焔の信長 〜天魔転生記〜
外では、明智軍の兵たちが勝鬨を上げ、寺の門を制圧していた。
炎と血にまみれた戦場に、もはや武将・織田信長の姿はなかった。
だが、その夜。
京都の空に、誰も見たことのない赤い月が浮かんだ。
そして――
地の底、現世とあの世の狭間にあるとされる異界、「修羅ノ国(しゅらのくに)」に、ひとつの魂が堕ちていく。
その魂は、かつて“第六天魔王”と恐れられた男――織田信長。
「……ここは……地獄か?」
足元に広がるのは、無限に続く焼け野原。空は黒く、風は硫黄と血の匂いを運んでいる。
だが、信長は動揺しなかった。
「ふむ……死してなお、戦場とはな」
その時、背後に影が現れた。角を生やし、瞳を赤く輝かせた異形の少年。
少年は口元に笑みを浮かべ、こう告げた。
「ようこそ、“修羅ノ国”へ、織田信長。俺の名は黒天童子(こくてんどうじ)。お前を“天魔”へ導く者だ」
信長は目を細めた。
「……余を導く? ふざけるな。余を操るなど、万死に値するぞ」
「ハハ、面白い。ならば試してみろ。“天魔”の器かどうか、お前の魂で証明してみせろ」
異界の試練が、今、始まろうとしていた――