光の中から現れたのは、地獄とも天国ともつかぬ、異様な世界だった。

そこは、時間が捻れ、空と大地が逆転したような景色。
焼けた空に逆さまに浮かぶ城、血の川を泳ぐ影たち、剣を手にした亡者が果てしなく戦い続ける原野――

ここが、「修羅ノ国」。
怨み、憎しみ、裏切りによって命を落とした者たちが、もう一度力を求める場所。
ただし、それは人ではなく“異形”として――。


「……ふん、死してなお地獄とは、性（さが）よの」

信長は、足元に広がる黒い大地を睨みつけた。

「ここに“理”があるというのなら、余は奪ってみせよう」

その背後から、黒天童子が姿を現す。
その手には一本の笛が握られていた。

「ここから先は、“天魔”の試練の始まりだ。お前が本当にこの国に受け入れられるかどうか……命を懸けて証明しろ」

信長は目を細めた。

「その試練とやら、余に課すつもりか？」

「いや――最初の相手は、“武田信玄の怨霊だ」

空が裂けるような音が響いた。

大地が震え、前方の丘が崩れ落ちる。
そこから現れたのは、全身を漆黒の甲冑で覆い、頭に風林火山の紋を刻んだ“鬼”のような巨人。

「織田……信長……貴様だけは……許さんぞぉ……！」

武田信玄。かつての宿敵。
今は、怨みの念に魂を染めた“亡霊武将”として、修羅ノ国に君臨していた。

信長は静かに口元を歪める。

「ほう、死してなおその執念。悪くはない」

剣を抜く。だがそれは現世のものではない。
異界の焔で鍛えられた剣――その名も、「焔の六道剣（ほのおのりくどうけん）」。

「貴様の怨み、余が引き受けてやろう。だが……一太刀で消し炭にする」

激突の火花が散る。異界の空に、再び紅い雷が走る。


こうして信長の“第二の戦国”が始まった。
裏切りと憎しみの果てに、彼が見る“真実”とは何か――