伊達様の草の者 〜姫の巻〜
1579年。冬。
ついに、任務を遂行する日がやって来た。
「ふふっ、緊張しますねぇ。震えてますよぅ、トミさん」
「まあ、無理もないだろう…って、震えてんのは寒さのせいだろ!?」
「やだも〜、兵蔵さま! 冗談ですってばぁ」
トミと共に任務を遂行するのは、栗原兵蔵とその妻、絲だ。絲は身軽でよく動き回る。兵蔵は力が正義タイプだ。
「いえ…ちゃんと私だって緊張しますよ? 特に、政宗様の妻となる方ですから」
「ちゃんとって…」
「まあいいじゃないですかぁ。その心構えよし!!」
「ありがとうございます、絲さん」
「トミさんは年下ですので、何かあれば、私が先に倒れます。そこはためらわないでくださいね」
絲は片目をぱちっとつむって、微笑んだ。
しかし、同時に、悲しみのまなざしを向けられたような気がした。
「絲さん? 私は農民です。私より姫を守らねば」
「姫さまも大事ですよぅ。でも私、トミさんに長生きしてもらいたいんですぅ」
何か、死ぬ前提で話しているような感じだ。
兵蔵は、トミと絲を見て、はあとため息をついた。
「絲、それくらいにして。二人とも、クナイと縄、刀、マキビシは持ったか?」
「はい! 持ちました!」
ビシッと敬礼する絲を横目で見て、トミは荷物を確認した。
「さあっ、行きますよお!!!」
三春のお姫さまは、[漢字]愛姫[/漢字][ふりがな]めごひめ[/ふりがな]さまというらしい。
東北の方言で、『可愛い』を『めんこい』と言う。
そこから名をとっているそうだ。
「見つからないようにしてくださいよ、絲さん」
「分かってますって〜」
軽く流す絲。
トミはため息をついて、絲の手を握った。
その時。
花嫁の輿の窓が開いた。
突然すぎて、二人ともわたわたしながら木に隠れる。
「おさき。何か騒がしいような気がするのだけれど…何もない?」
「ええ、私も何か目線を感じるような気も…」
花嫁こと愛姫が外の侍女に訊く。
「やはり、私は、狙われているの?」
「滅相もございません! 確かに、姫さまのお美しさは評判ですが、きっと伊達を敵に回すようなことはしないと思います」
「そういうものかしら…」
そうして、三春を離れた田村家の愛姫さまは、ぐるっと遠回りして、ついに、伊達の城へと入って行った。
ついに、任務を遂行する日がやって来た。
「ふふっ、緊張しますねぇ。震えてますよぅ、トミさん」
「まあ、無理もないだろう…って、震えてんのは寒さのせいだろ!?」
「やだも〜、兵蔵さま! 冗談ですってばぁ」
トミと共に任務を遂行するのは、栗原兵蔵とその妻、絲だ。絲は身軽でよく動き回る。兵蔵は力が正義タイプだ。
「いえ…ちゃんと私だって緊張しますよ? 特に、政宗様の妻となる方ですから」
「ちゃんとって…」
「まあいいじゃないですかぁ。その心構えよし!!」
「ありがとうございます、絲さん」
「トミさんは年下ですので、何かあれば、私が先に倒れます。そこはためらわないでくださいね」
絲は片目をぱちっとつむって、微笑んだ。
しかし、同時に、悲しみのまなざしを向けられたような気がした。
「絲さん? 私は農民です。私より姫を守らねば」
「姫さまも大事ですよぅ。でも私、トミさんに長生きしてもらいたいんですぅ」
何か、死ぬ前提で話しているような感じだ。
兵蔵は、トミと絲を見て、はあとため息をついた。
「絲、それくらいにして。二人とも、クナイと縄、刀、マキビシは持ったか?」
「はい! 持ちました!」
ビシッと敬礼する絲を横目で見て、トミは荷物を確認した。
「さあっ、行きますよお!!!」
三春のお姫さまは、[漢字]愛姫[/漢字][ふりがな]めごひめ[/ふりがな]さまというらしい。
東北の方言で、『可愛い』を『めんこい』と言う。
そこから名をとっているそうだ。
「見つからないようにしてくださいよ、絲さん」
「分かってますって〜」
軽く流す絲。
トミはため息をついて、絲の手を握った。
その時。
花嫁の輿の窓が開いた。
突然すぎて、二人ともわたわたしながら木に隠れる。
「おさき。何か騒がしいような気がするのだけれど…何もない?」
「ええ、私も何か目線を感じるような気も…」
花嫁こと愛姫が外の侍女に訊く。
「やはり、私は、狙われているの?」
「滅相もございません! 確かに、姫さまのお美しさは評判ですが、きっと伊達を敵に回すようなことはしないと思います」
「そういうものかしら…」
そうして、三春を離れた田村家の愛姫さまは、ぐるっと遠回りして、ついに、伊達の城へと入って行った。