数日後、ついに「修学旅行」の日がやってきた。

　学校の掲示板には、こんな張り紙があった——

『修学旅行先：魔王城（観光ツアー）』
「魔王さまによる観光案内つき！」

「修学旅行って、普通どこに行くんだよ！？魔王城ってお前！！」

「ツッキー、魔王城って観光地だよ！ふっふっふー！」

　イーラが得意げに言う。

「いや、ふっふっふじゃなくて……観光！？魔王城が観光地ってどういうことだ！？」

「まぁ、魔王様も最近は観光業に力を入れてるみたいだよ〜」

　イーラが言うと、全員が同時に振り向いた。

「え？」

「いや、まさか魔王様が観光案内するわけじゃないだろう？」

　それを聞いた瞬間、ツキミはふと考え込んだ。

「え？でも魔王って昔英雄だったんじゃ……？」

「いや、その話はちょっと違うんだよ〜。魔王は……ちょっと変わり者っていうか、最近観光業に力を入れてるらしいんだよね。ここでも経済を回してるってことだよ！」

　そして、ついに修学旅行当日。

　バスに乗り込み、王国を離れて山道を進む。遠くに見えてきたのは、どこか不気味な大きな城。

「……あれが、魔王城……」

　ツキミが言うと、周りの生徒たちがちょっとビビり気味に視線を向ける。

「うーん、見た目は……ちょっと恐ろしそう……」
「怖くないよ！だって、魔王様は本当に観光業に力を入れてるんだから！最近の魔王様は本当に接客業が得意なんだよ！」

「接客業ってなんだよ！？」

　バスが城の門前に到着すると、そこには——

「いらっしゃいませ！！ようこそ、魔王城へ！私が、魔王の接客担当・デイモスです！本日はどうぞ、観光ツアーをごゆっくりお楽しみください！」

　おおおおお！？！？魔王の配下が、すごいフレンドリーだ！！！

「ちょっと待って、魔王って……こんな感じの人たちが接客してるの！？もっと恐ろしい感じじゃないの！？」

「ツッキー、これは思ってたのと違うぞぉ〜」

　ツアーが始まると、最初に案内されたのは「魔王の寝室」。

「えっ！？寝室！？どんな恐ろしいものが……」

　だが、魔王の寝室は予想に反してめっちゃ普通だった。

「ほら、これが魔王様が寝るベッドです。毎晩寝ている場所ですけど、実は毎朝起きるのが結構大変なんです。最近は起きるのも一苦労で……」

「そりゃ、魔王も寝坊することぐらいあるだろうな……」

　その後、ツアーは進んでいき、次に案内されたのは「魔王の趣味部屋」。

「え！？魔王の趣味って何！？魔王って、趣味あるの！？」

「ええ、魔王様は意外にインドア派で、読書や絵を描いたりするのが好きなんですよ〜。ちなみに、最近ハマっているのは、パン作りなんです」

「パン！？魔王がパン作り！？お前、それ本当かよ！？」

「もちろん！実際、魔王様が焼いたパンは結構美味しくて、王国の中でも評判なんですよ！」

「信じられねぇ！！」

　その後も次々と魔王城の意外な一面が明かされる中、ツキミたちは完全に驚きの連続だ。

「これが魔王城のダイニングルームです。毎朝、魔王様が食べる朝食が並んでいますが、最近はソーセージの味にこだわっているみたいです」

「魔王、食べ物にこだわってるの！？」

　最後に案内されたのは、魔王様本人の部屋。

「ようこそ、魔王様の間へ。どうぞ、お好きなだけ見てください。」

　部屋の中には、背の高い椅子と豪華な王座が置かれている。

「……あれ？どこにも魔王がいないんだけど」

「ええ……魔王様は今、ちょっとお昼寝中なんです」

「魔王、昼寝してんの！？」

【📣クロくんアナウンス：「魔王様、昼寝中。とても平和です」】