伊達様の草の者 〜姫の巻〜
1581年。
15才になった伊達政宗は、初陣を果たした。
相馬氏との戦いで、見事勝ち戦をし、伊達家の中で、その実力は評価されていった。
しかし、相馬氏との戦いをよく思っていない者がいた。
妻、愛姫である。
「相馬は私の母上の実家。これほど悲しいものはないわ…」
「姫さま…」
「でも大丈夫。政宗様は優しい方だから…」
愛姫は目を伏せて言った。
すると、外から女の声が聞こえた。
「愛さま。ご加減いかがですか?」
声の主は喜多だった。
「喜多、入って頂戴。私、ものすごくあなたに会いたいの」
「ありがたき幸せです! では、失礼します」
喜多はバッと三つ指をつき、頭を下げた。
そして、丁寧に襖を開け、ピシャリと閉めた。
「愛さま、愛さま。『独眼竜』って、知ってますか?」
「『独眼竜』? 知らないわ。一体なんのこと?」
愛姫がかくんと首を傾げると、喜多がコホンと咳払いをして、話し始めた。
「『独眼竜』とは、若様のことを言います」
「若様…? 代々の若様のこと?」
「いえ、今の若様のことです。ほら、伊達政宗様ですよ! あのお方は、片目にもかかわらず、ご立派に初陣を果たされて…[漢字]虎哉宗乙[/漢字][ふりがな]こさいそういつ[/ふりがな]様は正しかった」
「こさい…さま?」
愛姫がまたもや、かくんと首を傾げる。
すると、天井から、
「虎哉宗乙様っ!!」
という女の声が聞こえた。
「!? 誰?」
愛姫は、きょろきょろと辺りを見回す。
喜多は額に手を当てて、ため息をついて、声を張った。
「トミ! 休んでいて、と言いましたよね?」
「忍びは、常に高貴な方をお守り致します」
「えっと…あなたは誰?」
言い争うトミと喜多に、愛が訊く。
「私は草の者の大崎 トミです!」
「こら!」
「それで…こさいそういつって誰ですか?」
「政宗様の教育係ですよ」
「はあ、虎哉宗乙様はこの子を拾ったの」
「それで、虎哉宗乙様は、政宗様を独眼竜と言いましたよね」
「ええ、そうよ」
愛は、ほー、という顔をして耳を傾けていた。
「あのお方は、竜なのですね」
15才になった伊達政宗は、初陣を果たした。
相馬氏との戦いで、見事勝ち戦をし、伊達家の中で、その実力は評価されていった。
しかし、相馬氏との戦いをよく思っていない者がいた。
妻、愛姫である。
「相馬は私の母上の実家。これほど悲しいものはないわ…」
「姫さま…」
「でも大丈夫。政宗様は優しい方だから…」
愛姫は目を伏せて言った。
すると、外から女の声が聞こえた。
「愛さま。ご加減いかがですか?」
声の主は喜多だった。
「喜多、入って頂戴。私、ものすごくあなたに会いたいの」
「ありがたき幸せです! では、失礼します」
喜多はバッと三つ指をつき、頭を下げた。
そして、丁寧に襖を開け、ピシャリと閉めた。
「愛さま、愛さま。『独眼竜』って、知ってますか?」
「『独眼竜』? 知らないわ。一体なんのこと?」
愛姫がかくんと首を傾げると、喜多がコホンと咳払いをして、話し始めた。
「『独眼竜』とは、若様のことを言います」
「若様…? 代々の若様のこと?」
「いえ、今の若様のことです。ほら、伊達政宗様ですよ! あのお方は、片目にもかかわらず、ご立派に初陣を果たされて…[漢字]虎哉宗乙[/漢字][ふりがな]こさいそういつ[/ふりがな]様は正しかった」
「こさい…さま?」
愛姫がまたもや、かくんと首を傾げる。
すると、天井から、
「虎哉宗乙様っ!!」
という女の声が聞こえた。
「!? 誰?」
愛姫は、きょろきょろと辺りを見回す。
喜多は額に手を当てて、ため息をついて、声を張った。
「トミ! 休んでいて、と言いましたよね?」
「忍びは、常に高貴な方をお守り致します」
「えっと…あなたは誰?」
言い争うトミと喜多に、愛が訊く。
「私は草の者の大崎 トミです!」
「こら!」
「それで…こさいそういつって誰ですか?」
「政宗様の教育係ですよ」
「はあ、虎哉宗乙様はこの子を拾ったの」
「それで、虎哉宗乙様は、政宗様を独眼竜と言いましたよね」
「ええ、そうよ」
愛は、ほー、という顔をして耳を傾けていた。
「あのお方は、竜なのですね」