好きなゲームで遊んでただけなのになんか閉じ込められました!?1
「ハァ、もうなんでだよ! なんで、こっちから干渉できないんだ!? ゲームに入ろうとしてもなんか跳ね返されるし!」
ありとあらゆる方法でゲームに“入り込もう”とする優太だが、何をしても跳ね返されてしまう。いっそ、自分がゲームにログインしようとまでしたのだが、ログイン制限がかかっていた。
うまくいかないことに苛立ちながら、これは完全な異常事態であると把握した優太は、
「待ってろよ翔子、兄ちゃんがぜってぇ助け出してやっからな……!」
瞳に火を灯しながら、また他の方法で、ゲームに“干渉”しようとするのだった。
一方、ゲーム内で。
「──ってわけで、あれがこうなって、今度はこっちが連鎖して崩れるの。そしたら今度は──」
翔子は、広場の方へと戻りながら、現実で苦戦する優太のことなど気にもとめずに、先程、どうしてあそこまで連鎖したのか説明していた。
「へぇ……、翔子って、知識だけはすごいのよねぇ……」
「『だけは』って何よ! 私だって、たまにはやれるんだからね!」
ミカは、知識だけはある翔子のことを、心の底から感心しながら話を聞いていた。彼女は、腕は良いのだが、知識がそこまでないのだ。翔子は見ての通り目立ちたがり。一緒にいるだけで、勝手にゲームの知識を学べる。
「褒めてるんだけどな、でも翔子って、よくミスってるじゃない」
「ウグ、それを言っちゃだめよぉ……」
二人は、そんな茶番をしながらも、今後のことを考えていた。
『現実世界の人と連絡を取れ』
……外の声、音、それら一切が聞こえない。無理に決まってる。そんなとき。
[大文字][中央寄せ][明朝体]ザザザ ザーザーザー ザザザ[/明朝体][/中央寄せ][/大文字]
歩いていた草原に、ザワァッと怪しげな風が吹き抜け、ゲーム世界の色彩が反転した。緑の反対色。紫。
ノイズ、世界の色彩反転。魔物襲撃の合図。
瞬時にそれを察知した二人は、警戒態勢に入る。紫色に変色した、草原の真ん中で背中合わせになる。
「……! まさか、また魔物が出るの!?」
「警戒しよう、どこから出るかわからない!」
それは、フラグとも言えた。決定的な、ピンチフラグ。
警戒する暇もなく、周囲から魔物が次々と湧き出す。どれもこれも、耳障りな音を、鳴き声を発している。
「[明朝体]グギィィィィ!! ギァァァァァ!![/明朝体]」
「[明朝体]ジィ! ジィ! ギギ!? ギキキキキ![/明朝体]」
「[明朝体]ガショ! ガショション! ガション![/明朝体]」
「[明朝体]ジィィィィィ、グギィィィィィィィ[/明朝体]」
あまりにも多すぎる魔物の数に圧倒されたミカは思わず声を上げる。
「何体いるのよ!? こんなのどうすれば!」
たくさんの魔物が押し寄せてきた。数は十体を超える。こんなのどうしようもない……。
「「「「「「「「「ギィィィァァァァァァァァァァ!!」」」」」」」」」
魔物たちが、怒声を上げて一斉に追いかけ始めてきた。翔子とミカは背中合わせから一転、共に息を合わせて走り出す。
「ねぇ! 翔子!! こいつ等、まとめてやっつけられない?!」
翔子のゲーム知識に頼るしかないと判断したミカは、瞬時に話しかける。しかし、翔子は心底焦りながら答えを返してきた。
「無理だよ、こんな数! それに、このあたりはあらかた整地されちゃってるからブロック崩しもできない!」
翔子たちが今いるのは、とても広い草原。地面を崩すこともできるが、連鎖など、洞窟でも生成されていない限り起こり得ない。落とし穴を創る余裕もなく、更に最悪なのが、地面のパズルは基本的に高難易度であること。
「そんな! なんとかならないの!?」
「無理だよっ!! 取り敢えず、広場まで逃げよう! 巻くしかない!」
絶望的な状況。広場にさえたどり着ければ……!
