修学旅行もいよいよ最終日。魔王城のツアーを終えたツキミたちは、最後の自由時間を楽しんでいた。

「いや〜、ここまで来て、なんでまだ魔王城の中を歩き回ってんだよ…」

「でも、楽しかったよ〜！寝るだけの試練とか、今までで一番ゆるい修学旅行だったな！」

　ツキミは少し疲れた顔をして呟く。確かに、何もかもがゆるかった。でも、そのおかげで、みんな思いのほかリラックスできて、今までのストレスも少しは解消できた気がする。

「そうだね、でもさ、最後のイベントが楽しみだよね！魔王様のサプライズイベントとか！」

　イーラがワクワクしながら言った。しかし、ツキミは何となく不安な気持ちも抱えていた。

「サプライズイベントか…また変なことが起こらなきゃいいけど…」

「またって、何かあったっけ？」

　ルードが首をかしげる。そう、確かにこれまでの修学旅行で大きな事件は一切起きていなかった。それにしても、何となく胸騒ぎがする。

「みんな、集合〜！」

　その時、突然、魔王様の声が響いた。ツキミたちは一斉に集まり、魔王様の元に向かう。

「さて、今日は修学旅行の最終イベントだよ！これが、君たちが本当に勇者になれるかどうかを試す大事なイベントなんだ！」

「おおっ、ついに来たか！」

「本当に試練が来るのか！？」

　みんなが興奮気味に話していると、魔王様がにっこりと笑って言った。

「それじゃあ、イベントの内容を発表するね！今日はみんなで…魔王城の大掃除をしてもらうよ！」

「えっ！？」

「掃除！？最終イベントが掃除ってお前…」

「大掃除か…まぁ、たしかに魔王城も広いし、掃除は必要だろうけど…」

　生徒たちが驚きの声を上げる中、ツキミは心の中でツッコミを入れた。最終イベントが掃除とは、さすが魔王様、想定の斜め上を行く。

「掃除をしっかり終わらせたら、君たちは勇者として認められるよ！さぁ、行こう！」

　そして、ツキミたちは掃除道具を渡され、魔王城の各所を掃除し始めた。

「えっと、これをどう使うんだっけ…」

「ツッキー、これで魔法掃除するよ〜！」

　イーラが魔法で掃除をしながら楽しげに言ったが、魔法の力で掃除するにも、なんだか微妙に力が入っていない様子。

「掃除ぐらいは、普通にやれよ…」

　ツキミは自分の掃除をしていると、ふと何かが目に留まった。

「これ、何かのお札？」

　床に散らばっていた古びた紙を拾い上げると、そこには不気味な文字が書かれていた。

「なんだ、これ…魔王の古文書…？」

　ツキミはその文書を見つめながら、奇妙な予感を感じる。

　その時、突然、魔王様が大声で叫んだ。

「みんな！大変だ！魔王城の最深部にある封印が解除されてしまった！」

「えっ！？封印！？解除！？それってどういうこと！？」

「もしかして、封印されていた最強の魔物が！？」

「まさか、また昔の英雄が封印した魔王の子孫か！？」

　ツキミたちは一気に慌てて走り出す。

「みんな、行くぞ！」

　魔王城の最深部に到着したツキミたちが見たものは——

　なんと、掃除用具入れのドアが開いていた。

「えっ、そこ！？」

「まさか、掃除用具入れが最強の封印場所だったのか！？」

　ドアの中には、無造作に並べられた掃除用具が雑然と置かれている。だが、その奥からは、不気味な音が響いてきた。

「なんだ、これ…」

「まさか…！」

　ツキミたちは恐る恐る掃除用具入れに近づいていく。すると、その中から、何かが動き出す音が聞こえてきた。

「ひぃっ！？」

「まさか、掃除用具入れから魔物が…？」

　だが、扉が完全に開いた瞬間——

「ぐぅ〜…おっと、すみません、寝坊しました！」

　そこに現れたのは、なんと、巨大なホウキと、雑巾を持ったモンスターだった。

「…おい、こいつら、掃除用具じゃねえか！」

【📣クロくんアナウンス：「勇者たち、魔王城最強の魔物を掃除用具と共に撃退！」】
【📣次回、最終回！？】