ツキミたちは、魔王城の最深部で与えられた試練に挑んでいた。空間を変える魔法を使うというシンプルな試練に対し、ツキミはどこかで聞いたことがあるバナナの皮が現れたことに驚き、困惑していた。

「またバナナの皮かよ…。これ、どうしろってんだ？」

　ツキミは目の前に転がるバナナの皮をじっと見つめた。魔王城の試練だというのに、なんでこんなものが？

「まさか、これで魔法を使うってのか？」

　ツキミがバナナの皮を拾い上げようとすると、バナナの皮が一瞬で輝きを放ち、周囲の空間が歪み始めた。

「うおおおおお！？」

「えっ！？これが試練！？」

　突然、空間が波打ち始め、まるで異次元に引き込まれそうな感覚に襲われる。ツキミは思わず足元をふらつかせ、バナナの皮を握りしめた。

「ま、待ってくれ！バナナの皮で空間を変えるとか、どういう理屈だよ！」

　その時、突然、全員が目の前に立った異空間の扉に吸い込まれるように引き寄せられた。

「うわあああああ！！！」

　ツキミたちは次々とその異空間に吸い込まれていき、目を開けた時には、まるで異世界のような場所に到着していた。

異世界のような場所
　目の前には、巨大なバナナの木がそびえ立っていた。その木は異常なほど大きく、空を覆い尽くすように枝を広げている。

「これ、試練の一部なのか？」

「まさか…ここが試験会場？」

　周囲は明るい空に、輝くバナナがたくさん実っている、幻想的な景色だったが、その中にいくつかの危険な影がひっそりと動いていた。

「なんか不穏な空気だな…」

　ツキミが警戒しながら歩き出すと、突然、何かが飛び出してきた。

「うわっ！！」

　それは、バナナモンスターだ。巨大なバナナのような姿をしており、目の前でバナナの皮を投げつけてくる。

「バナナモンスター！？こんなもんまで試練に使うのかよ！」

　ルードが剣を抜いて構えたが、バナナモンスターは動きが速く、次々とツキミたちにバナナの皮を投げつけてくる。

「何だよこいつら、完全にバナナをテーマにしたモンスターじゃねぇか！」

「バナナの皮が飛んでくるから気をつけて！」

「お前が気をつけろよ！」

　ツキミが叫ぶと、イーラが魔法でバナナモンスターを弾き飛ばした。しかし、バナナモンスターたちは次々と新たに現れる。

「おい、これ、どうすんだ！？」

「多分、これを倒せば試練クリアなんだろうけど、バナナモンスターの数が多すぎる！」

「でも、試練をクリアしないと卒業できないぞ！」

　ツキミが焦っていると、突然、ネムが寝袋を取り出して、何も気にせずにそのまま寝転んだ。

「お前、何してんだ！？」

「……寝てみたら、何か変わるかもしれないよ…zzz」

「寝てる場合じゃない！！」

　その時、ツキミの目の前で巨大なバナナの木が揺れ始め、空間全体がゆっくりと歪み始めた。

「おい、何だよこれ…！」

「ツキミ、あれだ！！」

　イーラが叫んだ。その先には、バナナの木の根元に巨大な扉が現れていた。その扉が開きそうな気配を感じたツキミは、バナナモンスターたちを振り払いながら扉に向かって走り出した。

「行け、ツキミ！」

「待て、ツキミ！その扉が試練のカギかもしれないぞ！」

　ツキミはその扉に近づいて行き、手を伸ばした。すると、扉が静かに開き、その先に広がっていたのは…**

試練の本質
　扉をくぐり抜けた先には、魔王城の本来の姿が見えた。ここは最深部というにはあまりにも壮大で、美しい場所だった。古代の魔法陣が床に描かれ、空気の中に魔力が渦巻いている。

「ここが本当の試練の場所か…」

　ツキミが呟いた瞬間、目の前に魔王様が現れた。

「おお、ツキミくん、よく来てくれたね！」

「魔王様！？ここが試練の場所って…」

「そうだよ。君たちがクリアした試練は、実は自分の力で試練を切り開くことだったんだ」

「え？試練って、結局、バナナの皮だったんですか？」

「その通りだよ、ツキミくん。バナナの皮を使って、君たちは自分自身の勇気を示すことができた。だから、君たちは本物の勇者になれるんだ！」

「…え？」

「君たちが戦ったり、魔法を使ったりするのは、もちろん大切なことだけど、この試練は君たちがその道を歩む覚悟を試したんだ。バナナの皮も、単なるきっかけに過ぎなかったんだよ」

【📣クロくんアナウンス：「試練終了！みんな、無事卒業試験クリア！」】
【📣次回、卒業式＆魔王様の隠された秘密！】