、ナニ言ってんですか。飛んだ方が速いし、そもそもタダですぜ? 僕がトクベツに運んであげますから。」
「楼さんこそイイ笑顔でなに言ってやがんですか。キレますよ。」
つーかなぜデパート。あぁ、他の協力者とかそういう話なのか? このヒト、顔は広そうだしな。
内心で自分を納得させてうんうんと頷いていると、楼さんが顔を歪めたような気がした。
……まぁこのヒト何考えてるか分からんし、また何かミョーなモンでも見つけたのかな。
「あぁそうそう。この事件、特にカワイイ子が攫われてるっぽいんですよねぇ。んで幸い、アンタも顔は整ってる方ですし?」
……待てよ、猛烈に嫌な予感がする。具体的に言うとコレはアレだ、ヘビに睨まれたカエルというか、食われる寸前のシマウマというか……
「つーわけで、アンタをカワイイ感じに仕立て上げて潜入してもらおうかなっと思いまして。」
は?
「ふっっっっっざけんなボケ!!!!!! この鬼畜!!!!!! 悪魔!!!!!!!! 人でなし!!!!!!!!」
オイオイオイ正気かよコイツ!!!
[漢字]人を囮にする前提の計画[/漢字][ふりがな]・・・・・・・・・・・[/ふりがな]立ててやがる!!!! キレそうっつーかキレたわさすがの○○も!!!!!
「おやおやぁ、まさか●●さんともあろう方がご存知ねぇんで? 僕ぁ立派なヴァンパイアですよっと。」
『なら人でなしなのは当然ですし? 少なくとも悪魔じゃあありませんよねぇ。』と口笛を吹きながら、○○が暴れるのもモノともせずにデパートにまっしぐら。
クッソ、一ミリも動かないんだが!!!! なんなんだよオイ!!!!!
[中央寄せ][大文字]⚠︎ ⚠︎ ⚠︎[/大文字][/中央寄せ]
「……きゅう」
星海●●、只今デパート裏にて座り込んでグロッキーなう。マジ何なんだよアレ……殺人的なスピードだし落っこちかけるし、おまけにめちゃくちゃ乱気流に巻き込まれたんだが……
「あーあ疲れたっと。やっぱ人ひとり抱えて飛ぶのも骨が折れますわぁ、どっかの誰かさんが暴れたせいで余計に厄介な状況になりましたし?」
「……そのどっかの誰かさんが暴れた原因は○○の目の前にいるんですが。」
苦し紛れの憎まれ口を叩いて楼さんをジロリと睨むが、彼はワザとらしく周辺を見渡すばかり。
「んー? 生憎、僕らの他に人はいなさそうですがねぇ?」
「……鏡って知ってます? 多分使えば見えると思いますよ、元凶。」
「そいつぁ嫌がらせで? なら珍しく正解だ、心当たりはありませんが。僕らヴァンパイアは鏡にゃ映りませんよー?」
マジでああ言えばこう言うなこのヒト……なんなんだよ……
ヘラヘラとしたまま差し出された手を引っ掴み、『せめてぐうの音くらいは聞いておきたかった……』なんて少しだけ思いつつ、埃を払って立ち上がる。
憎まれ口叩いてちょっと復活したっつーか、こんな奴に面白がられてたまるか、みたいなメンタルだ。
「……てか○○、スカートとか嫌いなんですけど。」
『切り替えはっや』と呟きながら、楼さんはそっと○○から遠ざかる。クソ、蹴り入れようとしてたのバレてら。
「そーいやアンタ、厚手のジーンズばっかりですよねぇ。しかも冬物。この時期じゃあ割と暑いでしょうに、春物のヒラヒラしたのとか短いのとかは着ねぇんで?」
「……[太字]黙ってください[/太字]。」
そう、誰にだって触れられたくないコトくらいある。軽口で返せないコトもある。いわゆる地雷というアレだ。
そして、このヒトはきっと。
[漢字]ソレが分からないKYではない[/漢字][ふりがな]・・・・・・・・・・・・・・[/ふりがな]と、この短い付き合いでも理解ができる。
ギロリ、ときつく睨みあげると、少しだけ楼さんが怯んだ気がした。
……まさか、な。どうせどこまで行ってもこのヒトは人外だ、○○ごときにビビるコトもなければ、○○ごときに気を使うコトもない。
視線を逸らし、珍しく無言でデパートの入り口に向けて歩き出す楼さんは、その後一度も○○を振り返らなかった。
[中央寄せ][大文字]⚠︎ ⚠︎ ⚠︎[/大文字][/中央寄せ]
「……」
さて。そんなこんなでデパート内に入ったわけだが。今○○が思っているコトは非常に単純だ。
気まずい!!! とても気まずい!!!! 沈黙キツい!!!!! 楼さんがずっとこっち見ないでズカズカデパートを歩いていく!!!!! 足早い!!!!!!
