「ふむ…つまり寧夏には2人の兄がいると。そういうわけですね」
「うむ。今度風蕗后に行ってもらおうか。寧夏の母親の店に」
「母には母を、ですかね？ 父上は本当に面白いことを言いなさる」
輝狼はころころと笑い出した。
帝は笑顔で私と輝狼を交互に見つめている。

「しかし、何故柳島と分かったのだ？」
「料理人には、たくさんの癖が出ます。例えば、餃子は並べ方に大きな特徴が出ます。円形に並べる者、真っ直ぐ一直線に並べる者など、数多おります。私も柳島も花の形に並べますが」
帝は髭を撫でながら、何度も頷き、話を聞いていた。
すると輝狼が手を挙げた。
「花形に並べるなど、何人もいるだろう？」
私は丁寧に答える。殴りたいけども。
「あとは、使う具材、その大きさ、包み方、匂い、味ですね。味見したのはそのためです。[漢字]大蒜[/漢字][ふりがな]ニンニク[/ふりがな]がよくきいていて美味でした。大蒜をよくきかせるのは柳島の癖です」
「ほう…」

しんみりとした空気の中、ぱんと誰かが手を打った。
「さ、皆さん、何か変な空気漂ってますよ？ 嫌なことはやめにして、美味しい夕餉をいただきましょ！ うーん、これ美味しいわ。寧夏もお食べ。輝狼も！」
そう言ったのは、手を合わせた、笑顔の白雷だった。