クセの強い人外達は今日も学生寮に入り浸るようです。
「あ゛ー…つ゛か゛れ゛た゛……」
絶対に他人には聞かせられないような、あるいは締め殺されたニワトリみたいな、そんなクソヤバい声が広い居間に響く。
この声を上げているのは誰かって?
そう、○○こと、[漢字]星海[/漢字][ふりがな]ほしうみ[/ふりがな] ●●です。
いやぁ、引っ越しってやっぱり大変だわ。
恥を忍んで親の力借りれば良かったかも…なんて思わなくもないが。
いやいや、挫けるなよ○○!
あの過干渉毒親から離れるためにわざわざ遠い大学受験したんだろうが!
…いやまぁ、言うてそれほど毒でもなかったかもしれないが。
というかむしろ世間一般的に見れば多分、比較的マトモな部類なんだが。
でもさぁ、なんか会話が噛み合わないんだよ。価値観が違うって言った方がいいのかもしれない。
なんて言えば良いんだろう、マトモすぎて息が詰まる…みたいな?
まぁ○○、自分で言うのもなんだけど結構自由人だからな…
それもこれも多分、色々禁止されてきた弊害だ。人のせいにするのは好きじゃないけど、コレに関しては多分間違ってないからはっきり言ってしまうコトにしている。
とはいえ、家族から離れたかったのだけは間違いなく事実だ。
信じられるか?高校生の時、「周りみんなイ◯スタやらビーリ◯ルやらやってるから入れてくれ!」って頼んだら「別に要らないでしょ。」だったからな。
なんならバイトも禁止だったし、T◯itterもアカウントの作成禁止だった。「じゃあ何なら良いんだよ!」って、ぶっちゃけ思った。
いやあ、アレはちょっと…うん、さすがにドン引いた。今となっては懐かしい思い出だが、そのせいで○○は陰キャ道を歩むハメになったと言っても間違いじゃないだろう。
とはいえ中学時代ですでにゲームとネットサーフィンだけで丸一日潰した事がある社不だからあんま信用ないし、仕方ないかもしれないが。
まあ自分の話なんてどうでもいいや。大事なのはそう、今日から○○も一国一城の主人!ってコト。
あ、学生寮だから一国十城ぐらい?の主人か。
でもまだ全然誰も居ないんだよなぁ。なんせ、今年できたばっかの新築キラッキラの寮だし。
「…というか、入居者の表とかって…あるのか…?」
「あー…あります、よ。」
え、誰だコイツ。てか、どっから出てきやがったし。あの奇声聞かれてないだろうな。
そんなコトを考える暇もなく、○○は何やら奇妙な悲鳴を上げながら後退した。
「あのー…えっと…大丈夫です?」
「え、あ、はい、平気…ですか?」
あ、ダメだこりゃ。
二人揃って日本語おかしいわ。
「えっと…すみません、急に出てきてしまって。自分の荷物の片付けが終わったんで、玄関を覗きに来ただけ、でして…」
「あ、そうだったんですね… こっちこそ、叫んですみません。うるさかった…です、よね……」
冷静になってそちらを見てみるとそこには、少し前髪が長い青年が立っていた。
ちょっと野暮ったい雰囲気のパーカーに丸い遠視用のメガネ、猫背気味で自信無さげな声……
○○と同じ、陰キャ型の人と見た。(いやこれ超失礼だな、うん)
「あ、いえ、大丈夫です。で、コレが…さっき言った、入居者の一覧表、ですね。」
差し出されたそれを見てみると、ソコに載っていたのは…
「いや、ここの住人、○○とあなた以外居ないんですか…?」
「どうも、そうみたいです。僕はあっちの男子棟で一人、貴方はそっちの女子棟で一人、ですが…」
いや本当にさぁ…二人分しか名前が無いって、一体全体どーゆーコトだよ!?
いやいやいや、ここ各部屋&玄関にオートロック付きの新築だぞ!?
家賃だってかなり安かったし、間違いなくお得物件だろ!?
逆になんでこの条件で人が入ってないワケ!?!?