そんな時、
「キャアッ!」
「ミカ!? 大丈夫?!」
何か、段差につまずき、ミカが転んでしまった。
「いたた……ごめん、転んじゃって!」
「いいんだよ! っていうかそれ! 怪我してるじゃん! え、なんで……?」
よくみると、ころんだ衝撃でミカは足首を捻っていた。しかし、ここはゲームの世界。痛み事態は感じるようになっているが、怪我をするはずがない。だってここは電脳世界。意識を没入させているだけ。おかしな状況に、翔子は混乱してしまった。
それがアダとなる。
「わ、私のことはいいから、先に広場に行って!」
「そんな事できるわけ無いじゃん! 一緒に行くよ! あ、あぁ!? 魔物が!!」
翔子はミカに駆け寄ろうと近づいた瞬間。
「キャァァァァ!? 痛い!! やめて!!」
魔物の一体がミカに襲いかかった。魔物が爪らしきもので引っ掻いた跡には赤い線が数本滲んでいた。そして、その傷跡は急激に紫色に変色し、その領域を増やし始めた。
「……!」
突如、ミカは意識を失ったように膝から崩れ落ちる。そのまま地面に倒れてしまった。
親友の異常に気づき、魔物のことがスッポ抜けてしまった翔子は、自分の身を顧みずに、ミカに駆け寄る。
「ミカ!? そんな、なんで! ミカ! ミカ!! ねぇ聞こえてる? 返事してよ! ねぇっ!!」
ミカは何のアクションも起こさない。傷口の、紫の割合が、どんどん増えていく。とうとう腕全体が紫色になり、顔にまで迫るその様子に、翔子はますます焦る。
「そんな、そんな、どうしたらいいの!? ねぇ、助けて! 誰かミカを助けてよ!!」
「「「「「ギキキキキキキキキキキキキィィィィィ!!」」」」」」
だが、ミカも翔子も、魔物に囲まれている。魔物たちの、機械的な、ノイズの様な鳴き声が、不協和音のように耳に流れ込み、翔子の不安感を煽った。
「ひぃっ! ……あ……や……ごめんなさい、ごめんなさい……」
魔物に囲まれたことを思い出した翔子は、ただ怯えて、意味もなく謝り続けた。成す術がない。
そんなとき、
「あぁ……うっざ」
「へ……?」
突然、誰かが目の前に立ちはだかった。
「だ、れ……?」
ありとあらゆる方法でゲームに“入り込もう”とする優太だが、何をしても跳ね返されてしまう。いっそ、自分がゲームにログインしようとまでしたのだが、ログイン制限がかかっていた。
うまくいかないことに苛立ちながら、これは完全な異常事態であると把握した優太は、
「待ってろよ翔子、兄ちゃんがぜってぇ助け出してやっからな……!」
瞳に火を灯しながら、また他の方法で、ゲームに“干渉”しようとするのだった。
一方、ゲーム内で。
「──ってわけで、あれがこうなって、今度はこっちが連鎖して崩れるの。そしたら今度は──」
翔子は、広場の方へと戻りながら、現実で苦戦する優太のことなど気にもとめずに、先程、どうしてあそこまで連鎖したのか説明していた。
「へぇ……、翔子って、知識だけはすごいのよねぇ……」
「『だけは』って何よ! 私だって、たまにはやれるんだからね!」
ミカは、知識だけはある翔子のことを、心の底から感心しながら話を聞いていた。彼女は、腕は良いのだが、知識がそこまでないのだ。翔子は見ての通り目立ちたがり。一緒にいるだけで、勝手にゲームの知識を学べる。
「褒めてるんだけどな、でも翔子って、よくミスってるじゃない」
「ウグ、それを言っちゃだめよぉ……」
二人は、そんな茶番をしながらも、今後のことを考えていた。
『現実世界の人と連絡を取れ』
……外の声、音、それら一切が聞こえない。無理に決まってる。そんなとき。
[大文字][中央寄せ][明朝体]ザザザ ザーザーザー ザザザ[/明朝体][/中央寄せ][/大文字]
歩いていた草原に、ザワァッと怪しげな風が吹き抜け、ゲーム世界の色彩が反転した。緑の反対色。紫。
ノイズ、世界の色彩反転。魔物襲撃の合図。
瞬時にそれを察知した二人は、警戒態勢に入る。紫色に変色した、草原の真ん中で背中合わせになる。
