伊達様の草の者 〜姫の巻〜
政宗は無事、愛姫と祝言を挙げた。
もちろん、トミたち忍者は忍者なので、祝言を見ることは出来なかった。
なので、長く続く城の廊下を歩いていると───。
「ひいさんには悪いなぁ」
「いいや、花嫁である以上、その覚悟は出来ているはず。
田村家のため、耐えてもらうしかない」
───襖1枚向こうに、裏切り者がいる。
トミの勘がそう叫んでいる。
その言葉に、嫌な予感がした。
嫌な予感がしたので、すたこらさっさと逃げたいところだが、逃げようとした時に、嫌な予感は的中した。
[大文字][明朝体]「政宗には消えてもらおう」[/明朝体][/大文字]
トミはどっと汗をかいた。
暑い夏の汗ではなく、腹を壊した時のような、悪寒がした時の『冷や汗』だ。
(今、私はどうするべき? 勝手に処置すべき? それとも政宗様に讒言すべき? いいえ、でも、私はそこまで偉い人間ではない。ただの農民であり、忍者だ)
そして、トミは冷静になろうと考え、その夜は寝た。
───翌朝───
「喜多さま、いらっしゃいますか」
トミは、片倉小十郎の姉、片倉喜多の部屋に来た。
昨日の出来事を知らせるために。
「トミね。いらっしゃいな」
「恐れ入ります」
「良いのよ、別に。ところで、どうしたのかしら?」
「実は」
トミは語った。
昨日の夜、田村家の従者が謀反を企てていると。
そして、姫を馬鹿にしていると。
話していると、だんだん、花を活けている喜多の顔が引きつっていった。
「それは…、うちにとっても田村にとっても大変なことだわ…」
「はい…」
「ええっと、昨晩実行されなかったってことは、いつ起こるか分からないわね。小十郎に報告しておくわ」
喜多は賢い。喜多が男であれば、なんぼか良かったのにとよく思ってしまう。
「それで…私は? 何をすれば?」
仕事を欲しがるトミの肩に、とんと手を置いて、
「あなたはこれで充分。問題事があったら呼ぶわ。それまではゆっくり休んで頂戴」
とにっこりと微笑んだ。
もちろん、トミたち忍者は忍者なので、祝言を見ることは出来なかった。
なので、長く続く城の廊下を歩いていると───。
「ひいさんには悪いなぁ」
「いいや、花嫁である以上、その覚悟は出来ているはず。
田村家のため、耐えてもらうしかない」
───襖1枚向こうに、裏切り者がいる。
トミの勘がそう叫んでいる。
その言葉に、嫌な予感がした。
嫌な予感がしたので、すたこらさっさと逃げたいところだが、逃げようとした時に、嫌な予感は的中した。
[大文字][明朝体]「政宗には消えてもらおう」[/明朝体][/大文字]
トミはどっと汗をかいた。
暑い夏の汗ではなく、腹を壊した時のような、悪寒がした時の『冷や汗』だ。
(今、私はどうするべき? 勝手に処置すべき? それとも政宗様に讒言すべき? いいえ、でも、私はそこまで偉い人間ではない。ただの農民であり、忍者だ)
そして、トミは冷静になろうと考え、その夜は寝た。
───翌朝───
「喜多さま、いらっしゃいますか」
トミは、片倉小十郎の姉、片倉喜多の部屋に来た。
昨日の出来事を知らせるために。
「トミね。いらっしゃいな」
「恐れ入ります」
「良いのよ、別に。ところで、どうしたのかしら?」
「実は」
トミは語った。
昨日の夜、田村家の従者が謀反を企てていると。
そして、姫を馬鹿にしていると。
話していると、だんだん、花を活けている喜多の顔が引きつっていった。
「それは…、うちにとっても田村にとっても大変なことだわ…」
「はい…」
「ええっと、昨晩実行されなかったってことは、いつ起こるか分からないわね。小十郎に報告しておくわ」
喜多は賢い。喜多が男であれば、なんぼか良かったのにとよく思ってしまう。
「それで…私は? 何をすれば?」
仕事を欲しがるトミの肩に、とんと手を置いて、
「あなたはこれで充分。問題事があったら呼ぶわ。それまではゆっくり休んで頂戴」
とにっこりと微笑んだ。