「あー…まあ、そうなりますよねえ…」
「そういうあなたは冷静ですけど…?」
「いや、僕は…十分前に、ソレ経験してるんで……」
あ、そっかこの人○○より先にここ着いてるんだもんな。
そりゃとっくに表も確認してるわ、何言ってんだ○○。
「いやあ…まさか、早速出るとは思いませんでした……」
「へ?」
ごめん、何言ってんだこの人。
出るってなんだよ、ゴ◯ブリか?
それなら潰せば良いだけだし、別に平気なんだが…
「えっと…すみません。逆に、知らないで来たんですか……?」
「あー…実は○○、実家はこの辺じゃなくて……」
え、なんだろう。ゴミ屋敷が近くにあるとか?
ぱっと見無さそうだったんだがなぁ……
「いや、ここ…幽霊出るって、噂が……」
へ?
え??
「はぁあぁぁ!?!?!?」
僕はそーゆーの、一応平気なんで来たんですけど…なんて目隠れ青年は言っているが、○○は単純にそんなもの出るなんて知らなかっただけなんだが???
というか、幽霊とかぜっっっっったいに無理だ。
子供向けのお化け屋敷で失神して友人に担いで連れ出された女舐めんなよ。
無理無理無理、まじで絶対に無理。
てか、知ってたらフツーこんな所選ばねぇよ。
「もうやだ帰る……おうち帰る……」
「あー…そりゃそうだ、こんなのと二人っきりとかそりゃ嫌ですよね……なんでそんな単純な事も思いつかなかったかな僕の馬鹿………」
「あー、なんかめちゃくちゃ傷つけてしまっている……罪悪感……」
「いや、これに関しちゃ僕が悪いんで…って、」
「「へ?」」
…あれ、なんか声が二重に聞こえる。
「……○○、もしかして今独り言口に出てました……?」
「ああいや、多分僕も出てましたよね……死にたい……」
「あ、また。」
「あ、本当ですね……」
どうも、○○とこの人は似た者同士みたいだ。
そう思った矢先、目隠れ青年は顔を引き攣らせて叫ぶ。
「…ひっ!!!」
「え、どうし…ってなんだ、ただのクモじゃないですか。」
「無理です無理ですまじで無理です勘弁してください家帰る!!!」
あー、これは…うん、ハエトリグモだ。
ゴキ◯リとか食べてくれるし、放置しといても良いヤツ。
「…益虫ですよ?」
「お願いしますじゃあせめて僕に見えない所に持ってって下さい本当に無理です!!!!」
あ、マジで虫ダメなんだこの人。クモは結構カワイイんだがなぁ…
「あー分かりました。 …新聞紙とかって…あります?」
「そこにあります本当に無理なんですすみません!!!」
よいしょ、っと。
森へおかえりー。
まぁ、森じゃないんだが。
なんて呑気に考えながら、クモを新聞紙でヒョイと掴んで窓から捨てる。
でっかくなれよ。キミが虫食ってくれれば、○○がラクできるし。
「ありがとうございます…助かりました……」
「いえ、○○も多分、幽霊出たらああなるので……」
その時は助けて下さいね、[漢字]星月[/漢字][ふりがな]ほしづき[/ふりがな]さん。
そう言って、目隠れ青年の名…と、思われるものを呼ぶ。
外していたらだいぶ恥ずかしいが、入居者の資料に「極度の遠視」とあるし、多分この人で間違いないだろう。
というか、そうじゃなかったら本格的に「誰だお前!?」って話になってしまう。
「え、なんで、僕の、名前…」
「いや、資料ありますから…」
「あ。そりゃ、そうですね…」
良かった合ってたー!!!
「えっと、じゃあ改めて…自己紹介、しときましょうか。
僕の名前は星月 [漢字]流歌[/漢字][ふりがな]るか[/ふりがな]です。
あー…まあ、これから、宜しくお願いします…」
「ありがとうございます。○○も、一応自己紹介しておきますね。
○○は、星海 ●●です。
不束者ですが…よろしく、お願いします。」
うん、もう早速先行き不安だが。
それでも、少なくとも退屈だけはしない日々になりそうだ。
霊感も多分無いし、ココ以外に住めるアテも(家賃的に)無し…
腹括って頑張るしかないな。
そう思って自分を無理やり納得させたコトを、○○は後々まで後悔するハメになるのだが…
今の○○には、そんなコト知る由もなかったのだ。
絶対に他人には聞かせられないような、あるいは締め殺されたニワトリみたいな、そんなクソヤバい声が広い居間に響く。
この声を上げているのは誰かって?
