皆が浮かれる盛大な祭り。
村の御子の病気が治った祝い。
その明るい雰囲気とは打って変わって
隅でうつむき座り込んでいる人物に
話しかけにいく人影が見える。
｢ねぇねぇそこの君～何で君だけ一人でいるの？
[小文字]…この村にも陰キャがいたんだ…[/小文字]｣
ゲン。コーラ欲しさに司王国を裏切ったコウモリ男。
しかし、問題のその者は座り込んだままその問いには答えない。
｢無視?!ドイヒ～！｣
と大袈裟に驚いた。
その次の瞬間動きを止める。
改めて見つめて気づくことがあったようだ。
(…あれ？何か他の村人ちゃん達と服の雰囲気が違う…)
それはほんの少しの沈黙。
しかし急に自分に反応しなくなったのを不思議に思ったのか
座り込んだその人物の目は確実にゲンに視線を向けた。
フードのようなものをつけているせいで顔は見えなかったが。
｢…もしかして貴方はあさぎりゲンさんですか？
弟が貴方のマジック本を読んでいるのを見たことがあります。｣
当たり前のように放ったことばだったので理解するのに数秒かかった。
｢…は？何で村人が知って…｣
その言葉でバトルチームが異変に気づく。
ゲンに初めて会ったときのように、
三方向から囲み槍を突きつける。
｢…おっと…何故俺は今警戒されているのでしょうか。｣
｢ハ！まじっくぼん？といったものは、私たちは知らないな。
なのにゲンが知っていると言うことは、現代人と言うことなのだろう？｣
今の声はコハク。千空の言葉を借りるなら…メスゴリラ又はメスライオンだ。
｢…よく分からないことばかりですね…戦うつもりは無かったんですからね？｣
刹那、先ほどまで微動だにしてなかったフードの者は体を低く傾けた。
そこからは早かった。銀浪の槍を奪い、持ち手で金浪の腹を一突き、
そしてコハクの首に刃を突きつける。
｢はい、クリア。｣
｢……！｣
バトルチームの三人は一瞬の出来事に目を見開き硬直している。
いつの間にか、回りには村人達に囲まれていた。
｢あ、あのコハクがやられるなんて！｣
｢てかめちゃくちゃ早かった！｣
｢どどどとどうやったんだ?!｣
感嘆と驚きの声が上がる。
｢………うるせ｣
フードの者は軽く耳をふさいで呟いた。
そこに白菜頭の人間が騒ぎを聞き付けてやって来た。
｢あ“ーなに騒いでんだよ｣
千空。この[漢字]石の世界[/漢字][ふりがな]ストーンワールド[/ふりがな]にサルファ剤を作った天才高校生。
フードの者は彼の声が聞こえた瞬間すぐに振り向いた。
｢おあ、千空。この人たちどっかやって欲しいんだが。｣
彼は何気なく返事をした。
ただ周りが邪魔だから何とかしてほしかっただけなのであろう。
だがそれは興奮と言う火に薪をくべただけだった。
｢村長の…し、知り合いなのか?!｣
｢つ、つか、フード野郎言い方理不尽じゃねぇのぉ！｣
村人達がざわめき出す。
｢…はｯ…？その声…いや、他の県にいったはず…何でここに…！｣
さすがの千空も取り乱している。
｢ちょちょ！千空ちゃん落ち着いて！てか状況が飲み込めないんだけど!？
とにかく、フードの子！誰？千空ちゃんの知り合い…何だよね？｣
ゲンはいきなり会話に割り込んできてフードの者に問いを投げる。
｢確かに、そういえば紹介が遅れましたね…｣
少し返答を溜めてから、衝撃的なことを言いはなった。
｢俺と千空は兄弟なんですよね～。あ、こいつが弟ですからね。｣
そう言いながら千空を指差す。
｢え｣
｢えええええぇぇぇぇ？！｣