「……! まさか、また魔物が出るの!?」
「警戒しよう、どこから出るかわからない!」
それは、フラグとも言えた。決定的な、ピンチフラグ。
警戒する暇もなく、周囲から魔物が次々と湧き出す。どれもこれも、耳障りな音を、鳴き声を発している。
「[明朝体]グギィィィィ!! ギァァァァァ!![/明朝体]」
「[明朝体]ジィ! ジィ! ギギ!? ギキキキキ![/明朝体]」
「[明朝体]ガショ! ガショション! ガション![/明朝体]」
「[明朝体]ジィィィィィ、グギィィィィィィィ[/明朝体]」
あまりにも多すぎる魔物の数に圧倒されたミカは思わず声を上げる。
「何体いるのよ!? こんなのどうすれば!」
たくさんの魔物が押し寄せてきた。数は十体を超える。こんなのどうしようもない……。
「「「「「「「「「ギィィィァァァァァァァァァァ!!」」」」」」」」」
魔物たちが、怒声を上げて一斉に追いかけ始めてきた。翔子とミカは背中合わせから一転、共に息を合わせて走り出す。
「ねぇ! 翔子!! こいつ等、まとめてやっつけられない?!」
翔子のゲーム知識に頼るしかないと判断したミカは、瞬時に話しかける。しかし、翔子は心底焦りながら答えを返してきた。
「無理だよ、こんな数! それに、このあたりはあらかた整地されちゃってるからブロック崩しもできない!」
翔子たちが今いるのは、とても広い草原。地面を崩すこともできるが、連鎖など、洞窟でも生成されていない限り起こり得ない。落とし穴を創る余裕もなく、更に最悪なのが、地面のパズルは基本的に高難易度であること。
「そんな! なんとかならないの!?」
「無理だよっ!! 取り敢えず、広場まで逃げよう! 巻くしかない!」
絶望的な状況。広場にさえたどり着ければ……!
そんな時、
「キャアッ!」
「ミカ!? 大丈夫?!」
何か、段差につまずき、ミカが転んでしまった。
「いたた……ごめん、転んじゃって!」
「いいんだよ! っていうかそれ! 怪我してるじゃん! え、なんで……?」
よくみると、ころんだ衝撃でミカは足首を捻っていた。しかし、ここはゲームの世界。痛み事態は感じるようになっているが、怪我をするはずがない。だってここは電脳世界。意識を没入させているだけ。おかしな状況に、翔子は混乱してしまった。
それがアダとなる。
「わ、私のことはいいから、先に広場に行って!」
「そんな事できるわけ無いじゃん! 一緒に行くよ! あ、あぁ!? 魔物が!!」
翔子はミカに駆け寄ろうと近づいた瞬間。
「キャァァァァ!? 痛い!! やめて!!」
魔物の一体がミカに襲いかかった。魔物が爪らしきもので引っ掻いた跡には赤い線が数本滲んでいた。そして、その傷跡は急激に紫色に変色し、その領域を増やし始めた。
「……!」
突如、ミカは意識を失ったように膝から崩れ落ちる。そのまま地面に倒れてしまった。
親友の異常に気づき、魔物のことがスッポ抜けてしまった翔子は、自分の身を顧みずに、ミカに駆け寄る。
「ミカ!? そんな、なんで! ミカ! ミカ!! ねぇ聞こえてる? 返事してよ! ねぇっ!!」
ミカは何のアクションも起こさない。傷口の、紫の割合が、どんどん増えていく。とうとう腕全体が紫色になり、顔にまで迫るその様子に、翔子はますます焦る。
「そんな、そんな、どうしたらいいの!? ねぇ、助けて! 誰かミカを助けてよ!!」
「「「「「ギキキキキキキキキキキキキィィィィィ!!」」」」」」
だが、ミカも翔子も、魔物に囲まれている。魔物たちの、機械的な、ノイズの様な鳴き声が、不協和音のように耳に流れ込み、翔子の不安感を煽った。
「ひぃっ! ……あ……や……ごめんなさい、ごめんなさい……」
魔物に囲まれたことを思い出した翔子は、ただ怯えて、意味もなく謝り続けた。成す術がない。
そんなとき、
「あぁ……うっざ」
「へ……?」
突然、誰かが目の前に立ちはだかった。
「だ、れ……?」