「……あの。別に○○としては、アレ以上掘り下げてこないなら怒る理由もないんですが。黙ってられると居心地悪いんで、なんか喋ってくださいよ。あと早いです。」
「……ん? あーいや、すんませんねぇ、ちょっとした考え事を。アンタとはまた別件ですけど。」
「あーそうですか気を回した○○がバカでした!」
自由だな本当に!!!
なんつーかこう、流石は人外。人にズカズカ踏み入っといて、気にしてるかと思えば別件で黙ってるときた。キレそうなんだが。
「へいへい、すみませんねぇ。お詫びに服は僕が出すんで勘弁してくださいよっと。」
「どうせ経費で落とすんですよね?」
「あらら、バレてら。まぁまぁ、アンタの財布から出るワケじゃないって点は変わりませんし?」
肩を竦める楼さんに○○は一言。
「依頼人さんの懐から出るか楼さんの懐から出るかなら大分違いますが。」
その途端『僕の財布にダメージ与えようとしないでくれませんかねぇ!?』と戯けたように突っ込まれた。精々無駄な出費で苦労しやがれバーカ。
いいや、むしろこの際○○の趣味の服を経費で落とせないくらいに買い漁ってやる!!!
……と、思っていたのだが。
あれよあれよという間に楼さんによってセール品で全身コーディネートを決められた。
コレとコレとコレ! みたいな感じでパパッと見繕われて、試着室に女性の店員さんと一緒にポン、だった。うわーん洒落たカッコのアパレル店員怖い! 断れん!!
お似合いですよ、とお決まりの言葉をテキトーに聞き流しつつ鏡を眺めると、ソコには大きめのシルエットのニットカーディガンに黒のハイネック、白の七十年代フレアを穿いた○○が。
うーん、普段の○○なら絶対選ばんなコレ。服飾の趣味、ロックっつーか若干サブカルに寄ってるし。
「おーい、着れたんなら僕にもどんな具合か見せてくれません?」
「……まあ、ズボンではありますけど……」
「いやいやぁ、中々お似合いじゃないですか●●さん? ホーント、さっすが僕っすわぁ。」
むしろ○○が選ぶより似合ってるかもしれないまであるのが実に解せん! おまけにちゃっかりとさっきガチギレしたヒラヒラ系統は避けてきてるのも何かこう……余計にイラつくんだが!!
「まぁまぁ、こーゆーのは慣れてますんで? アンタ手足長いし、似合いそうかなあと。」
「うわナンパ師みたいな仕草……薄ら寒いんで勘弁してくださいよ。」
「オイオイひっでぇなぁ、シツレーなコト言わねぇでもらえますー?」
……つーか、よく考えたらこのヒト人外がどうこう以前に校内で有名なレベルのナンパ師だったわ!! 死ぬほど今更だった!!!
「そんじゃコレ、会計お願いします。●●さぁん、ソレ一旦脱いできて貰えます? んでタグだけ切って貰いましょうや。」
『あ、会計終わった後でもう一度ここの試着室借りても構いません? 着て行くんで。』とお得意の甘いマスクとやらで女性店員に微笑めば、○○の反論と安全上の問題その他諸々は店員さんの頭からスポンと飛んで行ってしまったらしい。いそいそと会計に向かっていった。
ケッ、イケメン様が……二次元だけで良いんだよそんなレベルのイケメン様は……まぁ○○の推しはVtuberですけど……なんて思いつつ、もそもそと脱いで店員さんに渡すと、あっという間にタグを切られる。そして○○がもう一度着ている間、きゃいきゃいと実に楽しそうに楼さんに話しかけているのが試着室の中からでも分かる。
オイ騙されんな店員さん、そのヒト顔が良いだけのナンパ師ですよ、なんなら人間ですらありませんよ……なんて言えるはずもなく。
『あの子が彼女? いやぁナイナイ、幼馴染ですって。合コン行くとか何とかで僕を頼ってきたんですよねぇ。あ、ちなみに僕ぁ今んトコフリーですよー』と○○に関するテキトーな嘘をばら撒きつつナンパに勤しむ楼さんをぶん殴りたい衝動に駆られながらも、買いたての一式を着てそそくさと離れるコトになりましたとさ。
[中央寄せ][大文字]⚠︎ ⚠︎ ⚠︎[/大文字][/中央寄せ]
デパートを出た矢先。『あ、そうそう。』とふと思い出したように、楼さんが止まる。ほい、と気軽に投げ渡されたのは、箱に入った雫型のネックレスだった。金鎖に、紫の……石、か? とにかく、見た目よりもずっしりとしている。
「無駄遣いでしょう、さすがに……」
「いやいやぁ、コッチは経費じゃなくて僕からですぜ? 念の為、大事に付けといてくださいよっと。」
「……あなたから貰うの、なんかちょっとイヤなんですけど」
「なぁに、ちょっとした獣避けのお守りみたいなモンだと思ってもらえれば。」
その言葉の真意を、この時の○○はまだ知らない。