人外ダンスホール!
「面白い人が来たねェ。」
彼女の声が、耳元で囁くような多重音声に聞こえる。とてもとてもそれが不快で、不思議な感覚。
彼女の髪は常に揺らいでいる。今は、そよ風すらもない無風だというのに。わたしの目の前にいるものは、本物の化け物だ。時折、毛先の赤から雫が垂れては地面に消えていく。コンクリートにシミを作る気配すらもない。つまりは…本当に出会えたのだ。
存在を確認する度に重い空気の変化を感じる。だが、それが人外というものかもしれない。
「えっと…あなたは、誰ですか。」
恐る恐ると、名を訊いてみる。彼女は案外フレンドリーな性格で、にっこりとわたしに笑いかけた。
「私の名前? 柚だよ!」
瞳孔が逆三角形になっており、そこに光はない。彼女は、和風と洋風が混ざったような衣装を身にまとっている。黒を基調とした着物風のドレスに、赤い紐や帯が絡みつくように巻かれていた。袖は長く垂れ、まるで血の滴る布のよう。時折、服の裾からは小さな手や目が覗く。うーん、本物の人外だなぁ。どう見ても。
「柚…さんか。へぇ…わたしは、姿見風化…よろしく…お願いします。」
彼女、いや柚さんはザ・人外という外見をしているが、中々にフレンドリーらしい。人外だからだろうか。
「なんて呼べばいいかな? 風化ちゃん?」
「あ…それでお願いします。」
………出会い頭に殺されるかと思ったけれど、柚さんは襲い掛かる気配はない。いや、わたしを騙して呪い殺そうとしているのではないだろうか。色々と勘繰ってしまうというものは、気疲れする。
「あのぅ、殺さないんです?」
柚さんは驚いたと言わんばかりの表情をして、わたしにこう告げた。
「殺す? なんで?」
え、もしかして…殺そうという意思がないのだろうか。何人も人を呪い殺してきた化け物だというのに、なぜわたしだけ殺さない?気分?想像がつかない。気まぐれなのかなんなのか。
「…え、いや…出会った人間大体殺されてるみたいな話聞いたんで………。」
そう言ってみると、柚さんは「うーん。」と考え込んでから口を開いた。
「あー…確かに、大体は殺してるかも。」
うん、やっぱりそうだよね。知ってた。なんかいつか祓われそうだもんね。しょうがないよね。
だが…それにしてもわたしを生かすという行動の意味が分からない。なぜだ?とりあえず訊いてみよう。
「え、じゃあなんでわたしを生かして…?」
「感覚さ感覚! なんだか…似た雰囲気を感じるんだよねぇ!」
…わたしのあだ名が人外だから?そういう理由で好かれるんですか意味が分からない。雰囲気が似てるってなに?人外と人間が?マジで?まぁ…なろう系っぽいけど、面白いからいいや。
「えっと…つまり、気に入ってくれた…のかな?」
「うん! 面白そうだし、気になるから!」
外見はまさに化け物といったものなのに、内面は無邪気で子供のよう。ギャップが激しいというか、本当に彼女が人を攫ったり祟り殺していたりするというのだろうか。いや…もしかすれば、気まぐれなだけかもしれないな。
「…じゃあ、明日は柚さんの事調べようかな…図書館とかで文献とかあるでしょ。暇だし、興味あるし。」
化け物だから、そんなにないかもしれないが……どうせならば探してみよう。あと、ついでにここに伝わる妖怪とかに関しての文献もあるといいなぁ。
「そっかあ。じゃあね! また明日!」
「はい、柚さん。」
生かしてくれたのはいいが、きっとわたしは飽きたら殺されるんだろうなぁ。そう思いながら、そこを後にした。
彼女の声が、耳元で囁くような多重音声に聞こえる。とてもとてもそれが不快で、不思議な感覚。
彼女の髪は常に揺らいでいる。今は、そよ風すらもない無風だというのに。わたしの目の前にいるものは、本物の化け物だ。時折、毛先の赤から雫が垂れては地面に消えていく。コンクリートにシミを作る気配すらもない。つまりは…本当に出会えたのだ。
存在を確認する度に重い空気の変化を感じる。だが、それが人外というものかもしれない。
「えっと…あなたは、誰ですか。」
恐る恐ると、名を訊いてみる。彼女は案外フレンドリーな性格で、にっこりとわたしに笑いかけた。
「私の名前? 柚だよ!」
瞳孔が逆三角形になっており、そこに光はない。彼女は、和風と洋風が混ざったような衣装を身にまとっている。黒を基調とした着物風のドレスに、赤い紐や帯が絡みつくように巻かれていた。袖は長く垂れ、まるで血の滴る布のよう。時折、服の裾からは小さな手や目が覗く。うーん、本物の人外だなぁ。どう見ても。
「柚…さんか。へぇ…わたしは、姿見風化…よろしく…お願いします。」
彼女、いや柚さんはザ・人外という外見をしているが、中々にフレンドリーらしい。人外だからだろうか。
「なんて呼べばいいかな? 風化ちゃん?」
「あ…それでお願いします。」
………出会い頭に殺されるかと思ったけれど、柚さんは襲い掛かる気配はない。いや、わたしを騙して呪い殺そうとしているのではないだろうか。色々と勘繰ってしまうというものは、気疲れする。
「あのぅ、殺さないんです?」
柚さんは驚いたと言わんばかりの表情をして、わたしにこう告げた。
「殺す? なんで?」
え、もしかして…殺そうという意思がないのだろうか。何人も人を呪い殺してきた化け物だというのに、なぜわたしだけ殺さない?気分?想像がつかない。気まぐれなのかなんなのか。
「…え、いや…出会った人間大体殺されてるみたいな話聞いたんで………。」
そう言ってみると、柚さんは「うーん。」と考え込んでから口を開いた。
「あー…確かに、大体は殺してるかも。」
うん、やっぱりそうだよね。知ってた。なんかいつか祓われそうだもんね。しょうがないよね。
だが…それにしてもわたしを生かすという行動の意味が分からない。なぜだ?とりあえず訊いてみよう。
「え、じゃあなんでわたしを生かして…?」
「感覚さ感覚! なんだか…似た雰囲気を感じるんだよねぇ!」
…わたしのあだ名が人外だから?そういう理由で好かれるんですか意味が分からない。雰囲気が似てるってなに?人外と人間が?マジで?まぁ…なろう系っぽいけど、面白いからいいや。
「えっと…つまり、気に入ってくれた…のかな?」
「うん! 面白そうだし、気になるから!」
外見はまさに化け物といったものなのに、内面は無邪気で子供のよう。ギャップが激しいというか、本当に彼女が人を攫ったり祟り殺していたりするというのだろうか。いや…もしかすれば、気まぐれなだけかもしれないな。
「…じゃあ、明日は柚さんの事調べようかな…図書館とかで文献とかあるでしょ。暇だし、興味あるし。」
化け物だから、そんなにないかもしれないが……どうせならば探してみよう。あと、ついでにここに伝わる妖怪とかに関しての文献もあるといいなぁ。
「そっかあ。じゃあね! また明日!」
「はい、柚さん。」
生かしてくれたのはいいが、きっとわたしは飽きたら殺されるんだろうなぁ。そう思いながら、そこを後にした。