ゆる勇!〜世界一ゆるい勇者養成学校〜
王国が、勇者不足に悩んでいた。
魔王が復活して以来、世界はそれなりにピンチだ。だが、肝心の勇者がいない。いや、いなくはないのだが……なぜか全員、魔王の部下の営業トークに屈して、フリーランスになるという始末。
そんな中、王国が編み出した最後の手は——
「もう、いっぱい育てたらなんとかなるんじゃね?」
という極めて雑なものであった。
かくして建てられたのが、**国家公認 勇者養成学校『ゆる勇学園』**である。
そして俺は今、そこの新入生として、グラウンドに立っていた。
あ、自己紹介遅れました。俺の名前はツキミ・カナメ、16歳。どこにでもいる常識人(たぶん)。なぜここに入学したかは……まぁ、親が勝手に願書出してたんですよ。まじで。
さて、目の前では入学式が、どう見てもぐだぐだに進行していた。
「え〜〜〜、本年度も〜〜、いろいろ頑張ってくださ〜〜い……ぐぅ……」
マイクを握っていた学園長が、椅子ごと後ろに倒れて寝た。
拍手は起きない。誰も驚いてもいない。
「……なにこれ?」
俺が呟くと、隣の女子生徒がケタケタ笑った。
「これでも去年よりマシらしいよ。去年は入学式そのものが忘れられてたんだって!」
「マジでなんでこの学校が認可されたんだ……?」
そして次の瞬間、俺は初めて“彼”と出会った。
芝生のど真ん中で、寝袋に包まって爆睡している男子。
ていうか、なんで寝袋持参なんだよ。
そしてその周囲には——
「スライム……寄ってきてない?」
青いぷるぷるが、ぞろぞろと彼の寝袋に集まっていた。しかも、全員がうっとりした表情で、寝袋の上に乗っかって寝ている。
周囲の空気があきらかに癒されていた。鳥がさえずり、小花が咲き、空気が澄んでいく。
「……もしかして、あれが“ネム”って人?」
横から誰かが教えてくれた。
「“寝てれば世界救える”って信じてる、伝説のやる気ゼロ男。去年、体験入学で寝ただけで、モンスター100体が正気に戻ったって話」
「……何その聖人現象」
と、そのとき。
「おっそーい!朝飯食べてから来たのにまだやってるの〜?私、待ちくたびれて魔法陣4枚描いちゃったよ〜」
グラウンドの上にふわっと浮かぶのは、制服の袖を絵の具まみれにした少女。背中に巨大なキャンバスを背負い、足元には光り輝く手描きの魔法陣。
「イーラ・スピカ、魔法科トップ、参上☆」
……どうやらこの学園、まともな奴は俺だけらしい。
魔王が復活して以来、世界はそれなりにピンチだ。だが、肝心の勇者がいない。いや、いなくはないのだが……なぜか全員、魔王の部下の営業トークに屈して、フリーランスになるという始末。
そんな中、王国が編み出した最後の手は——
「もう、いっぱい育てたらなんとかなるんじゃね?」
という極めて雑なものであった。
かくして建てられたのが、**国家公認 勇者養成学校『ゆる勇学園』**である。
そして俺は今、そこの新入生として、グラウンドに立っていた。
あ、自己紹介遅れました。俺の名前はツキミ・カナメ、16歳。どこにでもいる常識人(たぶん)。なぜここに入学したかは……まぁ、親が勝手に願書出してたんですよ。まじで。
さて、目の前では入学式が、どう見てもぐだぐだに進行していた。
「え〜〜〜、本年度も〜〜、いろいろ頑張ってくださ〜〜い……ぐぅ……」
マイクを握っていた学園長が、椅子ごと後ろに倒れて寝た。
拍手は起きない。誰も驚いてもいない。
「……なにこれ?」
俺が呟くと、隣の女子生徒がケタケタ笑った。
「これでも去年よりマシらしいよ。去年は入学式そのものが忘れられてたんだって!」
「マジでなんでこの学校が認可されたんだ……?」
そして次の瞬間、俺は初めて“彼”と出会った。
芝生のど真ん中で、寝袋に包まって爆睡している男子。
ていうか、なんで寝袋持参なんだよ。
そしてその周囲には——
「スライム……寄ってきてない?」
青いぷるぷるが、ぞろぞろと彼の寝袋に集まっていた。しかも、全員がうっとりした表情で、寝袋の上に乗っかって寝ている。
周囲の空気があきらかに癒されていた。鳥がさえずり、小花が咲き、空気が澄んでいく。
「……もしかして、あれが“ネム”って人?」
横から誰かが教えてくれた。
「“寝てれば世界救える”って信じてる、伝説のやる気ゼロ男。去年、体験入学で寝ただけで、モンスター100体が正気に戻ったって話」
「……何その聖人現象」
と、そのとき。
「おっそーい!朝飯食べてから来たのにまだやってるの〜?私、待ちくたびれて魔法陣4枚描いちゃったよ〜」
グラウンドの上にふわっと浮かぶのは、制服の袖を絵の具まみれにした少女。背中に巨大なキャンバスを背負い、足元には光り輝く手描きの魔法陣。
「イーラ・スピカ、魔法科トップ、参上☆」
……どうやらこの学園、まともな奴は俺だけらしい。