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もう1つの世界で君と

#6

Eintrag


?「と、その前に。自己紹介を済ませましょうか」

フレディ「私はフレディといいます。呼び方はなんでも構いません」
エイダン「(俺らも自己紹介したほうがいいのか?)チラッ」
ヘンドリック「(いやそんな顔されたってわかんねえよ)」
 俺に聞かれても困る、と少し肩をすくめてみせる。
フレディ「ああ、おふたりの名前は存じ上げていますよ」
フレディ「エイダン様、そしてベルツ様。おふたりはアナザーシティへの入国を希望しておられる、ということで間違いありませんね?」
エイダン「…ジッ」
ヘンドリック「…ああ」
 なんだこのジジイ、異様に察しがいい。少し奇妙というか…不気味だ。
エイダン「…入口で俺たちの顔をスキャンしたのか。ドアの上部にセンサーが付いてた」
エイダン「データは残る…1回スキャンしちまえば、いくらでも個人情報に検索をかけれるんだ。そうだろ?」
 へえ、そこまで見てたのか。
 いやなんで見てんだよキショ((
ヘンドリック「(ま、バカじゃねえだけいいけど)」
フレディ「その通りです。…へえ、ベルツ様はもしやドイツ出身ですか?」
ヘンドリック「…」
 顔から個人情報を検索されたか、骨格やら顔立ちやらで弾き出されたか……どちらにせよ、コイツ、さっきから超高性能のAIを使ってるな。インプラントでも埋め込んでんのか?

 完全に、向こうに主導権を握られている。

ヘンドリック「…正解。すっげーな」
エイダン「少し他人事すぎないか?」
ヘンドリック「お前に言われる筋合いねーよ」
エイダン「つくづく君とは仲良くできないね」
ヘンドリック「こっちのセリフだわ腑抜け」
エイダン「はあ…」

ヘンドリック「おい、いつまでここで喋らせる気だ?俺はさっさとアナザーシティに入りたいだよ」
フレディ「そうでしたね。では順番に説明しましょう」
 ジジイ…じゃない、フレディが椅子から立ち、窓へ向かう。そしてブラインドをサッと開ける。


へ,エ「「ッッ…!!」」
フレディ「あなた達はもう既に、アナザーシティにいます」

 現代のテクノロジーではまだ再現不可能なはずの構造物、ホログラム、ありとあらゆる情報が目に飛び込んできた。
 暖かな光に包まれた室内とは対照的な、窓の奥の刺すようなネオンの光がフレディのシルエットをくっきり浮かび上がらせる。
エイダン「…窓に映像を映しているのか?塔が建っていた付近には街なんてなかった」
フレディ「アナザーシティに入りたいなら常識を捨てることをおすすめしますよ」
エイダン「………」
フレディ「そしてもう1つ。この世界には、アナザーシティ以外の街は存在しません」

 受け入れる以外、手がない。

 隣でエイダンも不服そうな顔をしつつ、静かにフレディの言葉を待つ。
フレディ「アナザーシティに先住民はいません。あなたたちと同じように、現実からやってきた[漢字]挑戦者[/漢字][ふりがな]プレイヤー[/ふりがな]が生活しているだけです」
ヘンドリック「外じゃ約100万人って聞いたんだが…ホントか?」
フレディ「さあ?それは自らの目で確かめてください」
ヘンドリック「チッ…」
 汚い言葉を吐く前に、と珈琲で感情を流し込む。舌打ちは間に合わなかったが。

フレディ「招待状にもあったように、あなた達には彼らのようにチームに分かれ、陣取り合戦をしてもらいます」
エイダン「勝利条件は?」
 フレディがブラインドを閉め、また室内が暖かな光で満たされた。そのまま彼は椅子に座る。
フレディ「…アナザーシティはいくつかの地区に分かれています。元々は1つでしたが、時の流れによるものでしょうね」
 答えになっていない。
 …が、今までの話を聞いた感じじゃコイツ[漢字]も[/漢字][ふりがな]・[/ふりがな]物事を遠回しに話すクセがある。
ヘンドリック「(最近、よく思い出すな…)」

フレディ「勝利条件はアナザーシティの全地区、全土を支配することです。陣取り合戦には運営者───つまり、私から与えれた能力を使用します」
ヘンドリック「能力?」
 どーも胡散臭い。今更だが、これ規模のデケェ詐欺じゃねえよな?
フレディ「あなた達にも差し上げます。が、その前に1つ確認を」



フレディ「1度入れば、中で死ぬまで出られない。それでも入国しますか?」

 
 一瞬だけ動揺する。
 ドーラがよく言っていた対話においての極意とやらを、こんな時に思い出す。どんな時でも聞けるだけ聞いておけ、情報は多いほど良い。

ヘンドリック「それは[漢字]自死[/漢字][ふりがな]・・[/ふりがな]もアリか?」
エイダン「………」
フレディ「ええ。条件を満たしていれば」
ヘンドリック「どんな条件だ?」
フレディ「そこまで喋ったら面白くないでしょう?」
ヘンドリック「そうかよ」
 さすがに聞き出せないか。…まあいい、最悪の場合、覚悟を決めりゃ出られる。これが分かっただけマシだ。
ヘンドリック「わかった。俺は入る」
 フレディが満足気に微笑を浮かべた。

フレディ「エイダン様はどうされますか?」
エイダン「…」
ヘンドリック「ハッ、ビビってんの?」
 一瞬口を噤んだエイダンを煽る。
エイダン「誰がだよ」
エイダン「フレディ、俺も入る」


フレディ「では早速、おふたりに登録をしてもらいましょう」

作者メッセージ

《備考》

わざわざ学ばなくてもアンドロイドが発達しているため、大学へ進学する人口はあまり多くない。高校卒業後、ほとんどがICT企業に就職する。
AIでほとんどを代用できるため、失業者やフリーターも多いが生活には困っていない。

┈┈┈┈ ︎✈︎

受験に本腰入れるので多分12月後半から2月後半の投稿は無くなります。
失踪するわけじゃないので、そこはご心配なく。

あと今回の文字数2025文字でした((

2025/12/05 19:35

Ariadne ID:≫ 21wZBxLeuknvc
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