文字サイズ変更

もう1つの世界で君と

#5

Zimmer

 声のした方を咄嗟に見る。
 社長室にありがちな机椅子と、そこに座っている受付嬢のようなアンドロイドがいた。

 しかし、俺が違和感を覚えたのはそれじゃない。まあより正確に言えば、それだけじゃない。

ヘンドリック「なんでって…ここに招待されたんだよ。俺たち2人とも」
AI「…そのような記録はありませんが」
ヘンドリック「そっちのミスじゃないのか?」
AI「有り得ません」
エイダン「なぜ?」
 横から、エイダンが少しキツめに問いただす。
AI「ここの設備は全て最先端の技術を使用しています。取りこぼしなどは一切ありません」
 マジかよ、これじゃアナザーシティに入れねえ…。
ヘンドリック「アンドロイドじゃ話が通じねえな。人間を出せよ」
エイダン「ベッツ、あんま言い過ぎるなよ。AIの自己防衛システムが作動する」
ヘンドリック「チッ…」


 自己防衛システム。アンドロイドやドローンなどのAIが敵意を向けられていると解釈したときに自動で発動されるスリープ機能のようなものだ。今じゃ、相当古い機種じゃない限り全てのAIに搭載されている。


エイダン「今スリープモードに移行されちゃあ困るだろ」
ヘンドリック「ンなの分かってっけど…!」
AI「招待の記録はありません。お帰りください」

 ウィーン

 さっきまであんなに開いてほしかったはずなのに、扉の先を憎々しげに見つめる。
ヘンドリック「(ここまで来たのに…!!)」

?「まあまあ。いいじゃないですか、オリビア」
?「おふたりは、アナザーシティに行きたいのでしょう?もちろん歓迎しますよ」
 
 新たな登場人物は、ブラウンのスーツを優雅に着こなした銀髪の老紳士だった。おまけに金縁のモノクルを着用している。
 いやどっから来たこの人。
?「オリビア、彼らを私の部屋に招いてくれますか?」
AI「わかりました」
 アンドロイドは老紳士の指示を聞き、すぐに宙で手を動かす。すると、殺風景だった部屋が、ヴィンテージスタイルの温かみのある部屋に変わった。
 社長室にありがちな机椅子はそのままで、その後ろにはブラインドが閉まった大きめの窓が設置されている。俺たちの後ろには革のソファが用意されていた。
?「お疲れでしょう、どうぞ座ってください」
 言われるがままに腰を下ろす。
エイダン「…絶対に高級だぞ、このソファ」
ヘンドリック「ボロくてカビの生えた公園のベンチとは大違いだな」
エイダン「それと並べるのも失礼だろ…」

?「紅茶か珈琲はいかがです?珈琲はブラック、おすすめは紅茶です」
ヘンドリック「俺は珈琲で」
エイダン「…じゃ、俺も珈琲でお願いします」
 エイダンが、そこは紅茶にしろよ、という目で俺も見てくる。多分俺に合わせたんだろうな、コイツバカじゃねぇの。
ヘンドリック「(紅茶がいいなら紅茶にしろよ…)」

エイダン「へえ…全自動じゃないのか」
 エイダンの言葉にハッとして俺も老紳士の手元に目を向ける。
 彼はドリッパーにペーパーフィルターをセットし、コーヒー粉を入れている。横にあるポットにはお湯が入っているようだ。随分手際がいい。

 今では自分で何かをするということは極端に減っていて、ほとんどが全自動。最初から最後まで全てAIがやってしまうようになった。
 なぜ、彼はわざわざ自分で作るのだろうか。今の技術があれば、珈琲なんてAIが一瞬で用意できるのに、しかもプロ監修のやつ。
ヘンドリック「…いい香りだ」
エイダン「たしかに。淹れるまでの工程があるからね」
 AIが瞬時に用意するものは、目の前に置かれるまでの音も香りもない。
 いつの間にか、AIがすぐになんでもやってくれることが当たり前になっていて、工程というもの自体がすっかり俺から抜け落ちていた。AIの恐ろしい部分が垣間見えた気がして、少し恐怖を覚える。

?「おふたりは面白い方ですね。[漢字]最初[/漢字][ふりがな]・・[/ふりがな]は紅茶を選ぶ人がほとんどなのに」
 老紳士は、どうぞ、と目の前のローテーブルに湯気のたった珈琲をふたつ置く。
エイダン「最初って?」
 老紳士が温和な笑みを浮かべる。




?「では、アナザーシティについて説明しましょうか」

作者メッセージ

《備考》

ヘンドリック・ベルツ
年齢: 25
出身地: ドイツ
職業: 大学生
入国理由: 人捜し

エイダン
年齢: 25
出身地: アメリカ
職業: フリーター
入国理由: ?

┈┈┈┈ ✈︎

受験生が何やってんだって話です。

2025/08/18 13:12

Ariadne ID:≫ 64Ir.y9eGq4dE
続きを執筆
小説を編集

パスワードをおぼえている場合はご自分で小説を削除してください。(削除方法
自分で削除するのは面倒くさい、忍びない、自分の責任にしたくない、などの理由で削除を依頼するのは絶対におやめください。

→本当に小説のパスワードを忘れてしまった
▼小説の削除を依頼する

小説削除依頼フォーム

お名前 ※必須
Mailアドレス
(任意)

※入力した場合は確認メールが自動返信されます
削除の理由 ※必須

なぜこの小説の削除を依頼したいですか

ご自分で投稿した小説ですか? ※必須

この小説は、あなたが投稿した小説で間違いありませんか?

削除後に復旧はできません※必須

削除したあとに復旧はできません。クレームも受け付けません。

備考欄
※伝言などありましたらこちらへ記入
メールフォーム規約」に同意して送信しますか?※必須
小説のタイトル
小説のURL
/ 5

コメント
[0]

小説通報フォーム

お名前
(任意)
Mailアドレス
(任意)

※入力した場合は確認メールが自動返信されます
違反の種類 ※必須 ※ご自分の小説の削除依頼はできません。
違反内容、削除を依頼したい理由など※必須

盗作されたと思われる作品のタイトル

※できるだけ具体的に記入してください。
特に盗作投稿については、どういった部分が元作品と類似しているかを具体的にお伝え下さい。

《記入例》
・3ページ目の『~~』という箇所に、禁止されているグロ描写が含まれていました
・「〇〇」という作品の盗作と思われます。登場人物の名前を変えているだけで●●というストーリーや××という設定が同じ
…等

備考欄
※伝言などありましたらこちらへ記入
メールフォーム規約」に同意して送信しますか?※必須
小説のタイトル
小説のURL