そう、○○こと、[漢字]星海[/漢字][ふりがな]ほしうみ[/ふりがな] ●●です。
いやぁ、引っ越しってやっぱり大変だわ。
恥を忍んで親の力借りれば良かったかも…なんて思わなくもないが。
いやいや、挫けるなよ○○!
あの過干渉毒親から離れるためにわざわざ遠い大学受験したんだろうが!
…いやまぁ、言うてそれほど毒でもなかったかもしれないが。
というかむしろ世間一般的に見れば多分、比較的マトモな部類なんだが。
でもさぁ、なんか会話が噛み合わないんだよ。価値観が違うって言った方がいいのかもしれない。
なんて言えば良いんだろう、マトモすぎて息が詰まる…みたいな?
まぁ○○、自分で言うのもなんだけど結構自由人だからな…
それもこれも多分、色々禁止されてきた弊害だ。人のせいにするのは好きじゃないけど、コレに関しては多分間違ってないからはっきり言ってしまうコトにしている。
とはいえ、家族から離れたかったのだけは間違いなく事実だ。
信じられるか?高校生の時、「周りみんなイ◯スタやらビーリ◯ルやらやってるから入れてくれ!」って頼んだら「別に要らないでしょ。」だったからな。
なんならバイトも禁止だったし、T◯itterもアカウントの作成禁止だった。「じゃあ何なら良いんだよ!」って、ぶっちゃけ思った。
いやあ、アレはちょっと…うん、さすがにドン引いた。今となっては懐かしい思い出だが、そのせいで○○は陰キャ道を歩むハメになったと言っても間違いじゃないだろう。
とはいえ中学時代ですでにゲームとネットサーフィンだけで丸一日潰した事がある社不だからあんま信用ないし、仕方ないかもしれないが。
まあ自分の話なんてどうでもいいや。大事なのはそう、今日から○○も一国一城の主人!ってコト。
あ、学生寮だから一国十城ぐらい?の主人か。
でもまだ全然誰も居ないんだよなぁ。なんせ、今年できたばっかの新築キラッキラの寮だし。
「…というか、入居者の表とかって…あるのか…?」
「あー…あります、よ。」
え、誰だコイツ。てか、どっから出てきやがったし。あの奇声聞かれてないだろうな。
そんなコトを考える暇もなく、○○は何やら奇妙な悲鳴を上げながら後退した。
「あのー…えっと…大丈夫です?」
「え、あ、はい、平気…ですか?」
あ、ダメだこりゃ。
二人揃って日本語おかしいわ。
「えっと…すみません、急に出てきてしまって。自分の荷物の片付けが終わったんで、玄関を覗きに来ただけ、でして…」
「あ、そうだったんですね… こっちこそ、叫んですみません。うるさかった…です、よね……」
冷静になってそちらを見てみるとそこには、少し前髪が長い青年が立っていた。
ちょっと野暮ったい雰囲気のパーカーに丸い遠視用のメガネ、猫背気味で自信無さげな声……
○○と同じ、陰キャ型の人と見た。(いやこれ超失礼だな、うん)
「あ、いえ、大丈夫です。で、コレが…さっき言った、入居者の一覧表、ですね。」
差し出されたそれを見てみると、ソコに載っていたのは…
「いや、ここの住人、○○とあなた以外居ないんですか…?」
「どうも、そうみたいです。僕はあっちの男子棟で一人、貴方はそっちの女子棟で一人、ですが…」
いや本当にさぁ…二人分しか名前が無いって、一体全体どーゆーコトだよ!?
いやいやいや、ここ各部屋&玄関にオートロック付きの新築だぞ!?
家賃だってかなり安かったし、間違いなくお得物件だろ!?
逆になんでこの条件で人が入ってないワケ!?!?
