時は流れ、黄泉の門は封じられ、修羅ノ国は静寂を取り戻した。
戦の跡は虚無に満ち、ただ焔の残り香だけが漂う。

だが、その焔は消えてはいなかった。


ある山のふもと、小さな寺にて。

子どもたちに語る僧の声が響く。

「――かつて、この国に、“魔王”と呼ばれた男がいた。
多くを焼き、多くに憎まれ、それでも理想を追い続けた、ひとりの“人間”じゃった」

子どもが手を挙げる。

「その人、悪者だったの？」

僧はゆっくり首を振った。

「悪であり、善でもあった。
だがな、その者の焔は、今も誰かの胸の中で灯り続けておる」


その言葉を遠くで聞いていた、旅装の青年がいた。
腰には錆びた太刀、背には小さな巻物。

彼は空を見上げ、呟く。

「……信長様。あなたの“理”……俺が、探してみせます」

その目に宿るは、確かなる“意志”。

――そして、歩み出す。


どこかの風がささやく。

「余の名を語るな。語るのならば、己の道で語れ」

青年はふっと笑った。

「それでも、俺はあんたの名に誓いたい。“魔王”という炎に、背中を押されたから」

**

焔は燃え続ける。

裏切りの果てに立ち尽くした魔王の歩みは、
今、誰かの未来へと繋がっていく