「あー…まあ、そうなりますよねえ…」
「そういうあなたは冷静ですけど…?」
「いや、僕は…十分前に、ソレ経験してるんで……」
あ、そっかこの人○○より先にここ着いてるんだもんな。
そりゃとっくに表も確認してるわ、何言ってんだ○○。
「いやあ…まさか、早速出るとは思いませんでした……」
「へ?」
ごめん、何言ってんだこの人。
出るってなんだよ、ゴ◯ブリか?
それなら潰せば良いだけだし、別に平気なんだが…
「えっと…すみません。逆に、知らないで来たんですか……?」
「あー…実は○○、実家はこの辺じゃなくて……」
え、なんだろう。ゴミ屋敷が近くにあるとか?
ぱっと見無さそうだったんだがなぁ……
「いや、ここ…幽霊出るって、噂が……」
へ?
え??
「はぁあぁぁ!?!?!?」
僕はそーゆーの、一応平気なんで来たんですけど…なんて目隠れ青年は言っているが、○○は単純にそんなもの出るなんて知らなかっただけなんだが???
というか、幽霊とかぜっっっっったいに無理だ。
子供向けのお化け屋敷で失神して友人に担いで連れ出された女舐めんなよ。
無理無理無理、まじで絶対に無理。
てか、知ってたらフツーこんな所選ばねぇよ。
「もうやだ帰る……おうち帰る……」
「あー…そりゃそうだ、こんなのと二人っきりとかそりゃ嫌ですよね……なんでそんな単純な事も思いつかなかったかな僕の馬鹿………」
「あー、なんかめちゃくちゃ傷つけてしまっている……罪悪感……」
「いや、これに関しちゃ僕が悪いんで…って、」
「「へ?」」
…あれ、なんか声が二重に聞こえる。
「……○○、もしかして今独り言口に出てました……?」
「ああいや、多分僕も出てましたよね……死にたい……」
「あ、また。」
「あ、本当ですね……」
どうも、○○とこの人は似た者同士みたいだ。
そう思った矢先、目隠れ青年は顔を引き攣らせて叫ぶ。
「…ひっ!!!」
「え、どうし…ってなんだ、ただのクモじゃないですか。」
「無理です無理ですまじで無理です勘弁してください家帰る!!!」
あー、これは…うん、ハエトリグモだ。
ゴキ◯リとか食べてくれるし、放置しといても良いヤツ。
「…益虫ですよ?」
「お願いしますじゃあせめて僕に見えない所に持ってって下さい本当に無理です!!!!」
あ、マジで虫ダメなんだこの人。クモは結構カワイイんだがなぁ…
「あー分かりました。 …新聞紙とかって…あります?」
「そこにあります本当に無理なんですすみません!!!」
よいしょ、っと。
森へおかえりー。
まぁ、森じゃないんだが。
なんて呑気に考えながら、クモを新聞紙でヒョイと掴んで窓から捨てる。
でっかくなれよ。キミが虫食ってくれれば、○○がラクできるし。
「ありがとうございます…助かりました……」
「いえ、○○も多分、幽霊出たらああなるので……」
その時は助けて下さいね、[漢字]星月[/漢字][ふりがな]ほしづき[/ふりがな]さん。
そう言って、目隠れ青年の名…と、思われるものを呼ぶ。
外していたらだいぶ恥ずかしいが、入居者の資料に「極度の遠視」とあるし、多分この人で間違いないだろう。
というか、そうじゃなかったら本格的に「誰だお前!?」って話になってしまう。
「え、なんで、僕の、名前…」
「いや、資料ありますから…」
「あ。そりゃ、そうですね…」
良かった合ってたー!!!
「えっと、じゃあ改めて…自己紹介、しときましょうか。
僕の名前は星月 [漢字]流歌[/漢字][ふりがな]るか[/ふりがな]です。
あー…まあ、これから、宜しくお願いします…」
「ありがとうございます。○○も、一応自己紹介しておきますね。
○○は、星海 ●●です。
不束者ですが…よろしく、お願いします。」
うん、もう早速先行き不安だが。
それでも、少なくとも退屈だけはしない日々になりそうだ。
霊感も多分無いし、ココ以外に住めるアテも(家賃的に)無し…
腹括って頑張るしかないな。
そう思って自分を無理やり納得させたコトを、○○は後々まで後悔するハメになるのだが…
今の○○には、そんなコト知る由もなかったのだ。